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第百四十二話 Bランクパーティ(前編)
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くそっなんでこうなったんだ!ちくしょう!
「くそっ!マリー!マリー!!どこだ!」
「だめだ!クラウス!多すぎる!!」
どうしてこうなったんだ。
俺達はいつも通り、ここにゴブリン狩りに来ただけなのに。
----------
「ねぇ、今日もゴブリン?」
「ん?そうだけど、なんだよ?」
「ははは、マリーはゴブリン嫌いなんだよな、ぶっさいくだもんな、あいつら」
「なによ。フランクだってゴブリン飽きたって言ってたじゃない」
そう口を尖らせて文句を言うマリー。
彼女は俺の恋人兼パーティの仲間だ。
俺達はBランクのパーティである。
と言っても数ヶ月前になったばかりではあるが。
フランクは俺の幼馴染ですでに所帯持ちである。
2歳のかわいい子供もいるし、ハンター稼業で家族に心配をかけてしまうが、それでも一番稼げる仕事なので頑張っているよき父親で、俺の親友だ。
マリーと出会えたのもフランクのおかげでもある。
フランクがソロでハンターをしていた彼女を誘ってくれたのだ。
本来男パーティに女を入れるのは不和の元ではあるが、当時すでにフランクには将来を誓った彼女がいたので、仮に色恋に発展してもフランクは問題ないので誘ったという経緯がある。
「仕方ないだろー。今ちょっと金欠なんだよ。あともう少しだから我慢して付き合ってくれよ」
口を尖らせつつも本気で怒っているわけじゃないマリーは仕方ないなぁと付き合ってくれる。
「付き合ってあげるから今度何かご飯おごってよー」
「へいへい。おごらさせて頂きますよ」
「よろしい!」
「俺にも頼むぜ?クラウス」
「やだよ!マリーにしかおごらん!」
「ありえねー。なー、マリーこいつひどくね?」
「いいのー♪クラウスはあたしの彼氏だもーん」
「うわぁ~」
そんな会話をしつつ、今日もゴブリン狩りの為に山麓の森へやってきていた。
実の所、別に金欠でもなんでもない。
後少しで、彼女への求婚の為の指輪を買う代金が貯まるのだ。
別に指輪でなくてもいいんだが、前にデート中に少し高そうな宝飾店に行った時、その指輪を彼女が見ていて、欲しそうにしていた。
でも、さすがに金貨10枚近くを指輪に出すなんて出来ずに断念したのだ。
それでも、デート後も時々一人で見に行ってるのを俺は気づいていた。
だから、その指輪を買って、彼女に求婚する。
これについてはすでにフランクにも相談しているので、知っているのだ。
知らないのはマリーだけ。
今日の稼ぎがよければ、明日にでも指輪を買いにいくつもりだった。
そう、だから、少し欲張ってしまった。
フランクは少し奥に来すぎじゃないか?と注意をしていてくれたのに。
ただ彼女の喜ぶ顔が見たかった。
彼女に愛を告げたかった。
なのに、俺のせいで。
「マリー!!どこだ!返事をしてくれ!グゥッ」
ゴブリンの棍棒を盾で受け止め切り付ける。
「グギャギャギャ!グギャ!」
フランクと背中合わせになりながら必死にゴブリンの攻撃を受け、反撃する。
最初は6匹の集団だった。
いつも通り、彼女が木の上から弓で攻撃をして戦闘を開始した。
いつも通りやれば、倒せるはずだった。
俺が注意を引き付け、フランクが攻撃をし、木の上からマリーが弓を撃つ。
いつもならこれで終わるはずだった。
最初に彼女の悲鳴が聞こえた。
慌てて振り返ると彼女を引きずり降ろすゴブリンの姿が見えた。
俺とフランクは急いで彼女を助けに行こうとした。
だけど、マリーとの間に、新たなゴブリングループが現れたのだ。
背後にはまだ倒しきっていないゴブリンがいる。
マリーの元へ行きたくてもゴブリンの新しいグループがいる。
焦る俺をフランクが落ち着かせようとした。
「落ち着け、クラウス。最悪ではあるが、マリーはまだ殺されていない。ゆっくり確実にマリーの元へ行くんだ。いいな?」
「わかってる!わかってはいる!」
あまり余裕はないが、俺は一度目を閉じ、深呼吸をした。
「よし、フランクは後ろを頼む。俺はゆっくり前進する」
「ああ、まかせておけ」
フランクの頼もしい言葉に俺は大丈夫だ、そう自分に言い聞かせた。
なぜなら奥で弓を撃つ音がしたからだ。
マリーは無事だ。でも急がねばならない。
彼女は近接じゃないのだ、長くは持たない。
そうして、ゆっくりと前進していった。
考えないようにしていた。
俺達ではこの数は対処しきれない事を。
対処しきれなくても、やるしかないのだから。
途中までは順調だった。
だけど、ある地点で崩れた。
前方と後方だけだったゴブリンの群れが、さらに左からも現れたのだ。
しかも、その一部がマリーの元へいったのだ。
奥から乱れた弓矢が飛ぶ。
そして彼女の悲鳴。
「マリーー!!」
そこからはもう乱戦だった。
まだ俺もフランクも生きているのは、ゴブリンが連携しないからだ。
それでももう、俺もフランクもボロボロだ。
マリーは何度呼んでも応えてくれない。
もう、ダメなのか……。
すまないフランク、家族の元へ帰してやれなくて。
すまないマリー、俺のせいで、すまない。すまない。
だけど、最後は彼女と共にいたい。
「くそっ!マリー!マリー!!どこだ!」
「だめだ!クラウス!多すぎる!!」
どうしてこうなったんだ。
俺達はいつも通り、ここにゴブリン狩りに来ただけなのに。
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「ねぇ、今日もゴブリン?」
「ん?そうだけど、なんだよ?」
「ははは、マリーはゴブリン嫌いなんだよな、ぶっさいくだもんな、あいつら」
「なによ。フランクだってゴブリン飽きたって言ってたじゃない」
そう口を尖らせて文句を言うマリー。
彼女は俺の恋人兼パーティの仲間だ。
俺達はBランクのパーティである。
と言っても数ヶ月前になったばかりではあるが。
フランクは俺の幼馴染ですでに所帯持ちである。
2歳のかわいい子供もいるし、ハンター稼業で家族に心配をかけてしまうが、それでも一番稼げる仕事なので頑張っているよき父親で、俺の親友だ。
マリーと出会えたのもフランクのおかげでもある。
フランクがソロでハンターをしていた彼女を誘ってくれたのだ。
本来男パーティに女を入れるのは不和の元ではあるが、当時すでにフランクには将来を誓った彼女がいたので、仮に色恋に発展してもフランクは問題ないので誘ったという経緯がある。
「仕方ないだろー。今ちょっと金欠なんだよ。あともう少しだから我慢して付き合ってくれよ」
口を尖らせつつも本気で怒っているわけじゃないマリーは仕方ないなぁと付き合ってくれる。
「付き合ってあげるから今度何かご飯おごってよー」
「へいへい。おごらさせて頂きますよ」
「よろしい!」
「俺にも頼むぜ?クラウス」
「やだよ!マリーにしかおごらん!」
「ありえねー。なー、マリーこいつひどくね?」
「いいのー♪クラウスはあたしの彼氏だもーん」
「うわぁ~」
そんな会話をしつつ、今日もゴブリン狩りの為に山麓の森へやってきていた。
実の所、別に金欠でもなんでもない。
後少しで、彼女への求婚の為の指輪を買う代金が貯まるのだ。
別に指輪でなくてもいいんだが、前にデート中に少し高そうな宝飾店に行った時、その指輪を彼女が見ていて、欲しそうにしていた。
でも、さすがに金貨10枚近くを指輪に出すなんて出来ずに断念したのだ。
それでも、デート後も時々一人で見に行ってるのを俺は気づいていた。
だから、その指輪を買って、彼女に求婚する。
これについてはすでにフランクにも相談しているので、知っているのだ。
知らないのはマリーだけ。
今日の稼ぎがよければ、明日にでも指輪を買いにいくつもりだった。
そう、だから、少し欲張ってしまった。
フランクは少し奥に来すぎじゃないか?と注意をしていてくれたのに。
ただ彼女の喜ぶ顔が見たかった。
彼女に愛を告げたかった。
なのに、俺のせいで。
「マリー!!どこだ!返事をしてくれ!グゥッ」
ゴブリンの棍棒を盾で受け止め切り付ける。
「グギャギャギャ!グギャ!」
フランクと背中合わせになりながら必死にゴブリンの攻撃を受け、反撃する。
最初は6匹の集団だった。
いつも通り、彼女が木の上から弓で攻撃をして戦闘を開始した。
いつも通りやれば、倒せるはずだった。
俺が注意を引き付け、フランクが攻撃をし、木の上からマリーが弓を撃つ。
いつもならこれで終わるはずだった。
最初に彼女の悲鳴が聞こえた。
慌てて振り返ると彼女を引きずり降ろすゴブリンの姿が見えた。
俺とフランクは急いで彼女を助けに行こうとした。
だけど、マリーとの間に、新たなゴブリングループが現れたのだ。
背後にはまだ倒しきっていないゴブリンがいる。
マリーの元へ行きたくてもゴブリンの新しいグループがいる。
焦る俺をフランクが落ち着かせようとした。
「落ち着け、クラウス。最悪ではあるが、マリーはまだ殺されていない。ゆっくり確実にマリーの元へ行くんだ。いいな?」
「わかってる!わかってはいる!」
あまり余裕はないが、俺は一度目を閉じ、深呼吸をした。
「よし、フランクは後ろを頼む。俺はゆっくり前進する」
「ああ、まかせておけ」
フランクの頼もしい言葉に俺は大丈夫だ、そう自分に言い聞かせた。
なぜなら奥で弓を撃つ音がしたからだ。
マリーは無事だ。でも急がねばならない。
彼女は近接じゃないのだ、長くは持たない。
そうして、ゆっくりと前進していった。
考えないようにしていた。
俺達ではこの数は対処しきれない事を。
対処しきれなくても、やるしかないのだから。
途中までは順調だった。
だけど、ある地点で崩れた。
前方と後方だけだったゴブリンの群れが、さらに左からも現れたのだ。
しかも、その一部がマリーの元へいったのだ。
奥から乱れた弓矢が飛ぶ。
そして彼女の悲鳴。
「マリーー!!」
そこからはもう乱戦だった。
まだ俺もフランクも生きているのは、ゴブリンが連携しないからだ。
それでももう、俺もフランクもボロボロだ。
マリーは何度呼んでも応えてくれない。
もう、ダメなのか……。
すまないフランク、家族の元へ帰してやれなくて。
すまないマリー、俺のせいで、すまない。すまない。
だけど、最後は彼女と共にいたい。
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