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第百四十話 Aランク依頼

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 エドンの町での別れをすませてから数日が経った。
 先日ハンターギルドから使いが来た。
 Aランクの指名依頼が来ているという話しだ。
 今日はその内容を詳しく聞く為にハンターギルドへと向かう予定である。

 朝食を皆ととったサイリールは、出かける旨を伝えて屋敷を後にした。
 ギルドに到着し、受付にいる男性職員に声をかけると、サイリールの担当である女性職員がやってきた。
 詳しく説明すると言ってギルドの2階へ案内された。

 席につくと、女性職員は依頼書などを用意してから話し始めた。
 今回の指名依頼はオルペの街の領主からの依頼であった。
 依頼内容は、オルペ北部の山に住み着いた巨大な肉食の闇獣であるトカゲの討伐だ。
 通常のトカゲが1m程なのに対し、その闇獣は2m近くあるらしい。
 大きさの割りに動きが俊敏で、Bランクパーティがそれを目撃し、報告されたのだ。
 一応まだ被害は出ていないようではあるが、いつ被害が出るか分からないというのと、距離的に街に近い為にちょうどここに居を構えているサイリールに指名依頼が出されたらしい。
 特に喧伝しているわけでもないが、居場所は把握されているようだ。
 街に入る時に別に隠れているわけでもないので当然かもしれないが。

「そのトカゲの証明部位はどこかな?」

 サイリールの質問に、頬を赤く染めつつも職員はしっかりと返事をする。

「尻尾の先が鎧のようになっておりまして、その部分をお持ち下さい」
「わかった。指名依頼を受けるよ」
「ありがとうございます。移動に必要な馬の用意はこちらで致しましょうか?」
「いや、自分で用意するからいいよ」
「承知致しました。では、こちらが依頼用紙の控えとなります。お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
「あ、一応告知義務がありますのでお伝えしておきますね。今回の依頼は期限はありませんが、極端に遅すぎたりしますと、報酬と評価が下がりますのでお気をつけ下さい」
「うん、大丈夫。そうかからないと思うし」
「では、改めまして、お気をつけて」

 職員の言葉に頷いたサイリールはギルドを後にした。
 サイリールが去った後その女性職員はしばらくの間部屋の中で自らの頬の熱さが冷めるまで時間を置く事になった。

 ちなみに、期限はないが、遅すぎると、というのは今回を例にしていうと、山までは馬車で普通に行って2ヶ月程になるので、何も報告せずに1年以上かけても依頼が終わっていなければ、という所だろう。


「旦那様お帰りなさいませ」
「うん、ただいま。そうだ、セドリック」
「はい、なんでございましょう?」
「ギルドの指名依頼を受けたから馬の用意をしておいてもらえるかな」
「承知致しました。夜はどうなさいますか?」
「戻ってくるよ。馬小屋にゲートを作ってから行くつもりだ」
「はい。では準備して参ります」
「うん、頼んだ」

 馬に関しては、以前山賊から奪った馬を売り払った金できちんと訓練され、品種もいい馬を購入してあるので移動はかなり早く行えるだろう。
 屋敷の外には出れないが、子供達とまた長期間離れる気はないので、朝と夜だけは一緒に食事をとるつもりなのだ。

 セドリックに馬の用意を頼んだサイリールは自室へと戻った。
 服を着替えていると、カタンと小さな音がした。
 音のした方を見るとフォウがちょうど部屋のフォウ用の扉から入ってきた所だった。

 そのフォウのすぐ後を再度カタンと音をさせて入ってきたのは、胸に一房の茶色い毛が混じったシーニーだった。

「おや、シーニーを連れてきたのかい?」

 サイリールの声に、フォウがぴぃと鳴いた。
 シーニーもクゥと鳴いてこちらへ挨拶のように頭を上下させた。

 フォウとの会話の為に屋敷のあちこちに紙とペンを置いてあるのだが、当然サイリールの部屋にもある。
 フォウがそこへ行くと何かを書き始めた。
 着替えを終えたサイリールがそちらへと歩いて行く。

 フォウが書いた内容を読み、サイリールは笑顔になった。

「かまわないよ。案内してあげるといい。フェロー達には伝えておくから。でも庭の外に出ないように気をつけるんだよ」

 サイリールの言葉にフォウは頷き、嬉しげに鳴くとシーニーを連れて部屋から出て行った。
 フォウが書いた内容は、シーニーに庭を見せてあげたいという内容だった。
 山には綺麗な花などはないので、それを見せたいのだろう。
 そんなフォウのかわいさに癒されつつ、闇の回線を使って伝えておく。
 特にフェローにはフォウ達がうっかり庭から外へ出てしまわないように気をつけて見てあげてくれと頼んでおいた。

 そして準備を終えたサイリールは、談話室で本を読んでいたアソートに一言声をかけてから馬小屋へと向かった。
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