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敵の味方
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「・・・・・では井の中の蛙の宇駿どのには、この和議がどういうものか、分かりかねるのですかな?」
「このぐらいの事なら、それがしにも分かりますよ」
皮肉な口調で問う景虎に、さも当然の様に定満は答える。
「裏があるのです」
「・・・・それは拙者にも分かりますよ」
いえいえ、と定満は手を振る。
「この裏は、平三どのにではなく、雪斎和尚が武田大膳(晴信)に対しての裏でございます」
景虎は目を細める。
「どういう事だ?」
いつもの様に、尖った顎を撫でながら、定満は答える。
「以前、それがしが平三どのに話した、武田大膳が越後を狙う理由・・・・」
「北の海に出たいという、あれか?」
はい、と定満が頷く。
景虎も勿論、憶えている。
越後を攻め取り、直江津の港を手に入れ、南部と若狭の武田と交易をする。
それが武田晴信の大計だ。
「その策、考えたのは太原雪斎和尚なのです」
えっ?と景虎は驚く。
「雪斎和尚が考え、大膳に授けたのです」
「ど、どういうことだ?」
驚きで息が止まりそうになりながら、景虎が問う。
「つまりこの策は、武田の目を北に向けさせる為のものなのです」
あっ・・・と景虎は声を上げ、なるほど、と悟る。
「それでこの和議か」
はい、その通りです、と定満が応える。
雪斎において大切なのは、武田の目が北に向く事。もっと言えば、向き続ける事だ。
少しでも長く武田の目が北に向く事が重要なのであり、景虎と晴信が出来るだけ長く争ってくれる事が望ましいのだ。
だから景虎に好条件で、和睦を進めているのだ。
「なるほど・・・・・」
よく出来ている、と景虎は唸る。
そうやって晴信が景虎とやり合っているうちに、今川は西に勢力を伸ばすという事だ。
うぅむ、と景虎は考えさせられる。
武田と今川と北条は手を組み、婚姻を相互に結んでいる。
だからといって味方ではないのだ。
三つの家を一つにするつもりはない。
たとえ一つにするとしても、味方ではないのだ。
三家の同盟は、武田が北、今川が西、北条が東に勢力を伸ばすという事で、利害が一致している。
だが彼らは、他の勢力が拡大する事を、望んでいるわけではない。
敵では無い。だが味方でも無い。
そして敵であり味方でもあるのだ。
「そうか・・・・なら」
取り敢えず和議は、受け入れても良いということだ。
ええっ、と定満は頷く。
「ただ、武田大膳は再び仕掛けてくるでしょう」
そして、と不敵な笑みを浮かべて定実は続ける。
「それを雪斎和尚は、止める気は無いのでございます」
「つまりこちらは、油断せず備えておけ、という事だな」
「まぁ、そんなところです」
定満はニヤリと笑い、そう告げた。
「このぐらいの事なら、それがしにも分かりますよ」
皮肉な口調で問う景虎に、さも当然の様に定満は答える。
「裏があるのです」
「・・・・それは拙者にも分かりますよ」
いえいえ、と定満は手を振る。
「この裏は、平三どのにではなく、雪斎和尚が武田大膳(晴信)に対しての裏でございます」
景虎は目を細める。
「どういう事だ?」
いつもの様に、尖った顎を撫でながら、定満は答える。
「以前、それがしが平三どのに話した、武田大膳が越後を狙う理由・・・・」
「北の海に出たいという、あれか?」
はい、と定満が頷く。
景虎も勿論、憶えている。
越後を攻め取り、直江津の港を手に入れ、南部と若狭の武田と交易をする。
それが武田晴信の大計だ。
「その策、考えたのは太原雪斎和尚なのです」
えっ?と景虎は驚く。
「雪斎和尚が考え、大膳に授けたのです」
「ど、どういうことだ?」
驚きで息が止まりそうになりながら、景虎が問う。
「つまりこの策は、武田の目を北に向けさせる為のものなのです」
あっ・・・と景虎は声を上げ、なるほど、と悟る。
「それでこの和議か」
はい、その通りです、と定満が応える。
雪斎において大切なのは、武田の目が北に向く事。もっと言えば、向き続ける事だ。
少しでも長く武田の目が北に向く事が重要なのであり、景虎と晴信が出来るだけ長く争ってくれる事が望ましいのだ。
だから景虎に好条件で、和睦を進めているのだ。
「なるほど・・・・・」
よく出来ている、と景虎は唸る。
そうやって晴信が景虎とやり合っているうちに、今川は西に勢力を伸ばすという事だ。
うぅむ、と景虎は考えさせられる。
武田と今川と北条は手を組み、婚姻を相互に結んでいる。
だからといって味方ではないのだ。
三つの家を一つにするつもりはない。
たとえ一つにするとしても、味方ではないのだ。
三家の同盟は、武田が北、今川が西、北条が東に勢力を伸ばすという事で、利害が一致している。
だが彼らは、他の勢力が拡大する事を、望んでいるわけではない。
敵では無い。だが味方でも無い。
そして敵であり味方でもあるのだ。
「そうか・・・・なら」
取り敢えず和議は、受け入れても良いということだ。
ええっ、と定満は頷く。
「ただ、武田大膳は再び仕掛けてくるでしょう」
そして、と不敵な笑みを浮かべて定実は続ける。
「それを雪斎和尚は、止める気は無いのでございます」
「つまりこちらは、油断せず備えておけ、という事だな」
「まぁ、そんなところです」
定満はニヤリと笑い、そう告げた。
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