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あの日あなたに出会ってから
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あの日、あなたに出会ってから、私のすべてが変わったの。
世界に色がついて、私の心は解き放たれた。
ねぇみて?
私は今空にいるの。
ずっと行きたかった空。
青くて雲一つない空。
私が生まれたのはごく普通の家庭だったと思う。
多分きっとそうだった。
だけど、私が生まれてしばらくして、母は心を壊したらしい。
どうしてかは知らない。
母に聞いても返ってくるのはヒステリックな叫びだけ。
父に聞いても何も教えてくれない。
私が物心つくころには、もう母は普通じゃなかった。
だけど、私はそれが普通だから、それを普通じゃないとは知らなかった。
父はたまに家に帰ってきてた。
私が父を初めて見たのは、五歳のとき。
突然知らない人が家に入ってきてびっくりした。
その人は私をみて、嫌な顔をして、母に何かを言っていた。
母はとっても怯えてた。怯えてたんだとおもう。
怯えてたのに、縋ってた。
母は父に連れられて、別の部屋へいった。
私もついていこうとしたけど、来るなって怒鳴られた。
母と父が部屋にはいってから、母の叫び声が聞こえたの。
怖かった。
どのくらいか分からない。
でも、叫び声がおさまったころ、父が部屋からでてきた。
私をジロリと睨んで家をでていった。
私は慌てて母のいる部屋へ向かったの。
確かに私はそこで母を見たはずなんだけど、何も思い出せない。
ただ、そう。
なんだかとても嫌だった、そんな気持ちだけが残ってる。
父を父だと認識したのは、私が十歳のとき。
父はこれまでも時折帰ってきていたけど、それまでは時々くる男の人っていう認識だった。
だから私は母に聞いたの。
あの人は誰? って。
母は私の言葉を聞いて、鬼のような形相で私を叩いた。
その時に初めて、あの男の人が父なんだと知った。
結局私が父を父だと呼ぶことはなかったけど。
私が十二歳になった日、家に帰ると母が泣いていた。
慌ててかけよってどうしたのかと聞くと、父が帰ってこないと泣く。
そういえば私が十歳を過ぎたころから父は家に来なくなっていた。
しばらく泣いていた母だったが、その涙は怒りに変わり、私のせいだと、私を叩いた。
学校から帰ると、母はいつも泣いていた。
だからいつも私は母に叩かれた。
それが私にとっての普通だったから。
時々、知らないおじさんやおばさんがきて、母に何かを言っていた。
母はすごく怒ってた。
おじさんたちが帰ると、私が叩かれるので、できれば来てほしくなかった。
ある日、家に帰る途中で、おじさんやおばさんに囲まれた。
すごく怖かった。
おじさんたちは私に、何か色々聞いてきた。
母を悪く言ってばかりで嫌だった。
だから、私は母は悪くないと言って逃げたの。
家に帰ってそのことを母に話したら、叩かれた。
あのおじさんとおばさんがくると、私が叩かれる。
私の中で、おじさんとおばさんは悪になった。
その日から私はおじさんとおばさんを見かけたら全力で走って逃げた。
だって、悪い人たちだから。
小学校を卒業してから、私はずっと家にいるようになった。
母が外に行くなって言ったから。
十三歳になったある日、知らない男の人を連れて母が帰ってきた。
母に言われて、私はその男の人と別の部屋へ行った。
何かがあった気はするけど、よく覚えていない。
でも、その日から母が私を叩かなくなった。
お風呂も毎日いれてくれて、ご飯も食べさせてくれるようになったの。
嬉しかった。
私の髪も母が綺麗に切って整えてくれたの。
その代わり私は毎日複数の知らない男の人とあの部屋へ行かないといけなくなった。
母が父に何かをされていた部屋。
何をされているのかは分からないけど、すごく嫌だった。
一度だけそれを母に言ったらとっても怒られた。
だから二度と言わなかった。
だって、私が男の人とあの部屋へ行けば、母は私に優しくしてくれたんだもの。
私が十五歳になったある日、家に知らない人がたくさんきた。
私はちょうど男の人と部屋にいたから、知らない人がたくさんきてすごくびっくりしたの。
私は知らない女の人に毛布を着せられた。
そうしたら、母の悲鳴が聞こえたの。
だから慌ててそちらへ向かった。
母は複数の男の人に押さえ込まれて、手に銀色の輪っかをつけられていた。
私はすごくびっくりして、なにするの! って叫んだ。
お母さんを離して! って。
みんなびっくりした顔で私をみてた。
後ろから慌てたようにやってきた女の人にまた毛布を着せられた。
そこから先はよく覚えてない。
母がどうなったのかも、よくわからない。
気付けば私は病院ってところにいた。
なんだかよくわからないまま、入院だって言われた。
体調はどうだって言われたけど、よくわからない。
でも、そういえば最近少し体調が悪かった。
何かの病気だと言われて、お薬をいっぱい飲まされた。
点滴っていうのもつけられた。
進行がはやいってなんだろう?
病院というところに住み始めてから、私の体はどんどん弱くなっていった。
髪の毛が抜けて、いつも吐いてた。
苦しいから点滴をしないでと言っても、だめだって言われて、辛かった。
毎日お母さん助けてって泣いた。
だって、お母さんは優しかったから。
そうして毎日苦しくて泣いていたら、お母さんが男の人に連れられてきてくれたの!
すごく嬉しくて、お母さんって言ったら、お母さんすごく嫌な顔した。
あれは、父と同じ顔だった。
汚い物を見る目。
私ね、その時はじめて、ああ、私捨てられたって、そう気づいたの。
その日から私、すべてがどうでもよくなった。
痛みも苦しみも、何もかもどうでもよかった。
私が何も食べようとしないから、無理やり喉に流し込まれた。
ほっといてほしかった。
私に触れないでほしかった。
そんなある日、彼に出会ったの。
最初は私の隣に座って、私に何かをずっと話しかけてきた。
どうでもよかったから私は何も聞いていなかった。
そんなことがどのくらいかわからないけどずっと続いたの。
彼が私に話しかけるようになってしばらくしたら、私を苦しめていた点滴がはずされたの。
やっと苦しみから解放されたと思った。
体中痛かったけど、吐き気と苦しみからは解放された。
何も食べないせいで私の体はガリガリになっていたけど。
そんなことはどうでもよかったもの。
そうしてベッドでずっと過ごしていたある日、窓から見える一面の青空をみた私は――綺麗な青空、もっとよく見たい――そうつぶやいた。
そうしたら、ふわりと体が浮き上がったの。
びっくりしてみると、いつも私に話しかけていた彼が笑みを浮かべて言ったの。
――屋上へいってみよう――
車椅子っていうものに乗せられて、私は病院の屋上へと連れ出された。
びっくりした。
私の目の前には真っ青な空がどこまでも続いていたの。
最後に青空をみたのなんていつだろう。
とっても綺麗だった。
――鳥だ、いいな。私も鳥になりたい――
目の前の青空を一羽の小鳥が飛んでいた。
私にも翼があれば、自由に飛べるのに。
――君はもう自由だよ、どこまでも飛んでいける。もう自由なんだ――
彼の言葉に私はなぜだか物凄い衝撃を受けた。
私は自由なんだって、もう苦しまなくていいんだって。
涙が出た。止まらなかった。
大きな声をあげて泣いた。はじめてかもしれない。
彼は私を優しく抱きしめてくれた。
嬉しかった、暖かかった。
その日から全てが新鮮で、美しかった。
ご飯もおいしいし、お花は綺麗。
緑色の葉っぱも芝生も、何もかもが色づいて見えた。
彼が優しく微笑むその顔が、私はとても好きだった。
彼に好きだと告げたら、おでこにキスをしてくれた。
嬉しかった。
もうあまりよく動かない枯れ木のような私の手をとって、楽しもうねって言ってくれた。
行きたいところはたくさんあった。
でも体力がなくてあまり遠くにいけないのが残念。
それでも、近所の公園に連れていってくれたり、神社につれていってくれたりした。
楽しかった。
彼がいてくれるだけで笑顔になれた。
毎日が楽しかった。
でも段々と私の体は動かなくなった。
もうあちこち出かける体力もなかった。
それでも彼は毎日私を屋上に連れていってくれた。
雨の日は無理だったけど。
ある日体がまったく動かなくなった。
呼吸は浅くなって、苦しかった。
そんな日が少しだけ続いた。
青空が見たかった。
彼にお願いをしてみた。
――空が、見たい――
私の言葉を聞いた彼は、頷くとどこかへ行った。
しばらくしてお医者さんと看護師さんを連れて彼がやってきた。
色々と私に何かをしたあと、彼は車椅子に私を乗せてくれた。
お医者さんと看護師さんと一緒に、私と彼は屋上へ向かった。
屋上に出ると冷たい風が吹き抜けた。
いつのまにか冬が訪れていたみたいだ。
私は白い息を吐きながら空を見上げた。
本当は目もよく見えなかった。
でも、私の目にはあの日あの時みた、綺麗な青空がうつっていた。
――綺麗な、青空――
でも、首をあげているのもしんどかった。
そうしたら、彼が私を抱き上げてくれた。
楽に空が見れた。
――ありが、と――
本当にきれいな青空だった。
彼にそれを告げると、彼も――そうだね、きれいな青空だ――っていってくれた。
私はそんな美しい青空を見上げながら目を閉じた。
幸せだった。
大好きな人に抱き上げられて、大好きな青空を見れているんだもの。
私の目から涙が零れ落ちる。
しばらくしたら私の体がとても軽くなった。
驚いた。
自由に飛び回れるの。
ねぇみて?
私は今空にいるの。
ずっと行きたかった空。
青くて雲一つない空。
――ありがとう――
世界に色がついて、私の心は解き放たれた。
ねぇみて?
私は今空にいるの。
ずっと行きたかった空。
青くて雲一つない空。
私が生まれたのはごく普通の家庭だったと思う。
多分きっとそうだった。
だけど、私が生まれてしばらくして、母は心を壊したらしい。
どうしてかは知らない。
母に聞いても返ってくるのはヒステリックな叫びだけ。
父に聞いても何も教えてくれない。
私が物心つくころには、もう母は普通じゃなかった。
だけど、私はそれが普通だから、それを普通じゃないとは知らなかった。
父はたまに家に帰ってきてた。
私が父を初めて見たのは、五歳のとき。
突然知らない人が家に入ってきてびっくりした。
その人は私をみて、嫌な顔をして、母に何かを言っていた。
母はとっても怯えてた。怯えてたんだとおもう。
怯えてたのに、縋ってた。
母は父に連れられて、別の部屋へいった。
私もついていこうとしたけど、来るなって怒鳴られた。
母と父が部屋にはいってから、母の叫び声が聞こえたの。
怖かった。
どのくらいか分からない。
でも、叫び声がおさまったころ、父が部屋からでてきた。
私をジロリと睨んで家をでていった。
私は慌てて母のいる部屋へ向かったの。
確かに私はそこで母を見たはずなんだけど、何も思い出せない。
ただ、そう。
なんだかとても嫌だった、そんな気持ちだけが残ってる。
父を父だと認識したのは、私が十歳のとき。
父はこれまでも時折帰ってきていたけど、それまでは時々くる男の人っていう認識だった。
だから私は母に聞いたの。
あの人は誰? って。
母は私の言葉を聞いて、鬼のような形相で私を叩いた。
その時に初めて、あの男の人が父なんだと知った。
結局私が父を父だと呼ぶことはなかったけど。
私が十二歳になった日、家に帰ると母が泣いていた。
慌ててかけよってどうしたのかと聞くと、父が帰ってこないと泣く。
そういえば私が十歳を過ぎたころから父は家に来なくなっていた。
しばらく泣いていた母だったが、その涙は怒りに変わり、私のせいだと、私を叩いた。
学校から帰ると、母はいつも泣いていた。
だからいつも私は母に叩かれた。
それが私にとっての普通だったから。
時々、知らないおじさんやおばさんがきて、母に何かを言っていた。
母はすごく怒ってた。
おじさんたちが帰ると、私が叩かれるので、できれば来てほしくなかった。
ある日、家に帰る途中で、おじさんやおばさんに囲まれた。
すごく怖かった。
おじさんたちは私に、何か色々聞いてきた。
母を悪く言ってばかりで嫌だった。
だから、私は母は悪くないと言って逃げたの。
家に帰ってそのことを母に話したら、叩かれた。
あのおじさんとおばさんがくると、私が叩かれる。
私の中で、おじさんとおばさんは悪になった。
その日から私はおじさんとおばさんを見かけたら全力で走って逃げた。
だって、悪い人たちだから。
小学校を卒業してから、私はずっと家にいるようになった。
母が外に行くなって言ったから。
十三歳になったある日、知らない男の人を連れて母が帰ってきた。
母に言われて、私はその男の人と別の部屋へ行った。
何かがあった気はするけど、よく覚えていない。
でも、その日から母が私を叩かなくなった。
お風呂も毎日いれてくれて、ご飯も食べさせてくれるようになったの。
嬉しかった。
私の髪も母が綺麗に切って整えてくれたの。
その代わり私は毎日複数の知らない男の人とあの部屋へ行かないといけなくなった。
母が父に何かをされていた部屋。
何をされているのかは分からないけど、すごく嫌だった。
一度だけそれを母に言ったらとっても怒られた。
だから二度と言わなかった。
だって、私が男の人とあの部屋へ行けば、母は私に優しくしてくれたんだもの。
私が十五歳になったある日、家に知らない人がたくさんきた。
私はちょうど男の人と部屋にいたから、知らない人がたくさんきてすごくびっくりしたの。
私は知らない女の人に毛布を着せられた。
そうしたら、母の悲鳴が聞こえたの。
だから慌ててそちらへ向かった。
母は複数の男の人に押さえ込まれて、手に銀色の輪っかをつけられていた。
私はすごくびっくりして、なにするの! って叫んだ。
お母さんを離して! って。
みんなびっくりした顔で私をみてた。
後ろから慌てたようにやってきた女の人にまた毛布を着せられた。
そこから先はよく覚えてない。
母がどうなったのかも、よくわからない。
気付けば私は病院ってところにいた。
なんだかよくわからないまま、入院だって言われた。
体調はどうだって言われたけど、よくわからない。
でも、そういえば最近少し体調が悪かった。
何かの病気だと言われて、お薬をいっぱい飲まされた。
点滴っていうのもつけられた。
進行がはやいってなんだろう?
病院というところに住み始めてから、私の体はどんどん弱くなっていった。
髪の毛が抜けて、いつも吐いてた。
苦しいから点滴をしないでと言っても、だめだって言われて、辛かった。
毎日お母さん助けてって泣いた。
だって、お母さんは優しかったから。
そうして毎日苦しくて泣いていたら、お母さんが男の人に連れられてきてくれたの!
すごく嬉しくて、お母さんって言ったら、お母さんすごく嫌な顔した。
あれは、父と同じ顔だった。
汚い物を見る目。
私ね、その時はじめて、ああ、私捨てられたって、そう気づいたの。
その日から私、すべてがどうでもよくなった。
痛みも苦しみも、何もかもどうでもよかった。
私が何も食べようとしないから、無理やり喉に流し込まれた。
ほっといてほしかった。
私に触れないでほしかった。
そんなある日、彼に出会ったの。
最初は私の隣に座って、私に何かをずっと話しかけてきた。
どうでもよかったから私は何も聞いていなかった。
そんなことがどのくらいかわからないけどずっと続いたの。
彼が私に話しかけるようになってしばらくしたら、私を苦しめていた点滴がはずされたの。
やっと苦しみから解放されたと思った。
体中痛かったけど、吐き気と苦しみからは解放された。
何も食べないせいで私の体はガリガリになっていたけど。
そんなことはどうでもよかったもの。
そうしてベッドでずっと過ごしていたある日、窓から見える一面の青空をみた私は――綺麗な青空、もっとよく見たい――そうつぶやいた。
そうしたら、ふわりと体が浮き上がったの。
びっくりしてみると、いつも私に話しかけていた彼が笑みを浮かべて言ったの。
――屋上へいってみよう――
車椅子っていうものに乗せられて、私は病院の屋上へと連れ出された。
びっくりした。
私の目の前には真っ青な空がどこまでも続いていたの。
最後に青空をみたのなんていつだろう。
とっても綺麗だった。
――鳥だ、いいな。私も鳥になりたい――
目の前の青空を一羽の小鳥が飛んでいた。
私にも翼があれば、自由に飛べるのに。
――君はもう自由だよ、どこまでも飛んでいける。もう自由なんだ――
彼の言葉に私はなぜだか物凄い衝撃を受けた。
私は自由なんだって、もう苦しまなくていいんだって。
涙が出た。止まらなかった。
大きな声をあげて泣いた。はじめてかもしれない。
彼は私を優しく抱きしめてくれた。
嬉しかった、暖かかった。
その日から全てが新鮮で、美しかった。
ご飯もおいしいし、お花は綺麗。
緑色の葉っぱも芝生も、何もかもが色づいて見えた。
彼が優しく微笑むその顔が、私はとても好きだった。
彼に好きだと告げたら、おでこにキスをしてくれた。
嬉しかった。
もうあまりよく動かない枯れ木のような私の手をとって、楽しもうねって言ってくれた。
行きたいところはたくさんあった。
でも体力がなくてあまり遠くにいけないのが残念。
それでも、近所の公園に連れていってくれたり、神社につれていってくれたりした。
楽しかった。
彼がいてくれるだけで笑顔になれた。
毎日が楽しかった。
でも段々と私の体は動かなくなった。
もうあちこち出かける体力もなかった。
それでも彼は毎日私を屋上に連れていってくれた。
雨の日は無理だったけど。
ある日体がまったく動かなくなった。
呼吸は浅くなって、苦しかった。
そんな日が少しだけ続いた。
青空が見たかった。
彼にお願いをしてみた。
――空が、見たい――
私の言葉を聞いた彼は、頷くとどこかへ行った。
しばらくしてお医者さんと看護師さんを連れて彼がやってきた。
色々と私に何かをしたあと、彼は車椅子に私を乗せてくれた。
お医者さんと看護師さんと一緒に、私と彼は屋上へ向かった。
屋上に出ると冷たい風が吹き抜けた。
いつのまにか冬が訪れていたみたいだ。
私は白い息を吐きながら空を見上げた。
本当は目もよく見えなかった。
でも、私の目にはあの日あの時みた、綺麗な青空がうつっていた。
――綺麗な、青空――
でも、首をあげているのもしんどかった。
そうしたら、彼が私を抱き上げてくれた。
楽に空が見れた。
――ありが、と――
本当にきれいな青空だった。
彼にそれを告げると、彼も――そうだね、きれいな青空だ――っていってくれた。
私はそんな美しい青空を見上げながら目を閉じた。
幸せだった。
大好きな人に抱き上げられて、大好きな青空を見れているんだもの。
私の目から涙が零れ落ちる。
しばらくしたら私の体がとても軽くなった。
驚いた。
自由に飛び回れるの。
ねぇみて?
私は今空にいるの。
ずっと行きたかった空。
青くて雲一つない空。
――ありがとう――
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