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第六十六話 訳あり?

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 階段を降りると受付にいた少女がボケっとした顔でこちらを見ていた。
 サーシャを抱き上げていたサイリールがそれに気づき、少女へ向けてニコリと笑いかけた。
 その瞬間少女はボっと音が出そうな勢いで顔を真っ赤にした。

「食事をお願い出来るかな?」

 顔を赤くしたまま少女は答える。

「は、はい……」
「宜しくね」

 またニコリと微笑みかける。
 少女はサイリールらが席へと歩いて行くのを見送ると、ふわふわした足取りで厨房に歩いて行った。

 丸い机の周りに椅子が置いてある席にそれぞれが腰かける。
 ファニーには椅子が低すぎるのでエルが自身の膝の上にのせた。

 しばらくしたら先程受け付けにいた少女の母親がやってきた。

「ああ、ごめんなさいね、お客さん。うちの子が何も聞いてなかったみたいで」

 そう言って人数分の水の入ったコップを置いてくれた。

「それで、基本的に料理はこちら任せになるんだけど、お客さん達苦手なものはあるかしら?」

 サイリール女の言葉にちょうど目があったエルが答えた。

「いえ、特にございませんよ。ただ、お嬢様達はあまり辛いものはお得意ではございませんので、辛いものを避けて頂ければ」
「お嬢様?あら、いいとこのお嬢ちゃんだったのかしらね。失礼をしていたらごめんなさいね」

 エルの言葉に、身分が高い一行なのかと少し焦る彼女に、サイリールが声をかけた。

「ああ、そういう訳ではないんですよ。単にエルが以前働いていた時の喋り方のクセでして、特に僕らの身分が高いとかそういうのではないんです」

 少々苦しい言い訳になったが彼女は少しほっとしたようであった。
 ただ、訳アリと思われた雰囲気はあった。
 彼女が飲み物の希望などを聞いて戻っていったあと、エルが申し訳なさそうに口を開いた。

「申し訳ございません。うっかりしておりました……」
「いや、仕方ないよ。その辺考えておくべきだったな」

 そんな二人を見つつアソートが口を開いた。

「でも、どこもそんなに長居するわけでもないし、いいんじゃないかな。変に繕ってもきっとどこかでボロが出てしまうからさ」

 アソートの言葉にエルもサイリールも確かに、と頷いた。

「だから、あまり気にせずに家族旅行なんだし、楽しもうよ」
「うん、確かにそうだね。気にしないようにしようか」
「はい、そうでございますね。アソート様、有難うございます」

 お互いニコリと笑いあい、食事が運ばれるまでアレコレと話しながら会話を楽しんだ。
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