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黒田秀忠
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黒田和泉守秀忠は景虎の父、為景の側近であった。
しかし先代の側近は、当代には嫌われるもの。晴景には遠ざけられた。
為景の葬儀に、秀忠は参列したいと言って来た。
しかし晴景が、それを許さなかった。
怒った秀忠が、軍を集めているという噂が流れた。
葬儀の時に景虎が、武装する様に言われたのは、この噂の所為である。
結局、葬儀の時に襲撃しなかったが、その後、景虎が栃尾に向かい、長尾景俊と戦さをしている間に、秀忠は春日山城を攻撃。晴景はなんとか城を守ったが、次兄の景康、そしてその次の兄の景房が殺害された。
景虎は二人の兄と、それほど親しかったわけでは無い。
父の葬儀と元服の儀の時、会っただけだ。
しかし武家の子として、兄弟の仇は討つもの、そう思っている。
「黒田和泉守を討ちたい」
ハッキリと景虎は、本庄実乃に告げる。
「だから力を貸して欲しい」
「・・・・・・・」
硬い表情のまま、実乃はジッと景虎を見つめる。
「和泉守は・・・・・」
ゆっくりと実乃は言う。
「手強き男です」
だろうなぁ、と景虎は応える。
秀忠は越後の地侍の、胎田と言う小さな家の出だ。
しかし武勇に優れている為、為景が目を掛けて、越後の有力な国衆の家である黒田家を継いでいる。
「勇猛果敢な男では、あるだろう」
それは景虎も分かっている。
「だが油断している」
ズバリと景虎は言う。
「わしや兄上を、腰抜けと見ている」
兄弟が殺されたのに、仇を打とうとしていない、臆病者。
そう思っている筈だ。
だからその隙を突いて。
「攻めるのだ」
ふむ、と実乃は頷き、問うてくる。
「先ほど、力を貸して欲しいと・・・・」
「そうだ」
「兄上さまは頼らず、平三さまと拙者で和泉守に挑まれるのですか?」
その通りだと、景虎は力強く頷く。
「ですが、どうやって?」
「隙を突くと言うたであろう」
実乃は眉を寄せる。景虎は不敵に微笑む。
「稲刈りの時期に、いきなり攻める」
それは・・・・と実乃は言葉を失う。
普通戦さは、田植えと稲刈りの間の時期に行う。
なぜならその時、地侍たちが暇だからだ。
逆に言えば、田植えや稲刈りの時期には、地侍が集まらないので、戦さはできない。
だかたそんな時に、攻めてくるとは誰も思わない。
「簡単ではありませぬ」
実乃が呟く。
相手は油断しているだろうが、こちらは兵が集まらない。
「確かに簡単では無い」
だがそこを攻める。
「数は少なくて良い」
「と言うと?」
「腕利きを数人集め、和泉守の居城を奇襲するのだ」
はぁ、と実乃は、景虎の豪胆さに声を上げる。
「手を貸してくれぬか?」
改めて景虎が頼むと、
「承知しました」
と実乃が頭を下げる。
よし、と景虎は頷き、
「新兵衛」
と景虎は金津義旧を呼ぶ。
「春日山に戻り、腕利きを数人連れてこい」
ハハッ、と義旧が頭を下げる。
「弥太郎を連れて参ります」
予期していた答えに、
「ああ、そうしてくれ」
と言って景虎は微笑む。
弥太郎とは、為景の馬廻衆だった、小島弥太郎貞興のことだ。
越後一の猛者と呼ばれている。
「それでは・・・・・・」
実乃が言うので、うむ、と頷き、景虎は宣言する。
「兄上たちの仇、黒田和泉守秀忠を討つ」
しかし先代の側近は、当代には嫌われるもの。晴景には遠ざけられた。
為景の葬儀に、秀忠は参列したいと言って来た。
しかし晴景が、それを許さなかった。
怒った秀忠が、軍を集めているという噂が流れた。
葬儀の時に景虎が、武装する様に言われたのは、この噂の所為である。
結局、葬儀の時に襲撃しなかったが、その後、景虎が栃尾に向かい、長尾景俊と戦さをしている間に、秀忠は春日山城を攻撃。晴景はなんとか城を守ったが、次兄の景康、そしてその次の兄の景房が殺害された。
景虎は二人の兄と、それほど親しかったわけでは無い。
父の葬儀と元服の儀の時、会っただけだ。
しかし武家の子として、兄弟の仇は討つもの、そう思っている。
「黒田和泉守を討ちたい」
ハッキリと景虎は、本庄実乃に告げる。
「だから力を貸して欲しい」
「・・・・・・・」
硬い表情のまま、実乃はジッと景虎を見つめる。
「和泉守は・・・・・」
ゆっくりと実乃は言う。
「手強き男です」
だろうなぁ、と景虎は応える。
秀忠は越後の地侍の、胎田と言う小さな家の出だ。
しかし武勇に優れている為、為景が目を掛けて、越後の有力な国衆の家である黒田家を継いでいる。
「勇猛果敢な男では、あるだろう」
それは景虎も分かっている。
「だが油断している」
ズバリと景虎は言う。
「わしや兄上を、腰抜けと見ている」
兄弟が殺されたのに、仇を打とうとしていない、臆病者。
そう思っている筈だ。
だからその隙を突いて。
「攻めるのだ」
ふむ、と実乃は頷き、問うてくる。
「先ほど、力を貸して欲しいと・・・・」
「そうだ」
「兄上さまは頼らず、平三さまと拙者で和泉守に挑まれるのですか?」
その通りだと、景虎は力強く頷く。
「ですが、どうやって?」
「隙を突くと言うたであろう」
実乃は眉を寄せる。景虎は不敵に微笑む。
「稲刈りの時期に、いきなり攻める」
それは・・・・と実乃は言葉を失う。
普通戦さは、田植えと稲刈りの間の時期に行う。
なぜならその時、地侍たちが暇だからだ。
逆に言えば、田植えや稲刈りの時期には、地侍が集まらないので、戦さはできない。
だかたそんな時に、攻めてくるとは誰も思わない。
「簡単ではありませぬ」
実乃が呟く。
相手は油断しているだろうが、こちらは兵が集まらない。
「確かに簡単では無い」
だがそこを攻める。
「数は少なくて良い」
「と言うと?」
「腕利きを数人集め、和泉守の居城を奇襲するのだ」
はぁ、と実乃は、景虎の豪胆さに声を上げる。
「手を貸してくれぬか?」
改めて景虎が頼むと、
「承知しました」
と実乃が頭を下げる。
よし、と景虎は頷き、
「新兵衛」
と景虎は金津義旧を呼ぶ。
「春日山に戻り、腕利きを数人連れてこい」
ハハッ、と義旧が頭を下げる。
「弥太郎を連れて参ります」
予期していた答えに、
「ああ、そうしてくれ」
と言って景虎は微笑む。
弥太郎とは、為景の馬廻衆だった、小島弥太郎貞興のことだ。
越後一の猛者と呼ばれている。
「それでは・・・・・・」
実乃が言うので、うむ、と頷き、景虎は宣言する。
「兄上たちの仇、黒田和泉守秀忠を討つ」
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