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第七章 ダンジョン
147 コンロ
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翌朝、早めに朝食をとって宿をでた。
七時にはトリスタンさんの家にいかないといけない。
道を歩きつつトリスタンさんの家へと急ぐ。
気が逸ってしまい歩く速度があがる。
コンロも楽しみだが、何よりも爆散する子供を助けられるかもしれない。
俺は死にたくなくて必死だったが、助かったのは特殊だったからだ。
普通の子たちは何をどう頑張っても生き延びるすべがない。
そんなことを考えつつ歩いているとトリスタンさんの家へとたどりついた。
ドアをノックするが返事がない。
五分ほどしてからドアを再度ノックするがやはり返事がない。
少し迷ったが、トリスタンさんに渡された鍵で玄関を開け中へと入る。
中へ入り、玄関の鍵を施錠してから中をみると、机の上でつっぷして寝ているトリスタンさんがいた。
机の上には箱の中に綺麗に収められた小さな魔石があった。
どうやら昨日のうちに仕事を終わらせたらしい。
とりあえず紅茶を淹れてトリスタンさんを起こすとしよう。
俺自身にはコーヒーにして、トリスタンさん用に少し味の濃い紅茶を淹れる。
砂糖の量は分からないので、角砂糖ポットを出しておく。
「トリスタンさん、おはようございます」
そう声をかけながら彼を揺する。
少しして、トリスタンさんが目覚めた。
「む……、朝か……。ああ、君か、おはよう」
「おはようございます。紅茶ですが、どうぞ」
「む、すまんな。ありがとう」
そう言ってトリスタンさんは角砂糖を五個も放り込んだ。
かなりの甘党なのか、朝は甘い物がいいのか……。
「ふぅ、うまい」
俺が飲んでいるコーヒーにも興味を持ち一口飲んでいたが、どうやらトリスタンさんには合わない味だったようだ。
「実に苦い。俺はそこまで苦い飲み物は無理だな」
甘党のようだ。
「さて、それはさておき、今日はじっくり話し合いができるぞ。昨日のうちに仕事は終わらせたからな」
「お疲れ様です。では早速」
そう言って俺はトリスタンさんに腕輪を渡した。
「これは?」
「昨日言っていたアイテムボックスです。使い方ですが――」
トリスタンさんには指輪型ではなく腕輪型にした。
彼は指先を使う仕事なので、指輪だと微妙に邪魔になると思ったからだ。
「なるほど。おお、すごい。これはいい物だな! 君の期待には必ず応えよう」
「ありがとうございます。とりあえずまずはコンロ、からですね」
「ああ」
俺は自分の作った物、構想を説明しはじめた。
「なるほど、ミスリルを通すと無害な魔力に変わるのか。興味深いな」
「はい、それでその魔力を利用して、トリスタンさんが作る火の魔石に魔力を与えることで強くしたり弱くしたりができます」
「ふむふむ。となると、ここの構造については――」
「ああ、なるほど、となると――」
そうして俺とトリスタンさんはああだこうだと話し合い、三時間が経った。
「うむ、こんなところか?」
「そうですね」
「しかしルカ君、問題はこの缶ではないか?」
「あー」
「これは君以外には作れないだろう?」
「です、よねぇ」
「うーむ」
腕を組みトリスタンさんは考える。
俺としてはこれ以外の発想ができない。
「確か、気嚢モンスターがいた気がするんだがな」
「気嚢モンスターですか?」
「そうだ。強いモンスターではないのだが、体に気嚢があってな、素材としてとれるのだが、その気嚢が内部に魔力ガスのようなものを蓄えているのだ。それを君が作った缶の代用にできないだろうかな」
「なるほど、それはいいですね」
「しかし俺はモンスターに詳しいわけじゃないから、君がそのモンスターについて調べてくれないか?」
「わかりました」
「では、缶の代用はとりあえずそれとしてだ、構造は先ほど話した感じでいいだろう。気嚢を手に入れることができれば実験も可能になるな」
「そうですね」
「ただとりあえず、まずは君の分を作ってしまおうか。君のはそのミスリルの缶でよかろう」
「はい、お願いします」
こうしてトリスタンさんは俺の分のコンロをささっと作ってしまった。
「あとはここに魔石をセットすればいいだけだが、確か俺の作った小さい魔石ではだめだったんだったな?」
「ええ、魔力を多く流したら壊れてしまいました。なので、この魔石でお願いできますか?」
「ふむ、ちょっと回路をいれてみようか」
俺が取り出した魔石を受け取り、トリスタンさんはアイテムボックスから道具を取り出した。
違和感なくさらっと出しているが、さっき渡したばかりなのに、すごいなと思う。
魔石に先端が針のような道具で何かを書き込んでいる。
「よし、とりあえず三つでやってみるとするか」
「はい」
そういうとトリスタンさんはコンロの口にある三つの穴に魔石をとりつけた。
「さて、これで触れてなくても発動するかどうかだな。一応ミスリルの粉を塗布した線とこのスイッチ部を繋いではいるが」
ドキドキしつつコンロのスイッチを捻ってみる。
カチッと音がして小さな火がでた。
「ここまでは成功だな。さらに威力をあげてみてくれ」
俺はさらにスイッチを三段階捻る。
カチ、カチ、カチという音がするたび、魔石から出る炎が強くなった。
「おお、素晴らしい。とりあえずは成功か?」
「そうですね。少しお湯を沸かしてみても?」
「うむ、いいだろう」
俺は鍋に水を入れてコンロの上に置いてみた。
現代のコンロほどの強さはないが、少し待てばぷつぷつと気泡ができ、しばらくして沸騰した。
焚火よりは明らかに速いし、火を弱めることもできる。
「いいですね、俺のコンロはこれで完成です」
「そうだな。君のは完成だ。製品にするとなると気嚢モンスターだな」
「そうですね、そちらは俺が調べておきます」
「ああ、頼む。で、だ。次に移ろう」
「はい」
「アイテムボックスや昨日かけてもらった魔法の対価である君の構想を聞きたい」
トリスタンさんの言葉に俺は頷き、話し始める。
爆散してしまう子を救いたいこと、俺がかつて爆散しかけたこと、ミスリルの性能について。
「ふむ。なるほど、君は俺に五代前の爺さんを追い越せというわけだな?」
「いえ、追い越すというよりは新しく挑戦して欲しいというところです」
「ほう、なるほどな。いいな。気に入った。爺さんは魔力を抑え込むことで助けようとした。俺は解放することで救うとしよう」
「はい、お願いします」
「うむ、楽しいな。が、すぐに完成させるのは難しい。研究する時間をくれ」
「はい、必要な物があれば言ってください。月に一度はこちらに伺いますから」
「ああ、すでにヒントは多くある。ミスリルの塊はありがたく研究で使わさせてもらおう」
「はい、加工したい形があれば父の工房へ行って頂ければ。父には話しておきますので」
「うむ」
そうして出来上がったコンロをアイテムボックスにしまい、まずはギルドマスターの元へ向かうことにした。
いなければヒルデさんに相談しよう。
ギルドにつき、受付嬢さんに声をかける。
「こんにちは、ギルドマスターか、ヒルデさんはいらっしゃいますか?」
「ギルドマスターは仕事でおられませんが、副ギルドマスターはいらっしゃいます」
「少し話したいことがありまして」
「承知しました。少しお待ちください」
受付嬢さんが奥の部屋へいき暫く、戻ってきた。
「ご案内しますのでこちらへ」
小会議室へと通され少し待っているとヒルデさんがやってきた。
前回と同じく無表情だ。
「お待たせしました。私に御用ということでしたが?」
「はい、お時間とらせてすみません、聞きたいことがありまして――」
俺は気嚢モンスターについて尋ねた。
「なるほど、確かにおりますよ。サックサラマンダーと言いまして、ダンジョンには生息しているのは聞いたことはありませんが、これまで特に利用価値はないとされている部位ですね。ですが、一応買取もされている部位です。価格は一つあたり銅貨五枚です。そこまで強いとされているモンスターではありませんが、生息地は池や沼ですので、あまり討伐数は多くありませんね」
「なるほど、それでも討伐があるということはなんらかの依頼があるということですか?」
「はい。定期的に討伐依頼はされます。あまり害のないモンスターではありますが、増えすぎますと生態系に影響がでますので」
「そうですか」
「気嚢が必要ですか?」
「はい、現在錬金術師さんとある物を作っていまして、それの部品として気嚢が必要なんです」
「なるほど。シュルプには在庫はありませんが、他のギルドに連絡して在庫を譲って頂きましょう」
「お願いしても?」
「はい、構いませんよ。ですが、輸送費がありますので一つあたり銅貨六枚になりますよ」
「構いません。うまくいけば、仕入れて頂いた分全て購入させてもらいます」
「そうですか。当ギルドは、イストワールの皆さまのおかげで繁盛しておりますので、このくらいはさせて頂きます」
そうして俺はギルドをあとにした。
ヒルデさんに全て任せ、仕入れが完了したら伝えてくれるそうだ。
その足で俺はウードのいる鍛冶場へと向かう。
鍛冶場につき、中へ入る。
カウンターにいたエルマーさんに声をかけた。
「こんにちは」
「ああ、坊ちゃん。どうぞ入って」
ペコリと頭を下げ中へ入り、ウードの仕事場へ向かう。
「父さん、お疲れ様」
「ああ、ルカか。どうした?」
「うん、あのね――」
俺は錬金術師さんについて話した。
名前は一応偽名ではあるがヨーゼフさんだと伝えておく。
彼が依頼にくるかもしれないという話と、彼の依頼費用は俺が負担するという話をしておく。
「そうか、わかった」
「ありがとう、父さん」
「パパは息子に頼られて嬉しいから気にしないでいいぞ」
ニコニコと凶悪な笑顔を見せるウードに俺も笑いながら、鍛冶場をあとにした。
あとは彼に報告するだけだ。
鍛冶場をでてトリスタンさんの家へと向かう。
ドアをノックし中へと入る。
「戻りました」
「ああ、ルカ君か。すまないね、ちらかっているが」
この短時間で何があったのか、色々な器具があちこちに置いてある。
「どうしたんです、これ」
「うむ、個人的に研究をはじめていたのだ。回路を組むならどういうものがいいかとね」
「そうでしたか」
「それで、気嚢のあるモンスターは分かったかね」
「はい、サックサラマンダーという池や沼に棲むモンスターでした。気嚢の在庫はシュルプにはないので、他のギルドから輸送してもらう手筈です。あと、父に話したので、ミスリルの加工などはお伝えした鍛冶場を利用してください」
「うむ、わかった。しかし本当に加工費は君持ちでいいのか?」
「はい、俺はお金は困っていませんし、何よりもあなたが俺の考える物を作ってくれる方が嬉しいですから。その為の支援なら惜しみません」
「そうか。ならば君の信頼に応えれるように俺は頑張るとしよう。君も何か思いついたら話に来てくれ」
「はい、お願いします」
トリスタンさんに報告を終え、俺は宿屋へと戻った。
明日はダンジョンに潜って少し訓練をしよう。
七時にはトリスタンさんの家にいかないといけない。
道を歩きつつトリスタンさんの家へと急ぐ。
気が逸ってしまい歩く速度があがる。
コンロも楽しみだが、何よりも爆散する子供を助けられるかもしれない。
俺は死にたくなくて必死だったが、助かったのは特殊だったからだ。
普通の子たちは何をどう頑張っても生き延びるすべがない。
そんなことを考えつつ歩いているとトリスタンさんの家へとたどりついた。
ドアをノックするが返事がない。
五分ほどしてからドアを再度ノックするがやはり返事がない。
少し迷ったが、トリスタンさんに渡された鍵で玄関を開け中へと入る。
中へ入り、玄関の鍵を施錠してから中をみると、机の上でつっぷして寝ているトリスタンさんがいた。
机の上には箱の中に綺麗に収められた小さな魔石があった。
どうやら昨日のうちに仕事を終わらせたらしい。
とりあえず紅茶を淹れてトリスタンさんを起こすとしよう。
俺自身にはコーヒーにして、トリスタンさん用に少し味の濃い紅茶を淹れる。
砂糖の量は分からないので、角砂糖ポットを出しておく。
「トリスタンさん、おはようございます」
そう声をかけながら彼を揺する。
少しして、トリスタンさんが目覚めた。
「む……、朝か……。ああ、君か、おはよう」
「おはようございます。紅茶ですが、どうぞ」
「む、すまんな。ありがとう」
そう言ってトリスタンさんは角砂糖を五個も放り込んだ。
かなりの甘党なのか、朝は甘い物がいいのか……。
「ふぅ、うまい」
俺が飲んでいるコーヒーにも興味を持ち一口飲んでいたが、どうやらトリスタンさんには合わない味だったようだ。
「実に苦い。俺はそこまで苦い飲み物は無理だな」
甘党のようだ。
「さて、それはさておき、今日はじっくり話し合いができるぞ。昨日のうちに仕事は終わらせたからな」
「お疲れ様です。では早速」
そう言って俺はトリスタンさんに腕輪を渡した。
「これは?」
「昨日言っていたアイテムボックスです。使い方ですが――」
トリスタンさんには指輪型ではなく腕輪型にした。
彼は指先を使う仕事なので、指輪だと微妙に邪魔になると思ったからだ。
「なるほど。おお、すごい。これはいい物だな! 君の期待には必ず応えよう」
「ありがとうございます。とりあえずまずはコンロ、からですね」
「ああ」
俺は自分の作った物、構想を説明しはじめた。
「なるほど、ミスリルを通すと無害な魔力に変わるのか。興味深いな」
「はい、それでその魔力を利用して、トリスタンさんが作る火の魔石に魔力を与えることで強くしたり弱くしたりができます」
「ふむふむ。となると、ここの構造については――」
「ああ、なるほど、となると――」
そうして俺とトリスタンさんはああだこうだと話し合い、三時間が経った。
「うむ、こんなところか?」
「そうですね」
「しかしルカ君、問題はこの缶ではないか?」
「あー」
「これは君以外には作れないだろう?」
「です、よねぇ」
「うーむ」
腕を組みトリスタンさんは考える。
俺としてはこれ以外の発想ができない。
「確か、気嚢モンスターがいた気がするんだがな」
「気嚢モンスターですか?」
「そうだ。強いモンスターではないのだが、体に気嚢があってな、素材としてとれるのだが、その気嚢が内部に魔力ガスのようなものを蓄えているのだ。それを君が作った缶の代用にできないだろうかな」
「なるほど、それはいいですね」
「しかし俺はモンスターに詳しいわけじゃないから、君がそのモンスターについて調べてくれないか?」
「わかりました」
「では、缶の代用はとりあえずそれとしてだ、構造は先ほど話した感じでいいだろう。気嚢を手に入れることができれば実験も可能になるな」
「そうですね」
「ただとりあえず、まずは君の分を作ってしまおうか。君のはそのミスリルの缶でよかろう」
「はい、お願いします」
こうしてトリスタンさんは俺の分のコンロをささっと作ってしまった。
「あとはここに魔石をセットすればいいだけだが、確か俺の作った小さい魔石ではだめだったんだったな?」
「ええ、魔力を多く流したら壊れてしまいました。なので、この魔石でお願いできますか?」
「ふむ、ちょっと回路をいれてみようか」
俺が取り出した魔石を受け取り、トリスタンさんはアイテムボックスから道具を取り出した。
違和感なくさらっと出しているが、さっき渡したばかりなのに、すごいなと思う。
魔石に先端が針のような道具で何かを書き込んでいる。
「よし、とりあえず三つでやってみるとするか」
「はい」
そういうとトリスタンさんはコンロの口にある三つの穴に魔石をとりつけた。
「さて、これで触れてなくても発動するかどうかだな。一応ミスリルの粉を塗布した線とこのスイッチ部を繋いではいるが」
ドキドキしつつコンロのスイッチを捻ってみる。
カチッと音がして小さな火がでた。
「ここまでは成功だな。さらに威力をあげてみてくれ」
俺はさらにスイッチを三段階捻る。
カチ、カチ、カチという音がするたび、魔石から出る炎が強くなった。
「おお、素晴らしい。とりあえずは成功か?」
「そうですね。少しお湯を沸かしてみても?」
「うむ、いいだろう」
俺は鍋に水を入れてコンロの上に置いてみた。
現代のコンロほどの強さはないが、少し待てばぷつぷつと気泡ができ、しばらくして沸騰した。
焚火よりは明らかに速いし、火を弱めることもできる。
「いいですね、俺のコンロはこれで完成です」
「そうだな。君のは完成だ。製品にするとなると気嚢モンスターだな」
「そうですね、そちらは俺が調べておきます」
「ああ、頼む。で、だ。次に移ろう」
「はい」
「アイテムボックスや昨日かけてもらった魔法の対価である君の構想を聞きたい」
トリスタンさんの言葉に俺は頷き、話し始める。
爆散してしまう子を救いたいこと、俺がかつて爆散しかけたこと、ミスリルの性能について。
「ふむ。なるほど、君は俺に五代前の爺さんを追い越せというわけだな?」
「いえ、追い越すというよりは新しく挑戦して欲しいというところです」
「ほう、なるほどな。いいな。気に入った。爺さんは魔力を抑え込むことで助けようとした。俺は解放することで救うとしよう」
「はい、お願いします」
「うむ、楽しいな。が、すぐに完成させるのは難しい。研究する時間をくれ」
「はい、必要な物があれば言ってください。月に一度はこちらに伺いますから」
「ああ、すでにヒントは多くある。ミスリルの塊はありがたく研究で使わさせてもらおう」
「はい、加工したい形があれば父の工房へ行って頂ければ。父には話しておきますので」
「うむ」
そうして出来上がったコンロをアイテムボックスにしまい、まずはギルドマスターの元へ向かうことにした。
いなければヒルデさんに相談しよう。
ギルドにつき、受付嬢さんに声をかける。
「こんにちは、ギルドマスターか、ヒルデさんはいらっしゃいますか?」
「ギルドマスターは仕事でおられませんが、副ギルドマスターはいらっしゃいます」
「少し話したいことがありまして」
「承知しました。少しお待ちください」
受付嬢さんが奥の部屋へいき暫く、戻ってきた。
「ご案内しますのでこちらへ」
小会議室へと通され少し待っているとヒルデさんがやってきた。
前回と同じく無表情だ。
「お待たせしました。私に御用ということでしたが?」
「はい、お時間とらせてすみません、聞きたいことがありまして――」
俺は気嚢モンスターについて尋ねた。
「なるほど、確かにおりますよ。サックサラマンダーと言いまして、ダンジョンには生息しているのは聞いたことはありませんが、これまで特に利用価値はないとされている部位ですね。ですが、一応買取もされている部位です。価格は一つあたり銅貨五枚です。そこまで強いとされているモンスターではありませんが、生息地は池や沼ですので、あまり討伐数は多くありませんね」
「なるほど、それでも討伐があるということはなんらかの依頼があるということですか?」
「はい。定期的に討伐依頼はされます。あまり害のないモンスターではありますが、増えすぎますと生態系に影響がでますので」
「そうですか」
「気嚢が必要ですか?」
「はい、現在錬金術師さんとある物を作っていまして、それの部品として気嚢が必要なんです」
「なるほど。シュルプには在庫はありませんが、他のギルドに連絡して在庫を譲って頂きましょう」
「お願いしても?」
「はい、構いませんよ。ですが、輸送費がありますので一つあたり銅貨六枚になりますよ」
「構いません。うまくいけば、仕入れて頂いた分全て購入させてもらいます」
「そうですか。当ギルドは、イストワールの皆さまのおかげで繁盛しておりますので、このくらいはさせて頂きます」
そうして俺はギルドをあとにした。
ヒルデさんに全て任せ、仕入れが完了したら伝えてくれるそうだ。
その足で俺はウードのいる鍛冶場へと向かう。
鍛冶場につき、中へ入る。
カウンターにいたエルマーさんに声をかけた。
「こんにちは」
「ああ、坊ちゃん。どうぞ入って」
ペコリと頭を下げ中へ入り、ウードの仕事場へ向かう。
「父さん、お疲れ様」
「ああ、ルカか。どうした?」
「うん、あのね――」
俺は錬金術師さんについて話した。
名前は一応偽名ではあるがヨーゼフさんだと伝えておく。
彼が依頼にくるかもしれないという話と、彼の依頼費用は俺が負担するという話をしておく。
「そうか、わかった」
「ありがとう、父さん」
「パパは息子に頼られて嬉しいから気にしないでいいぞ」
ニコニコと凶悪な笑顔を見せるウードに俺も笑いながら、鍛冶場をあとにした。
あとは彼に報告するだけだ。
鍛冶場をでてトリスタンさんの家へと向かう。
ドアをノックし中へと入る。
「戻りました」
「ああ、ルカ君か。すまないね、ちらかっているが」
この短時間で何があったのか、色々な器具があちこちに置いてある。
「どうしたんです、これ」
「うむ、個人的に研究をはじめていたのだ。回路を組むならどういうものがいいかとね」
「そうでしたか」
「それで、気嚢のあるモンスターは分かったかね」
「はい、サックサラマンダーという池や沼に棲むモンスターでした。気嚢の在庫はシュルプにはないので、他のギルドから輸送してもらう手筈です。あと、父に話したので、ミスリルの加工などはお伝えした鍛冶場を利用してください」
「うむ、わかった。しかし本当に加工費は君持ちでいいのか?」
「はい、俺はお金は困っていませんし、何よりもあなたが俺の考える物を作ってくれる方が嬉しいですから。その為の支援なら惜しみません」
「そうか。ならば君の信頼に応えれるように俺は頑張るとしよう。君も何か思いついたら話に来てくれ」
「はい、お願いします」
トリスタンさんに報告を終え、俺は宿屋へと戻った。
明日はダンジョンに潜って少し訓練をしよう。
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