116 / 167
椎名康胤、裏切る
しおりを挟む
山吉豊守を、上野の厩橋に送った。
しかし北条高広は会おうとしない。
それでも豊守は上野に留まり、なんとか高広に会おうと手を尽くしている。
そんな時、次なる凶法が届く。
「なんだと・・・・・」
取り次ぎ役の豊守は上野にいるので、直江景綱が報告に来た。
「椎名右衛門大夫が、武田と通じました」
椎名右衛門大夫とは、越中松倉の椎名康胤の事である。
越中の豪族椎名家とは、輝虎の父、為景の代から深い関係の中だ。
康胤が同じく越中豪族、神保長職に攻められた時、輝虎は助けにも行っている。
それなのに裏切られた。
「まことか・・・・・?」
景綱の後ろに座る、長尾景直に目をやる。
はい、と景直が、憔悴した顔で頷く。
景直は越後長尾家の一族だが、康胤に跡継ぎが居ないので養子に出した。
その景直が命からがら、越中から逃げて来たのだ。
「なぜだ?」
「・・・・・・和睦の事を、右衛門太夫さまは、よく思っておらず・・・・」
輝虎の疑問に、景直は言いにくそうに答える。
その事かと、輝虎は顔を歪める。
康胤に頼まれ兵を出し、神保長職を追い払ったが、輝虎が越後に帰ると、再び長職は兵を上げた。
泥沼になると思った輝虎は、越中、能登の守護である畠山義綱に、康胤と長職の和睦の仲介を頼む。
しかしこれに康胤は不服だった。
康胤にすれば輝虎が関東や信濃で戦さをせず、越中に専念してくれれば、長職を討ち取れる事が出来るのに、追い詰めても、関東の事があるからと言って、越後に戻ってしまうので、討ち取る事が出来ない。
逆に言えば輝虎からすれば、越中のことをこのあたりで手打ちにすれば、関東に専念できる。
そこで康胤の不満の押し切り、和睦を結ばせた。
その不満を武田信玄はついたのだ。
ぐぐぐぐっ、と輝虎は唸る。
いつもながら姑息な手だが、見事なものだ。
「如何致しましょう?」
景綱が問う。
「斎藤下野守を呼べ」
輝虎は早口に答える。
斎藤朝信を国境に送り、一撃与える。しかしそれ以上深追いはしない。
罠だ。
輝虎はそう見ている。
康胤を寝返らせ、輝虎が兵を西に向けた時、おそらく信玄は信濃か上野からか攻めてくるつもりだ。
ここは不用意に動けない。
輝虎は春日山の城で、ジッと耐える事にした。
しかし北条高広は会おうとしない。
それでも豊守は上野に留まり、なんとか高広に会おうと手を尽くしている。
そんな時、次なる凶法が届く。
「なんだと・・・・・」
取り次ぎ役の豊守は上野にいるので、直江景綱が報告に来た。
「椎名右衛門大夫が、武田と通じました」
椎名右衛門大夫とは、越中松倉の椎名康胤の事である。
越中の豪族椎名家とは、輝虎の父、為景の代から深い関係の中だ。
康胤が同じく越中豪族、神保長職に攻められた時、輝虎は助けにも行っている。
それなのに裏切られた。
「まことか・・・・・?」
景綱の後ろに座る、長尾景直に目をやる。
はい、と景直が、憔悴した顔で頷く。
景直は越後長尾家の一族だが、康胤に跡継ぎが居ないので養子に出した。
その景直が命からがら、越中から逃げて来たのだ。
「なぜだ?」
「・・・・・・和睦の事を、右衛門太夫さまは、よく思っておらず・・・・」
輝虎の疑問に、景直は言いにくそうに答える。
その事かと、輝虎は顔を歪める。
康胤に頼まれ兵を出し、神保長職を追い払ったが、輝虎が越後に帰ると、再び長職は兵を上げた。
泥沼になると思った輝虎は、越中、能登の守護である畠山義綱に、康胤と長職の和睦の仲介を頼む。
しかしこれに康胤は不服だった。
康胤にすれば輝虎が関東や信濃で戦さをせず、越中に専念してくれれば、長職を討ち取れる事が出来るのに、追い詰めても、関東の事があるからと言って、越後に戻ってしまうので、討ち取る事が出来ない。
逆に言えば輝虎からすれば、越中のことをこのあたりで手打ちにすれば、関東に専念できる。
そこで康胤の不満の押し切り、和睦を結ばせた。
その不満を武田信玄はついたのだ。
ぐぐぐぐっ、と輝虎は唸る。
いつもながら姑息な手だが、見事なものだ。
「如何致しましょう?」
景綱が問う。
「斎藤下野守を呼べ」
輝虎は早口に答える。
斎藤朝信を国境に送り、一撃与える。しかしそれ以上深追いはしない。
罠だ。
輝虎はそう見ている。
康胤を寝返らせ、輝虎が兵を西に向けた時、おそらく信玄は信濃か上野からか攻めてくるつもりだ。
ここは不用意に動けない。
輝虎は春日山の城で、ジッと耐える事にした。
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる