66 / 288
第六十六話 訳あり?
しおりを挟む
階段を降りると受付にいた少女がボケっとした顔でこちらを見ていた。
サーシャを抱き上げていたサイリールがそれに気づき、少女へ向けてニコリと笑いかけた。
その瞬間少女はボっと音が出そうな勢いで顔を真っ赤にした。
「食事をお願い出来るかな?」
顔を赤くしたまま少女は答える。
「は、はい……」
「宜しくね」
またニコリと微笑みかける。
少女はサイリールらが席へと歩いて行くのを見送ると、ふわふわした足取りで厨房に歩いて行った。
丸い机の周りに椅子が置いてある席にそれぞれが腰かける。
ファニーには椅子が低すぎるのでエルが自身の膝の上にのせた。
しばらくしたら先程受け付けにいた少女の母親がやってきた。
「ああ、ごめんなさいね、お客さん。うちの子が何も聞いてなかったみたいで」
そう言って人数分の水の入ったコップを置いてくれた。
「それで、基本的に料理はこちら任せになるんだけど、お客さん達苦手なものはあるかしら?」
サイリール女の言葉にちょうど目があったエルが答えた。
「いえ、特にございませんよ。ただ、お嬢様達はあまり辛いものはお得意ではございませんので、辛いものを避けて頂ければ」
「お嬢様?あら、いいとこのお嬢ちゃんだったのかしらね。失礼をしていたらごめんなさいね」
エルの言葉に、身分が高い一行なのかと少し焦る彼女に、サイリールが声をかけた。
「ああ、そういう訳ではないんですよ。単にエルが以前働いていた時の喋り方のクセでして、特に僕らの身分が高いとかそういうのではないんです」
少々苦しい言い訳になったが彼女は少しほっとしたようであった。
ただ、訳アリと思われた雰囲気はあった。
彼女が飲み物の希望などを聞いて戻っていったあと、エルが申し訳なさそうに口を開いた。
「申し訳ございません。うっかりしておりました……」
「いや、仕方ないよ。その辺考えておくべきだったな」
そんな二人を見つつアソートが口を開いた。
「でも、どこもそんなに長居するわけでもないし、いいんじゃないかな。変に繕ってもきっとどこかでボロが出てしまうからさ」
アソートの言葉にエルもサイリールも確かに、と頷いた。
「だから、あまり気にせずに家族旅行なんだし、楽しもうよ」
「うん、確かにそうだね。気にしないようにしようか」
「はい、そうでございますね。アソート様、有難うございます」
お互いニコリと笑いあい、食事が運ばれるまでアレコレと話しながら会話を楽しんだ。
サーシャを抱き上げていたサイリールがそれに気づき、少女へ向けてニコリと笑いかけた。
その瞬間少女はボっと音が出そうな勢いで顔を真っ赤にした。
「食事をお願い出来るかな?」
顔を赤くしたまま少女は答える。
「は、はい……」
「宜しくね」
またニコリと微笑みかける。
少女はサイリールらが席へと歩いて行くのを見送ると、ふわふわした足取りで厨房に歩いて行った。
丸い机の周りに椅子が置いてある席にそれぞれが腰かける。
ファニーには椅子が低すぎるのでエルが自身の膝の上にのせた。
しばらくしたら先程受け付けにいた少女の母親がやってきた。
「ああ、ごめんなさいね、お客さん。うちの子が何も聞いてなかったみたいで」
そう言って人数分の水の入ったコップを置いてくれた。
「それで、基本的に料理はこちら任せになるんだけど、お客さん達苦手なものはあるかしら?」
サイリール女の言葉にちょうど目があったエルが答えた。
「いえ、特にございませんよ。ただ、お嬢様達はあまり辛いものはお得意ではございませんので、辛いものを避けて頂ければ」
「お嬢様?あら、いいとこのお嬢ちゃんだったのかしらね。失礼をしていたらごめんなさいね」
エルの言葉に、身分が高い一行なのかと少し焦る彼女に、サイリールが声をかけた。
「ああ、そういう訳ではないんですよ。単にエルが以前働いていた時の喋り方のクセでして、特に僕らの身分が高いとかそういうのではないんです」
少々苦しい言い訳になったが彼女は少しほっとしたようであった。
ただ、訳アリと思われた雰囲気はあった。
彼女が飲み物の希望などを聞いて戻っていったあと、エルが申し訳なさそうに口を開いた。
「申し訳ございません。うっかりしておりました……」
「いや、仕方ないよ。その辺考えておくべきだったな」
そんな二人を見つつアソートが口を開いた。
「でも、どこもそんなに長居するわけでもないし、いいんじゃないかな。変に繕ってもきっとどこかでボロが出てしまうからさ」
アソートの言葉にエルもサイリールも確かに、と頷いた。
「だから、あまり気にせずに家族旅行なんだし、楽しもうよ」
「うん、確かにそうだね。気にしないようにしようか」
「はい、そうでございますね。アソート様、有難うございます」
お互いニコリと笑いあい、食事が運ばれるまでアレコレと話しながら会話を楽しんだ。
0
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
後妻を迎えた家の侯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
私はイリス=レイバン、侯爵令嬢で現在22歳よ。お父様と亡くなったお母様との間にはお兄様と私、二人の子供がいる。そんな生活の中、一か月前にお父様の再婚話を聞かされた。
もう私もいい年だし、婚約者も決まっている身。それぐらいならと思って、お兄様と二人で了承したのだけれど……。
やってきたのは、ケイト=エルマン子爵令嬢。御年16歳! 昔からプレイボーイと言われたお父様でも、流石にこれは…。
『家出した伯爵令嬢』で序盤と終盤に登場する令嬢を描いた外伝的作品です。本編には出ない人物で一部設定を使い回した話ですが、独立したお話です。
完結済み!
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
離縁してほしいというので出て行きますけど、多分大変ですよ。
日向はび
恋愛
「離縁してほしい」その言葉にウィネアは呆然とした。この浮気をし、散財し、借金まみれで働かない男から、そんなことを言われるとは思ってなかったのだ。彼の生活は今までウィネアによってなんとか補われてきたもの。なのに離縁していいのだろうか。「彼女との間に子供ができた」なんて言ってますけど、育てるのも大変なのに……。まぁいいか。私は私で幸せにならせていただきますね。
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
四季
恋愛
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。
どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
【書籍化】家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました【決定】
猿喰 森繁
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
11月中旬刊行予定です。
これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。
加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」
婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる