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本庄繁長
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輝虎は軍勢を率いて、本庄城に向かう。
武田信玄は駿河に向かっているので、越後に攻めてこない。
そう言う意味では謀叛を起こした本庄繁長が、一番信玄に騙された者かもしれない。
繁長は隣国出羽の国衆、庄内の大宝寺義増に援軍を求めた。
そこで輝虎は一軍を庄内に向ける。
義増は慌てた。
確かに本庄家とは長く交流がある。しかし謀叛を起こして輝虎と戦おうとしている繁長に、協力するほどの義理はない。
急いで息子を人質として差し出し、輝虎に敵意が無いことを示す。
大宝寺の援軍も無いとなると、完全に繁長は孤立無援だ。
その本庄城を輝虎は囲み、じっくりと締め上げていく。
「殿」
城を囲んで半月ほど、長尾景信がやって来た。
「この辺りで赦してやっては、いかがでしょうか?」
無理矢理浮かべているので、少し引きつった笑顔で景信が言う。
叔父上・・・・と輝虎が呟く。
長尾景信の姉は、輝虎の母、青岩院である。
そして景信の娘は、繁長に嫁いでいる。
娘に泣きつかれたか・・・・・或いは女房にか・・・・。
景信を見つめながら、輝虎はそんな事を思う。
別に珍しいことでは無い。
国衆地侍の争いというのは大概、親類縁者が間に立ち、この辺りで手打ちにしようと、仲裁に入るものだ。
「赦すもなにも・・・・・」
輝虎は目を細める。
「弥次郎の奴が城を開ければ良いこと」
「勿論、そうなのですが」
ハハハハハッ、と作り笑いを景信がする。
輝虎が一睨みすると、景信は笑うのを止めた。
「弥次郎めはその・・・・気が強うて、なんと申しますか・・・・・」
輝虎はムッと、鼻の上に皺を作る。
何が言いたいのか察しはつく。
孤立無縁の籠城。城の者は殆ど、降服するしかないと思っている。
元をただせば、武田信玄に騙されただけの事。それを訴えれば、そこまでの処罰はないだろうと考えているのだろう。
しかし城主の繁長は、降伏する気などない。
城を枕に討ち死にじゃ、とでも吠えているのだろう。
繁長の性格なら、間違いなくそうだ。
下手をすれば家来が繁長の寝首をかき、その首を持参して城を開けるかもしれない。
なんとかしてくれと、繁長の妻である景信の娘が、景信に泣きついたのだろう。
「温情をもって、弥次郎めを赦し・・・・・」
「無罪放免にしろと?」
たどたどしく景信に、輝虎は強い口調で言う。
「そう言うわけにはいかぬ」
謀叛を起こして無罪放免では示しがつかない。
「ですが・・・・」
「それに」
グッと輝虎は景信を睨む。
「弥次郎の奴は、まだやる気満々だ」
はぁ、と呟き、景信は顔を伏せる。
相手は孤立無援、城を囲んでじっくり締め上げれば良い。
そう輝虎は考え、家臣たちも同じ思いであった。
慢心があったと言えばそれまでだが、そこを突いて繁長は夜襲を掛けてきたのだ。
被害甚大と言うわけでがない。しかし老臣の色部勝長が深傷を負い、領地に引き上げた。
この負け戦さでよくやる、と繁長の気の強さに輝虎は、半ば感心し半ば呆れた。
「弥次郎は、拙者がなんとか説き伏せます」
景信は懇願する。
一度チラリと、輝虎の側に座る直江景綱を見た。
そう言う事かと、輝虎は察する。
娘に泣きつかれ困った景信は、取り敢えず景綱に相談したのだろう。
景綱には何か考えがあり、先ず輝虎に許しだけを求めたのだ。
「分かった」
景信と同じように、チラリと景綱を見て、輝虎は答えた。
武田信玄は駿河に向かっているので、越後に攻めてこない。
そう言う意味では謀叛を起こした本庄繁長が、一番信玄に騙された者かもしれない。
繁長は隣国出羽の国衆、庄内の大宝寺義増に援軍を求めた。
そこで輝虎は一軍を庄内に向ける。
義増は慌てた。
確かに本庄家とは長く交流がある。しかし謀叛を起こして輝虎と戦おうとしている繁長に、協力するほどの義理はない。
急いで息子を人質として差し出し、輝虎に敵意が無いことを示す。
大宝寺の援軍も無いとなると、完全に繁長は孤立無援だ。
その本庄城を輝虎は囲み、じっくりと締め上げていく。
「殿」
城を囲んで半月ほど、長尾景信がやって来た。
「この辺りで赦してやっては、いかがでしょうか?」
無理矢理浮かべているので、少し引きつった笑顔で景信が言う。
叔父上・・・・と輝虎が呟く。
長尾景信の姉は、輝虎の母、青岩院である。
そして景信の娘は、繁長に嫁いでいる。
娘に泣きつかれたか・・・・・或いは女房にか・・・・。
景信を見つめながら、輝虎はそんな事を思う。
別に珍しいことでは無い。
国衆地侍の争いというのは大概、親類縁者が間に立ち、この辺りで手打ちにしようと、仲裁に入るものだ。
「赦すもなにも・・・・・」
輝虎は目を細める。
「弥次郎の奴が城を開ければ良いこと」
「勿論、そうなのですが」
ハハハハハッ、と作り笑いを景信がする。
輝虎が一睨みすると、景信は笑うのを止めた。
「弥次郎めはその・・・・気が強うて、なんと申しますか・・・・・」
輝虎はムッと、鼻の上に皺を作る。
何が言いたいのか察しはつく。
孤立無縁の籠城。城の者は殆ど、降服するしかないと思っている。
元をただせば、武田信玄に騙されただけの事。それを訴えれば、そこまでの処罰はないだろうと考えているのだろう。
しかし城主の繁長は、降伏する気などない。
城を枕に討ち死にじゃ、とでも吠えているのだろう。
繁長の性格なら、間違いなくそうだ。
下手をすれば家来が繁長の寝首をかき、その首を持参して城を開けるかもしれない。
なんとかしてくれと、繁長の妻である景信の娘が、景信に泣きついたのだろう。
「温情をもって、弥次郎めを赦し・・・・・」
「無罪放免にしろと?」
たどたどしく景信に、輝虎は強い口調で言う。
「そう言うわけにはいかぬ」
謀叛を起こして無罪放免では示しがつかない。
「ですが・・・・」
「それに」
グッと輝虎は景信を睨む。
「弥次郎の奴は、まだやる気満々だ」
はぁ、と呟き、景信は顔を伏せる。
相手は孤立無援、城を囲んでじっくり締め上げれば良い。
そう輝虎は考え、家臣たちも同じ思いであった。
慢心があったと言えばそれまでだが、そこを突いて繁長は夜襲を掛けてきたのだ。
被害甚大と言うわけでがない。しかし老臣の色部勝長が深傷を負い、領地に引き上げた。
この負け戦さでよくやる、と繁長の気の強さに輝虎は、半ば感心し半ば呆れた。
「弥次郎は、拙者がなんとか説き伏せます」
景信は懇願する。
一度チラリと、輝虎の側に座る直江景綱を見た。
そう言う事かと、輝虎は察する。
娘に泣きつかれ困った景信は、取り敢えず景綱に相談したのだろう。
景綱には何か考えがあり、先ず輝虎に許しだけを求めたのだ。
「分かった」
景信と同じように、チラリと景綱を見て、輝虎は答えた。
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