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  関東管領 

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 小田原城を包囲して一ヶ月ほどした頃、手詰まりになった景虎は、小田原を離れ鎌倉に向かう。
 関東管領就任の儀式を行うためだ。

 儀式には景虎たちが認める関東公方、足利藤氏、京から来た関白の近衛前久、それに京の足利公方義輝の使いの大館晴光、それから景虎に管領職を譲ると言い出した上杉憲政、そして長野業正を初めとする関東諸侯が参列する。

 藤氏の前に進み出て、景虎は関東管領に任命された。
 
 妙なものだと景虎は思った。

 そもそも関東管領は、関東公方のお目付役である。
 そのお目付役を、関東公方である藤氏に任命されているのだ。
 
 その藤氏にしたところで、景虎が支持している関東公方なのだ。
 北条氏康は甥である足利義氏を公方にし、自らを関東管領にしている。
 景虎が関東に出兵するまで、藤氏は氏康に追い回され、里見義弘を頼り安房に逃げていたのだ。

 景虎が支持したから公方になれた藤氏に、景虎は管領職に任命されている。

 世の中そういうものだと言えばそうだが、やはり景虎には茶番に思える。
 
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