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放生月毛
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陣幕を出ると、小島弥太郎貞興が、轡を取って立っている。
「いい子だ」
景虎は愛馬、放生月毛を撫でる。
数年前、傅役であった金津新兵衛義旧が、隠居を願い出た。
景虎にすれば、ずっと側にいて欲しかったが、義旧も老齢、無理強いは出来ない。
仕方なしと、隠居を許した。
隠居した義旧は、すぐに貞興を連れて奥羽に向かった。
景虎に相応しい名馬を探す為だ。
そうして二人が買ってきたのが、放生月毛だ。
月毛は栗毛よりも明るく、佐目毛よりも濃い。
その暖かい毛並み同様、気性は大人しい。
「大将が乗る馬は、勇ましいより、大人しい方が良いのです」
そう義旧が言った。
何故だ?と景虎が問うと、
「その方が逃げる時、必ず逃げ切ります」
と義旧は答えた。
景虎が苦笑すると、真面目な顔で義旧は続ける。
「大将において最も大切なことは、生きる残ることです」
馬を撫でながら、ジッと景虎を見つめて、義旧は告げる。
「だから馬は、大人しくて必ず逃げる馬が良いのです」
ああ分かった、と自分を心配してくれる義旧に、景虎は答える。
「じい、どのような戦さでも、必ず生き残るよ」
「では、いくぞ」
放生月毛に乗り、その首筋を景虎は優しく撫でる。
ブルっと首を振り、放生月毛はゆっくり進む。
「いい子だ」
景虎は愛馬、放生月毛を撫でる。
数年前、傅役であった金津新兵衛義旧が、隠居を願い出た。
景虎にすれば、ずっと側にいて欲しかったが、義旧も老齢、無理強いは出来ない。
仕方なしと、隠居を許した。
隠居した義旧は、すぐに貞興を連れて奥羽に向かった。
景虎に相応しい名馬を探す為だ。
そうして二人が買ってきたのが、放生月毛だ。
月毛は栗毛よりも明るく、佐目毛よりも濃い。
その暖かい毛並み同様、気性は大人しい。
「大将が乗る馬は、勇ましいより、大人しい方が良いのです」
そう義旧が言った。
何故だ?と景虎が問うと、
「その方が逃げる時、必ず逃げ切ります」
と義旧は答えた。
景虎が苦笑すると、真面目な顔で義旧は続ける。
「大将において最も大切なことは、生きる残ることです」
馬を撫でながら、ジッと景虎を見つめて、義旧は告げる。
「だから馬は、大人しくて必ず逃げる馬が良いのです」
ああ分かった、と自分を心配してくれる義旧に、景虎は答える。
「じい、どのような戦さでも、必ず生き残るよ」
「では、いくぞ」
放生月毛に乗り、その首筋を景虎は優しく撫でる。
ブルっと首を振り、放生月毛はゆっくり進む。
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