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  人狩り

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 神余小次郎親綱は、景虎の家臣である。
 元々神余家は安房の国衆で、親綱の祖父が戦さで領地を失い、流れ流れて越後に来たのだ。
 越後守護の上杉家の客分、と言うよりは居候の様な立場で、神余家は三代、越後にいる。


「領地を持たぬ者は、持つ者と違う、物の考え方をするものです」
 そう言って定満は、親綱を景虎に推挙した。
 景虎は親綱を上方に送り、青苧の商いを仕切らせている。

「よう売れておるようです」
 年に何度か届く親綱からの文には、商いが順調であると書かれており、またその証に沢山の銭が届く。
「もっと越後縮を送ってくれと、言って来ておるのではないのですか?」
 定満のいう通りだ。
 あれば幾らでも売れるので、もっと送って欲しいと、親綱は何時も言っている。
「・・・・・そうですが、こればかりは如何にも・・・・」
「なぜです?」
「物が無いので、送りようがないですよ」
 くくくくっ、と定満は苦笑する。
「無いなら作れば良いではないですか」
「作ろうにも人手が・・・・」
「なら人手を集めれば、よろしゅうござる」
「・・・・・・・」
 少し考え、景虎はハッとする。
「関東に人狩りに行けと、仰っておるのですか」
 ハハハハッ、と定満は笑う。
 
 乱世である。
 戦さで攻めれば、乱取り略奪を兵が行う。
 兵が奪うのは米や金銭だけではない。人も奪う。
 戦さが終われば、人買いがやって来て、奪った人を買っていく。
 酷いとは景虎も、勿論思う。
 しかし乱世に生きる武士として、それは仕方がない事だとあきらめている。
 だから景虎も、家臣が略奪するのを黙認している。
 しかしである・・・・・・・。

「管領さまの名の下で、人狩りに行けとは・・・・・」
 流石に景虎も呆れる。
「そう難しく考えず」
 不敵に定満は微笑む。
「兵を出す、対価、駄賃の様なものですよ」
「・・・・・そう言われるが・・・・」
 景虎は顔を顰める。
「まぁ決められるのは、平三さまです」
 何を今更言いやがる、と景虎は微笑む定満を睨む。
 
 
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