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第百八十九話 ライナーの目的
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サイリールとの会談を終えたライナーは鼻歌を歌いながら宿屋へと向かっていた。
「いいやつだったな、サイリールは」
そう、独り言をつぶやく。
「いい人だったのね、あなたがそんなに機嫌がいいなんて」
彼の独り言に言葉を返す者がいた。
ついさっきまではそこにはライナー以外いなかったのに、ライナーの隣を歩く女性がいた。
しかし、ライナーは驚く事もなく声を返す。
「なんだ、ジル、来たのか」
ジルと呼ばれた女性は黒髪を腰あたりまで伸ばし、目鼻立ちの整った美しい顔をしている。
胸は豊満で腰は括れており、とてもスタイルがいい。
「ええ、そろそろ夕食の時間だから、迎えに来たの」
「そうか、でもあんまその能力使うなよ。誰が見てるかわからねぇんだから」
先ほどサイリールと会談していた時とは随分口調が違うようだが、こちらが彼の素なのだろう。
仲間内だからこそ、ここまで砕けた喋り方になっているようだ。
「わかってるわ。でも少しだけ心配だったのよ」
「はは。かわいいな、ジルは」
「もう、ふざけないで、ライナー。私本当に心配したのよ」
「わかってるさ。でも良かったよ。サイリールは違ったからな。とはいえ、仮にそうだったとしても話し合えたと思うしな」
「そう」
優し気な目でライナーを見つめる女性は彼の腕に自らの腕を絡めると寄り添った。
「ジル、気をつけろよ?」
「わかってるわ。だから右手にくっついてるんじゃない。帰ったらきちんと手を洗ってね」
「ああ、おまえをケガさせるわけにはいかねぇからな。愛してるよ、ジルヴィア」
「もう……。愛してるわ、ライナー」
そうして二人は寄り添いながら歩き続けた。
そんな二人をじっと見つめている小さな蜘蛛を連れて。
「フェロー、どうでしたか?」
そう声をかけたのはセドリックだった。
フェローが今いるのは庭の片隅にある地下室だ。
「ああ、セドリック。やはり何か目的はあったようだぞ。ハッキリとは告げてないが、会話の内容からして旦那様に直接会って何かを確かめたようだ」
「やはりそうでしたか。引き続き監視をお願いできますか?」
「ああ、任せてくれ。予備にあと数匹に追わせているから、何か分かったら知らせる」
「ええ、ありがとうございます。宜しくお願いします」
そうしてセドリックが地下室を出たのを見送ってからフェローは再び意識をライナーにくっついている蜘蛛へと移した。
すでにライナーは宿屋に戻ってきており、今は仲間と共に食事をしに出掛ける所のようだった。
「ライナー、どうだったんだよ?やっぱすげぇ美人だったか?」
「ああ、サイリールは予想以上に美人だったぞ」
「まじか、どんだけよ?いいなぁ、俺も見たかったなぁ。なんで連れて行かねーんだよ」
「お前みたいな野蛮な男を連れていけるわけねぇだろ、ヴァルター」
ヴァルターと呼ばれた男性は年は20歳くらいだろうか、引き締まった体躯をしており、短い赤毛の髪がツンツンとしている。
顔には左目あたりに3本の爪痕が残されている。
背はあまり高くなく、165cm程だろうか。
腰には2本の短剣をぶら下げている。
「なんでだよ!」
「そーそー、ライナーの言う通り、ヴァルターは口が悪いからねー」
「うるせーぞ!ユッテ!」
ヴァルターにユッテと呼ばれた少女は年は16歳くらいだろうか、栗色の髪の毛をポニーテールにしており、少し吊り目だが、可愛らしい顔立ちをしている。
背中には弓を背負っていた。
「キャー!助けてーベティ!ヴァルターがいじめるー」
「あらあら、だめでしょ、ユッテちゃん。ヴァルターも、大きな声を出さないのよ」
「わーったよ!ベティーナ。くそ、ユッテ覚えてろよ」
ベティーナと呼ばれた女性はおっとりとした声を出して二人を叱った。
年は20代前半だろうが、妙に落ち着いているので20代後半にも見える。ベティーナは、ふんわりとした白がベースのローブに身を包んでいる。
しかし腰から下げているのはそれなりに重量のありそうな鈍器であった。
髪は肩で切りそろえており、灰色の珍しい色をしている。
ややたれ目がちな目が全体を優しい雰囲気にしている。
「よーし!ゲルト、気分転換に今日は飲み比べしようぜ!」
「いいが、俺が勝つぞ」
ゲルトと呼ばれた男は身長は高く2m近くあるようだ。
横幅も大きく、見た目はまるで熊のようだ。
かといって脂肪というわけではなく筋肉の塊のようである。
背中には大きな盾と腰には鈍器をぶら下げている。
そんな仲間達の後ろをライナーとジルヴィアは二人寄り添って歩いている。
「あいつらは相変わらずだ、困ったやつらだな」
「あら、困ったと言ってる割に顔が笑っているわよ?くすくす」
そんなジルヴィアの言葉にそっぽを向くライナー。
そんなライナーを優しくジルヴィアは見つめる。
「もー、ジルとライナーは相変わらずイチャイチャしてー!」
「うっせー、さっさと行くぞ」
ユッテの頭をガシガシとかきまわしたライナーは少し歩く速度をあげて酒場へ向けて移動をするのだった。
「いいやつだったな、サイリールは」
そう、独り言をつぶやく。
「いい人だったのね、あなたがそんなに機嫌がいいなんて」
彼の独り言に言葉を返す者がいた。
ついさっきまではそこにはライナー以外いなかったのに、ライナーの隣を歩く女性がいた。
しかし、ライナーは驚く事もなく声を返す。
「なんだ、ジル、来たのか」
ジルと呼ばれた女性は黒髪を腰あたりまで伸ばし、目鼻立ちの整った美しい顔をしている。
胸は豊満で腰は括れており、とてもスタイルがいい。
「ええ、そろそろ夕食の時間だから、迎えに来たの」
「そうか、でもあんまその能力使うなよ。誰が見てるかわからねぇんだから」
先ほどサイリールと会談していた時とは随分口調が違うようだが、こちらが彼の素なのだろう。
仲間内だからこそ、ここまで砕けた喋り方になっているようだ。
「わかってるわ。でも少しだけ心配だったのよ」
「はは。かわいいな、ジルは」
「もう、ふざけないで、ライナー。私本当に心配したのよ」
「わかってるさ。でも良かったよ。サイリールは違ったからな。とはいえ、仮にそうだったとしても話し合えたと思うしな」
「そう」
優し気な目でライナーを見つめる女性は彼の腕に自らの腕を絡めると寄り添った。
「ジル、気をつけろよ?」
「わかってるわ。だから右手にくっついてるんじゃない。帰ったらきちんと手を洗ってね」
「ああ、おまえをケガさせるわけにはいかねぇからな。愛してるよ、ジルヴィア」
「もう……。愛してるわ、ライナー」
そうして二人は寄り添いながら歩き続けた。
そんな二人をじっと見つめている小さな蜘蛛を連れて。
「フェロー、どうでしたか?」
そう声をかけたのはセドリックだった。
フェローが今いるのは庭の片隅にある地下室だ。
「ああ、セドリック。やはり何か目的はあったようだぞ。ハッキリとは告げてないが、会話の内容からして旦那様に直接会って何かを確かめたようだ」
「やはりそうでしたか。引き続き監視をお願いできますか?」
「ああ、任せてくれ。予備にあと数匹に追わせているから、何か分かったら知らせる」
「ええ、ありがとうございます。宜しくお願いします」
そうしてセドリックが地下室を出たのを見送ってからフェローは再び意識をライナーにくっついている蜘蛛へと移した。
すでにライナーは宿屋に戻ってきており、今は仲間と共に食事をしに出掛ける所のようだった。
「ライナー、どうだったんだよ?やっぱすげぇ美人だったか?」
「ああ、サイリールは予想以上に美人だったぞ」
「まじか、どんだけよ?いいなぁ、俺も見たかったなぁ。なんで連れて行かねーんだよ」
「お前みたいな野蛮な男を連れていけるわけねぇだろ、ヴァルター」
ヴァルターと呼ばれた男性は年は20歳くらいだろうか、引き締まった体躯をしており、短い赤毛の髪がツンツンとしている。
顔には左目あたりに3本の爪痕が残されている。
背はあまり高くなく、165cm程だろうか。
腰には2本の短剣をぶら下げている。
「なんでだよ!」
「そーそー、ライナーの言う通り、ヴァルターは口が悪いからねー」
「うるせーぞ!ユッテ!」
ヴァルターにユッテと呼ばれた少女は年は16歳くらいだろうか、栗色の髪の毛をポニーテールにしており、少し吊り目だが、可愛らしい顔立ちをしている。
背中には弓を背負っていた。
「キャー!助けてーベティ!ヴァルターがいじめるー」
「あらあら、だめでしょ、ユッテちゃん。ヴァルターも、大きな声を出さないのよ」
「わーったよ!ベティーナ。くそ、ユッテ覚えてろよ」
ベティーナと呼ばれた女性はおっとりとした声を出して二人を叱った。
年は20代前半だろうが、妙に落ち着いているので20代後半にも見える。ベティーナは、ふんわりとした白がベースのローブに身を包んでいる。
しかし腰から下げているのはそれなりに重量のありそうな鈍器であった。
髪は肩で切りそろえており、灰色の珍しい色をしている。
ややたれ目がちな目が全体を優しい雰囲気にしている。
「よーし!ゲルト、気分転換に今日は飲み比べしようぜ!」
「いいが、俺が勝つぞ」
ゲルトと呼ばれた男は身長は高く2m近くあるようだ。
横幅も大きく、見た目はまるで熊のようだ。
かといって脂肪というわけではなく筋肉の塊のようである。
背中には大きな盾と腰には鈍器をぶら下げている。
そんな仲間達の後ろをライナーとジルヴィアは二人寄り添って歩いている。
「あいつらは相変わらずだ、困ったやつらだな」
「あら、困ったと言ってる割に顔が笑っているわよ?くすくす」
そんなジルヴィアの言葉にそっぽを向くライナー。
そんなライナーを優しくジルヴィアは見つめる。
「もー、ジルとライナーは相変わらずイチャイチャしてー!」
「うっせー、さっさと行くぞ」
ユッテの頭をガシガシとかきまわしたライナーは少し歩く速度をあげて酒場へ向けて移動をするのだった。
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