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第二百二十話 初めてのデート
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今日はデリアとのデートの日だ。
二人の兄のお蔭で俺はデリアという大切な人を失わずにすんだ。
俺がデリアに決別の言葉を告げた1週間後、兄さんが俺を訪ねて来た。
何事かと思えば、デリア親子がサイリール兄さんによって救われ、今は兄さんの斡旋で仕事につき、兄さんの家の近くの家に住んでいるのだという。
詳しい話しはされなかったが、どうやら複雑な事情があったらしく、俺に借りた金を返したくて仕事に励んでいるのだそうだ。
俺はその話を聞いてすぐにデリアに会いに行きたかった。
だけど、兄さんがデリアが会いに来るまで待っているべきだと言うのでずっと待っていたのだ。
彼女に会った日に決別の言葉を告げたにも関わらず、俺はデリアの事をずっと忘れられなかった。
何をしていても彼女の悲し気な顔が浮かんで胸が苦しくなったのだ。
それは日を経つごとに強くなり、夢でまで彼女の事をみるようになった。
そんな日々を1ヵ月過ごした所でデリアが訪ねてきたのだ。
そして彼女の話しを聞き終えた時、俺はこれまでずっと彼女に会いに行かなかった事を後悔した。
もし彼女に会いに行っていれば、彼女があんなに辛い思いをする事もなかったのではないか。
こんな屋敷で不自由なく暮らさせてもらっているのだから我儘なんて言いたくなくて、ずっと会いに行かなかった。
そのうちにデリアの事も薄れ、サーシャちゃんを好きになり、告白もした。
あんなに好きだったデリアの事を考えないようにして、忘れ、自分は他の女の子に恋をしたのだ。
情けなすぎて、自分が嫌になる。
だけど、デリアに再び出会って告白をして、受け入れてもらえたのだ。
今度こそ、彼女を離さないし、大事にする。
待ち合わせの像までもう少しだ。
少し早く来すぎただろうか?
約束の10時まで後30分もある。
俺は外出用に借りた小さな懐中時計の蓋を閉じた。
そうして像が見える所までやってきたが、そこで驚いてしまった。
すでにデリアがいるのだ。
淡いピンク色のワンピースを着て小さな籠を持っている。
その姿は遠くから見てもとても愛らしくて可愛かった。
急いでデリアの所へ行こうと思って足を早めようとした所で何やらデリアに話しかける男がいた。
俺とデリアよりも年上に見えるが、誰だろうか。
デリアも受け答えしているので知り合いだろうか?
そのまま俺は足を進めるが、ある光景を見て走り始めた。
男がデリアの手をとっているのだ。
デリアは嫌がっている。
そのまま俺は走ってデリアの元へ行き、デリアの手を握っている男の手首をぎゅっと握ると捻った。
男は痛みに悶えているが知った事ではない。
「デリア、大丈夫?」
「ラリー……」
デリアはうっすらと目に涙を浮かべていた。
痛みに悶える男の手を離して告げる。
「嫌がる女の子に無理やり迫るのは良くないよ、お兄さん、それに彼女は俺の大切な人なんだ。これ以上手を出すのはやめてくれないか」
俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、男は舌打ちをすると捨て台詞を吐いて走って行った。
「デリア、彼は知り合いなの?」
「うん、私の通ってる学習所に通ってる人なんだけど……さっきは怖かった……」
「大丈夫だよ、デリア。俺が守るから、と言いたいけどずっとは無理だからな……うん、よし。デリア、任せて。俺きっと何とかするから」
「うん……ラリー信じてる……」
デリアはそう言うと俺の手をぎゅっと握った。
俺も握り返し、そして決意した。
サイリール兄さんに相談しようと。
こんな我儘を言うのは初めてかもしれない、けど、大切な人を守る為なら俺の小さなプライドなど捨てされる。
その日のデリアとのデートは心がずっと暖かくて弾むものだった。
デリアが見せる笑顔が眩しくて、彼女のはずんだ声が嬉しくて、俺は一緒にいるだけで幸せだった。
しかしそんな楽しい時間も終わりを迎える。
もう日が傾いてきているのだ。
夕暮れのオレンジに染まる道を二人手を繋いで歩く。
ただただ幸せだった。
何も話さなくても、無言でも、その時間が辛くないのだ。
彼女の手から伝わる温もりが、すべてを語ってくれている。
そして、彼女の住んでいる家まで着いた。
「デリア、今日は楽しかった」
「私も、すごく楽しかった。あんなに楽しいのは初めてだった。離れるのが寂しい……」
「俺も寂しいよ。でも、離れていても心は一緒だ」
デリアは潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
愛しくて可愛くてたまらない。
デリアが目を閉じ、俺とデリアの唇は重なった。
暫くして唇を離すと彼女と抱き合う。
「好きだよ、デリア」
「私も好き、ラリー」
彼女の柔らかい体も、サラサラの髪の毛も、その温もりも、すべてが愛しくてたまらない。
そして、次のデートの約束を交わして俺とデリアは別れた。
帰り道、俺はとても浮かれていた。
初めてのデートだったけど、何をしても楽しかった。
次にデリアと会う日が待ち遠しくてたまらないのだ。
屋敷への道を歩いている時、少し薄暗い路地に差し掛かった。
だけど俺は何も気にしていなかった。
そして俺は迂闊だった。
何の為にサイリール兄さんが家族の為に防護の腕輪をくれたのか。
家族を愛して守りたいからくれた防護の腕輪を、俺は初めてのデートで浮かれて付け忘れていたのだ。
薄暗い路地を歩いていると急に後ろから後頭部を殴りつけられた。
俺は一瞬意識を失い、そのまま吹き飛ばされ、塀にぶつかった。
視界がぐらぐらと揺れる。
それでも、相手を確かめる為に痛みと揺れを堪えて俺は振り向いた。
そこにいたのは角材を持ったあの男だった。
デリアの腕を掴んでいた男だ。
「お、おまえが悪いんだぞ!俺の、俺のデリアなのに!キ、キスなんてしやがって!おまえがいなければ!デリアは俺と付き合うはずだ!」
反論をしたくてもうまく言葉が出ない。
男は角材を再び振り上げた。
これはまずい、俺はとにかく頭を守った。
幸いだったのは、男が人を殴る事に慣れていなかった事だろう。
それでも角材で男の力で殴られれば相応のダメージはある。
とにかく急所と頭部だけを守った。
暫くして、男は蹲る俺を見て、小さく悲鳴をあげてから走って逃げていった。
ようやく終わったと思い、俺はゆっくりと頭部を守っていた手を下す。
全身がギシギシと痛む、それに全身血まみれのようだ。
あちこちの皮膚が裂け、血が流れている。
腕を動かそうとしてズキリと痛む。
どうやら右腕の骨が折れているようだが、左腕は無事なようだ。
脚も痛いがどうやら骨は折れていないようなので、歩けるだろう。
とにかく、まずは屋敷へと帰らねばならない。
俺は痛む全身を引きずるように、屋敷へと向けて歩き出した。
どのくらい時間がかかったのか分からないが、やっと屋敷の門が見えた。
俺が歩いた後はずっと血が点々と落ちている。
門に近づいた所で、フェローさんが慌てた様子で飛び出してきた。
すぐに俺に近づくと俺を抱きかかえた。
「ラリー!どうしたんだ!何があった!」
俺を抱きかかえ急いで屋敷へ走りながらもフェローさんは声をかける。
申し訳ない事をしてしまった。
家族を心配させてしまうなんて。
「ごめん……なさい……俺の、不注意、です……」
俺はそこで意識を失ってしまった。
フェローさんに抱き上げられて安心してしまったのだ。
もう大丈夫だと、家族の元にさえ辿り着けば助かると、安心したのだ。
二人の兄のお蔭で俺はデリアという大切な人を失わずにすんだ。
俺がデリアに決別の言葉を告げた1週間後、兄さんが俺を訪ねて来た。
何事かと思えば、デリア親子がサイリール兄さんによって救われ、今は兄さんの斡旋で仕事につき、兄さんの家の近くの家に住んでいるのだという。
詳しい話しはされなかったが、どうやら複雑な事情があったらしく、俺に借りた金を返したくて仕事に励んでいるのだそうだ。
俺はその話を聞いてすぐにデリアに会いに行きたかった。
だけど、兄さんがデリアが会いに来るまで待っているべきだと言うのでずっと待っていたのだ。
彼女に会った日に決別の言葉を告げたにも関わらず、俺はデリアの事をずっと忘れられなかった。
何をしていても彼女の悲し気な顔が浮かんで胸が苦しくなったのだ。
それは日を経つごとに強くなり、夢でまで彼女の事をみるようになった。
そんな日々を1ヵ月過ごした所でデリアが訪ねてきたのだ。
そして彼女の話しを聞き終えた時、俺はこれまでずっと彼女に会いに行かなかった事を後悔した。
もし彼女に会いに行っていれば、彼女があんなに辛い思いをする事もなかったのではないか。
こんな屋敷で不自由なく暮らさせてもらっているのだから我儘なんて言いたくなくて、ずっと会いに行かなかった。
そのうちにデリアの事も薄れ、サーシャちゃんを好きになり、告白もした。
あんなに好きだったデリアの事を考えないようにして、忘れ、自分は他の女の子に恋をしたのだ。
情けなすぎて、自分が嫌になる。
だけど、デリアに再び出会って告白をして、受け入れてもらえたのだ。
今度こそ、彼女を離さないし、大事にする。
待ち合わせの像までもう少しだ。
少し早く来すぎただろうか?
約束の10時まで後30分もある。
俺は外出用に借りた小さな懐中時計の蓋を閉じた。
そうして像が見える所までやってきたが、そこで驚いてしまった。
すでにデリアがいるのだ。
淡いピンク色のワンピースを着て小さな籠を持っている。
その姿は遠くから見てもとても愛らしくて可愛かった。
急いでデリアの所へ行こうと思って足を早めようとした所で何やらデリアに話しかける男がいた。
俺とデリアよりも年上に見えるが、誰だろうか。
デリアも受け答えしているので知り合いだろうか?
そのまま俺は足を進めるが、ある光景を見て走り始めた。
男がデリアの手をとっているのだ。
デリアは嫌がっている。
そのまま俺は走ってデリアの元へ行き、デリアの手を握っている男の手首をぎゅっと握ると捻った。
男は痛みに悶えているが知った事ではない。
「デリア、大丈夫?」
「ラリー……」
デリアはうっすらと目に涙を浮かべていた。
痛みに悶える男の手を離して告げる。
「嫌がる女の子に無理やり迫るのは良くないよ、お兄さん、それに彼女は俺の大切な人なんだ。これ以上手を出すのはやめてくれないか」
俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、男は舌打ちをすると捨て台詞を吐いて走って行った。
「デリア、彼は知り合いなの?」
「うん、私の通ってる学習所に通ってる人なんだけど……さっきは怖かった……」
「大丈夫だよ、デリア。俺が守るから、と言いたいけどずっとは無理だからな……うん、よし。デリア、任せて。俺きっと何とかするから」
「うん……ラリー信じてる……」
デリアはそう言うと俺の手をぎゅっと握った。
俺も握り返し、そして決意した。
サイリール兄さんに相談しようと。
こんな我儘を言うのは初めてかもしれない、けど、大切な人を守る為なら俺の小さなプライドなど捨てされる。
その日のデリアとのデートは心がずっと暖かくて弾むものだった。
デリアが見せる笑顔が眩しくて、彼女のはずんだ声が嬉しくて、俺は一緒にいるだけで幸せだった。
しかしそんな楽しい時間も終わりを迎える。
もう日が傾いてきているのだ。
夕暮れのオレンジに染まる道を二人手を繋いで歩く。
ただただ幸せだった。
何も話さなくても、無言でも、その時間が辛くないのだ。
彼女の手から伝わる温もりが、すべてを語ってくれている。
そして、彼女の住んでいる家まで着いた。
「デリア、今日は楽しかった」
「私も、すごく楽しかった。あんなに楽しいのは初めてだった。離れるのが寂しい……」
「俺も寂しいよ。でも、離れていても心は一緒だ」
デリアは潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
愛しくて可愛くてたまらない。
デリアが目を閉じ、俺とデリアの唇は重なった。
暫くして唇を離すと彼女と抱き合う。
「好きだよ、デリア」
「私も好き、ラリー」
彼女の柔らかい体も、サラサラの髪の毛も、その温もりも、すべてが愛しくてたまらない。
そして、次のデートの約束を交わして俺とデリアは別れた。
帰り道、俺はとても浮かれていた。
初めてのデートだったけど、何をしても楽しかった。
次にデリアと会う日が待ち遠しくてたまらないのだ。
屋敷への道を歩いている時、少し薄暗い路地に差し掛かった。
だけど俺は何も気にしていなかった。
そして俺は迂闊だった。
何の為にサイリール兄さんが家族の為に防護の腕輪をくれたのか。
家族を愛して守りたいからくれた防護の腕輪を、俺は初めてのデートで浮かれて付け忘れていたのだ。
薄暗い路地を歩いていると急に後ろから後頭部を殴りつけられた。
俺は一瞬意識を失い、そのまま吹き飛ばされ、塀にぶつかった。
視界がぐらぐらと揺れる。
それでも、相手を確かめる為に痛みと揺れを堪えて俺は振り向いた。
そこにいたのは角材を持ったあの男だった。
デリアの腕を掴んでいた男だ。
「お、おまえが悪いんだぞ!俺の、俺のデリアなのに!キ、キスなんてしやがって!おまえがいなければ!デリアは俺と付き合うはずだ!」
反論をしたくてもうまく言葉が出ない。
男は角材を再び振り上げた。
これはまずい、俺はとにかく頭を守った。
幸いだったのは、男が人を殴る事に慣れていなかった事だろう。
それでも角材で男の力で殴られれば相応のダメージはある。
とにかく急所と頭部だけを守った。
暫くして、男は蹲る俺を見て、小さく悲鳴をあげてから走って逃げていった。
ようやく終わったと思い、俺はゆっくりと頭部を守っていた手を下す。
全身がギシギシと痛む、それに全身血まみれのようだ。
あちこちの皮膚が裂け、血が流れている。
腕を動かそうとしてズキリと痛む。
どうやら右腕の骨が折れているようだが、左腕は無事なようだ。
脚も痛いがどうやら骨は折れていないようなので、歩けるだろう。
とにかく、まずは屋敷へと帰らねばならない。
俺は痛む全身を引きずるように、屋敷へと向けて歩き出した。
どのくらい時間がかかったのか分からないが、やっと屋敷の門が見えた。
俺が歩いた後はずっと血が点々と落ちている。
門に近づいた所で、フェローさんが慌てた様子で飛び出してきた。
すぐに俺に近づくと俺を抱きかかえた。
「ラリー!どうしたんだ!何があった!」
俺を抱きかかえ急いで屋敷へ走りながらもフェローさんは声をかける。
申し訳ない事をしてしまった。
家族を心配させてしまうなんて。
「ごめん……なさい……俺の、不注意、です……」
俺はそこで意識を失ってしまった。
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