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知恵の商い
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「弾正さま」
声を掛けられ、輝虎は振り返る。
男が一人、立っている。
「お久しぶりにございます」
そう言って男は頭を下げたが、輝虎は思い出せない。
見覚えが無いわけではない。
身なりを見るに商人で、上方の者だろう、色白で穏やかな顔をしている。
どこかで一度、見た顔だ。しかし思い出せない。
「宇駿さまのお屋敷で、一度お目にかかりました」
輝虎の顔色を読んだのだろう、男はそう告げる。
「曽呂利新左衛門にございます」
「そろり・・・・・」
妙な名だ。だがそれで思い出した。
「確か商人で・・・・」
はい、と曽呂利新左衛門が頷く。
「宇駿どのが・・・・・・」
完全に思い出し、輝虎は苦笑する。
「知恵を売っておるとか申しておった」
「それは宇駿さまが、仰られておられただけです」
曽呂利の方も苦笑する。
「手前の商いは、鞘や鍔の拵え物にございます」
ふふっ、と輝虎は笑う。
「ついでに知恵も売るだけです」
その曽呂利の言葉に、ハハハッ、と輝虎は笑う。
「わしにも売ってくれぬか?」
「鞘ですか?」
いや、と輝虎は首を振る。
「知恵さ」
はははっ、と曽呂利は笑う。
「銭ならあるぞ」
いえいえ、と曽呂利は首を振る。
「知恵の商いは銭では致しませぬ」
ほぉ、と輝虎が呟く。
「知恵は知恵でしか売りませぬ」
「つまりわしもお主に知恵を渡せと?」
まぁ、そんなところです、と曽呂利は呟く。
そうかと、輝虎は頷く。
声を掛けられ、輝虎は振り返る。
男が一人、立っている。
「お久しぶりにございます」
そう言って男は頭を下げたが、輝虎は思い出せない。
見覚えが無いわけではない。
身なりを見るに商人で、上方の者だろう、色白で穏やかな顔をしている。
どこかで一度、見た顔だ。しかし思い出せない。
「宇駿さまのお屋敷で、一度お目にかかりました」
輝虎の顔色を読んだのだろう、男はそう告げる。
「曽呂利新左衛門にございます」
「そろり・・・・・」
妙な名だ。だがそれで思い出した。
「確か商人で・・・・」
はい、と曽呂利新左衛門が頷く。
「宇駿どのが・・・・・・」
完全に思い出し、輝虎は苦笑する。
「知恵を売っておるとか申しておった」
「それは宇駿さまが、仰られておられただけです」
曽呂利の方も苦笑する。
「手前の商いは、鞘や鍔の拵え物にございます」
ふふっ、と輝虎は笑う。
「ついでに知恵も売るだけです」
その曽呂利の言葉に、ハハハッ、と輝虎は笑う。
「わしにも売ってくれぬか?」
「鞘ですか?」
いや、と輝虎は首を振る。
「知恵さ」
はははっ、と曽呂利は笑う。
「銭ならあるぞ」
いえいえ、と曽呂利は首を振る。
「知恵の商いは銭では致しませぬ」
ほぉ、と輝虎が呟く。
「知恵は知恵でしか売りませぬ」
「つまりわしもお主に知恵を渡せと?」
まぁ、そんなところです、と曽呂利は呟く。
そうかと、輝虎は頷く。
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