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第二百四十六話 結婚式

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 翌朝、サイリールはすでにジルヴィアとライナーの衣装は完成させていた。
 過去に家族がここで結婚式をした時の衣装から参考にしている。

 ジルヴィアはスラリとした体型でスタイルがいいので体型がわかるタイプのぴったりとしていて、スカートの裾だけが広がっているドレスだ。
 背中は総レースで仕上げている。
 また、肩口にレースを重ねふわりとさせたり、所々にふわりとしたレースをあしらう事で少し甘さを足している。

 というのも、ジルヴィアは大人の女性なので大人っぽさばかりを強調するとどうしてもそれがきつくなりすぎるからだ。
 なので甘さを足す事でバランスを取った。

 ドレスの生地はサラサラとしており、艶のある絹風だ。
 ドレス全体に光を反射する細かな素材をつけてある。
 彼女には赤い薔薇が良く似合うので、ドレスの裾にさり気なく薔薇の花をあしらった。
 これも光る素材にしているので歩くたびにきっと赤く輝くだろう。

 ライナーの燕尾服に関しては、基本を白で作り上げた。
 華美になりすぎない程度に銀の刺繍を施した。
 背が高くどちらかという優男な顔なのできっととてもよく似合うだろう。
 胸元のポケットにはジルヴィアのドレスと同じ赤い薔薇をさり気なくあしらった。

 彼らの結婚式には仲間はもちろん、家を出た家族皆も来てくれるらしい。
 テトとリーアの結婚式からすぐであり、前日に伝えたのでプレゼントなどは必要ない事を伝えてある。
 会場の飾りつけなどはセドリック達に任せ、サイリールとアソートはライナーの着付けの手伝いを、ファニーとサーシャはジルヴィアの着付けと化粧等を担当してくれた。

「やぁライナー。時間だよ。着替えをしようか」
「ボクも手伝うよ」
「おう、ジルが喜んでるからいいんだが、やっぱ恥ずかしいな」
「ははは。これが君が着る衣装になるよ」
「わーかっこいいねぇ。ライナーによく似合いそうだね」
「おいおいおい、サイリールまじか? これを俺が着るのか?」
「そうだよ」
「まじかよ……すげぇ恥ずかしいんだが……」
「ほら、ライナー。諦めて着ようよ。きっとすごく似合うよ」
「はぁ……仕方ねぇな……」

 そうしてアソートとサイリールが手伝いつつライナーは着替えを終えた。

「おー! やっぱりすごくライナーに似合ってるよ」
「うおー、すげぇ恥ずかしいぞこれ」
「大丈夫だよ、ライナー。とてもよく似合ってるよ」
「くっそー、サイリールとアソートが結婚する時もこっぱずかしい程かっこいいのにしろよ!」
「あはは。うん、そうするよ」
「はは。そうだね、僕もそうするよ」

 ライナーは溜め息を一つつくと気持ちを切り替え、サイリール達と共に会場へ向かった。
 会場に着くとヴァルターが真っ先にライナーを揶揄い、後で覚えてろとライナーに怒られ、ゲルトは無言で頷きライナーの肩を叩いた。
 ユッテやベティーナは素直に素敵だとライナーを誉めた。
 そうして他のサイリールの家族達も次々とライナーの姿を誉めた。
 暫くそんな風にして過ごしていると、セドリックがライナーに声をかけ、会場の奥にある壇へと連れて行った。
 もう間もなく花嫁が来るだろう。
 ライナーが壇上に行ってから少しして会場の明かりが落ちた。
 ロウソクの薄明かりだけが光を湛えている。
 そんな中、正面扉がゆっくりと開いた。
 そこにいたのは純白のドレスを纏い、ロウソクの明かりでキラキラと光り輝くジルヴィアだった。
 ファニーがジルヴィアの手を取り、ゆっくりと進んでいく。
 ジルヴィアはうっすらと化粧を施し、髪を結い上げ、その髪には白い小さな小花の飾りがちりばめられていた。
 薄いレースのベールに覆われたまま、ジルヴィアはゆっくりとライナーの元へ歩いていった。
 ジルヴィア自身すでに成熟した女性なので大人の色香が漂う、艶美な姿であった。
 それでもそれがきつくなりすぎないのは肩口のふわりとしたレースや、所々に施したふわりとしたレースのおかげだろう。

 そんなジルヴィアを見たライナーはこれまで見たことのない姿に驚き、更に惚れなおしていた。
 ファニーとジルヴィアが中程まで歩いてきた所でそっとサーシャが会場に入って来た。
 サーシャはすぐにアソートの側まで行くとぴったりとくっついていた。

 そうして遂に壇の近くまでジルヴィアがやって来た。
 ライナーは壇上から下りるとジルヴィアを迎えた。
 ファニーは壇の下につくとジルヴィアの側から離れる。
 ライナーはそっと手を差し出した。

「綺麗だよ、ジル」
「ライナーもとても素敵だわ……」

 ジルヴィアはライナーの手を取り壇上に上がっていった。
 壇の上で二人は向かい合う。
 ライナーが片膝をつき、ジルヴィアに手を差し出した。

「ジルヴィア、俺はお前と共に幸せな家庭を築く事を誓う。だからどうか、お前も俺に誓って欲しい」

 ジルヴィアはそんなライナーを見つめて言葉を返した。

「ライナー、私は貴方と共にかけがえのない人生を歩む事を誓うわ。だからどうか、貴方も共に誓いの言葉を言って頂戴」

 その言葉と共に、ジルヴィアはライナーの差し出した手をとった。
 ライナーが立ち上がると、二人はしっかりと手を重ね合い、同時に言葉を放った。

「「愛しています、共に永遠を」」

 そうしてライナーはジルヴィアのベールをたくし上げ、ジルヴィアの赤く熟れた唇にそっと自らの口を重ねた。
 その瞬間ジルヴィアの目からは涙が零れ落ちた。
 彼女にとって、この瞬間はライナーと出会っていなければ、サイリールと出会っていなければ、訪れる事が一生なかったものだった。
 幸せで嬉しくて、涙がぽろぽろと零れた。

「おめでとう!」
「おめでとう!」

 次々とライナーとジルヴィアへ祝福の言葉が贈られる。
 二人は唇と離すと、祝福の言葉に笑みを浮かべ礼を述べた。
 暫くの間ライナーもジルヴィアも幸せの渦の中、時を過ごした。
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