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第四章 仲間

61 新しい仲間

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 翌日、俺とミハエルは朝食をとったあとフィーネの家に向かっていた。
 昨日別れる前に今日も行くことを伝えてあったので、きっといるだろう。

 大通りからそれて奥へと向かう。
 この辺は治安も良くないので、出来れば二人には住む場所を変えてほしいところではあるが……。

 彼女たちの住む家についた俺は扉をノックして声をかけた。
 すぐに中から返事がきて扉が開いた。
 中から顔を覗かせたのはエルナだった。

「こんにちは。ルカさん、えっと……」
「俺はミハエルだ、よろしくな」

 ミハエルはニコリと笑った。
 おう、何その眩しい笑顔。
 ミハエルは本当にここ最近男らしいイケメンになってるからこの笑顔は危険だ。
 カールとはタイプの違う天然イケメンになってる気がする……。

「は、はい! ミハエルさん、よろしくおねがいします!」

 エルナは若干頬を染めて返事をした。
 おう……。

 エルナは少し慌てて俺たちを中へと案内した。

「ルカ、いらっしゃい。ミハエル、久しぶりね」
「ああ、フィーネ、久しぶりだな」
「ええ。さぁ、座ってちょうだい」

 フィーネに促され俺たちは席についた。
 フィーネは座った俺たちに紅茶を出すと自身とエルナの分も淹れてから席についた。

「それで、エルナへの教授は可能、かしら?」
「ああ、ミハエルも許可してくれたから、教えることは可能だよ。ただ、それとは別で、俺たちから提案があるんだ」

 フィーネは首を傾げた。

「何かしら? できることならするわよ?」
「俺たちと正式にパーティを組まないか?」
「え?」
「まぁ、急な誘いだから驚くのは無理はないんだけど、どうしてこの考えに至ったかを説明するよ――」

 そうして俺はCランク試験の最中にあった出来事について説明をした。

「俺たちはまだまだ強くなるつもりだ。だけど、二人ではいつか限界がくる。だから仲間がほしいんだ」
「……でも、私あなたみたいな特殊な力はないわよ……? あなたたちの足をきっといつか引っ張ってしまうわ」
「フィーネ、それはないよ」

 俺の言葉にフィーネは訝しむ。

「なぜ?」
「昨日も話したけど、俺は魔法を創造できる。その力で鑑定っていう魔法を作ってあるんだけど――」

 俺はフィーネに鑑定魔法の能力を説明し、そしてフィーネやエルナを鑑定したことを謝罪しつつ、パッシブ魔法について説明をした。
 パッシブ魔法というのが、本当はとても珍しい物で、こうして姉妹で持っていること自体がとても珍しく、そのうえで、とても優秀なスキルがついていること。
 ミハエルにも同じくパッシブ魔法があること。
 それらを説明したうえで、俺は再度二人を誘った。

「だから、フィーネはもちろん、エルナも俺たちとパーティを組まないか?」

 フィーネは少し動揺したように目を泳がせている。

「でも、私なんて……」

 そんなフィーネに俺は声をかけた。

「フィーネ、私なんてって言わないでくれ。俺は君の弓の腕を知っている。そのうえで君を求めてるんだ」
「ルカ……」

 フィーネは少し頬を赤くして俯くと、コクリと頷いた。

「ありがとう、ルカ。ありがたくお受けするわ」

 そう言ってからフィーネはエルナを見た。

「エルナはどうする?無理はしなくていいわ。冒険者は危険な仕事だもの」

 エルナはフィーネを見て微笑んだ。

「いいえ、私、姉さんに恩を返したいの。ずっと私を支えてくれてとても感謝してるの。だけど、それだけじゃない。ルカさんのおかげで私やっと自由になれた。私も姉さんと一緒に冒険がしてみたい!」
「エルナ……。そう、そうね。一緒に世界を冒険しましょう」

 フィーネはエルナに優しく微笑んだ。
 そして、俺たちをしっかりと見て言った。

「ルカ、ミハエル。私たちをパーティに加えて頂戴。あななたちの役に立ってみせるわ。これでも弓使いとしては引く手あまただったんだから」

 そう言っていたずらっぽく笑った。
 俺はそんなフィーネの笑みに少しドキリとしつつも、笑みを浮かべて言った。

「ああ、よろしく頼む」

 そこからはフィーネはまだしも、まずはエルナの冒険者登録、そしてランク上げについての話をすることになった。
 そのついでに、飛行魔法や、探索魔法、その他にもパーティを組むうえで必要なことを説明した。
 どのみち、エルナの魔法訓練をまずしなければならないのと、人型を自分の手で殺すことができるかも試さないといけないので、とりあえずは冒険者登録をして、その後四人で飛行魔法を使ってゴブリン探しをすることに決めた。

「それじゃあ、今から登録に行こうか」
「そうね。あとは、パーティ登録はエルナがFランクになったらにしましょう」
「そうだな。じゃあ行こうか」
「ええ」

 そうして俺たちは冒険者ギルドへ向けて移動を開始した。
 冒険者ギルドについたところで、俺とミハエルは外で待ち、フィーネとエルナは中へ入った。
 外で待ってる間、暇なのでミハエルと話していたところで、ミハエルがとんでもないことを言いだした。

「そういやよ、ルカはたらしだなー」
「は? なんでだよ」
「さっきのあれ、君を求めているんだってやつ。あれどう聞いても口説き文句だったぞ?」
「えっいや、そんなつもりは、ええ……」
「フィーネ、顔赤くしてたからなぁ。ありゃ惚れたかもな?」
「ぐぬぬ。ミハエルだって、天然イケメンしてたじゃないか」
「なんだよ、天然イケメンって」
「最初にエルナに自己紹介した時のあの笑顔。女の子はみんな惚れるぞ? エルナだって顔赤くしてたし」
「まさか。んなわけねーだろ」

 俺とミハエルは口を閉じ、暫くしてお互いにこう言った。

「やめよう、この話。なんか深みにはまりそうだ」
「そーだな。すまん。なかったことにしてくれ」

 そう言ってお互い目を合わせると苦笑してしまった。
 前世では出来なかったこういう話しを出来るのはなんだか少し楽しい。

「お待たせ。エルナの登録ができたわ」
「お待たせです。冒険者になれました!」

 エルナは嬉しそうに鈍色のタグを見せてくれた。

「よかったな。それじゃあ、とりあえず行こうか。ギルド訓練所でやってもいいが、あまり見られたくないから、いいか?」
「ええ、行きましょう」
「はい!」

 そうして俺たちは普通に南門から街を出て人気がなくなるところまで暫く歩いた。

「そろそろいいかな?周りに人もいないし、少し森に入ろう」

 俺の言葉にそれぞれ頷き、街道をそれて森に入る。
 森に入って数分ほどしたところで、俺は立ち止まり、飛行魔法と光学迷彩魔法について説明をした。
 ミハエルのあの事件もあったので、俺は最初にじっくりとしっかりと説明をした。
 ――ちなみに消音魔法は周囲に人もいないのとまだ改良していなくて声が消えるから今回はなしにした。

 そうして説明をしっかりした結果、初めての飛行はお姫様抱っこをしていくことになった。
 なんでこうなった?
 おのれ、天然イケメンのミハエルめ。

 いやまぁ、ミハエルのせいでもないんだけどさ……。
 実際に飛行魔法かけて俺たちと一緒に少し飛んでみたら二人ともびっくりして首を絞める勢いで抱きついてきたもんだから、絞められた首をさすりながら、ミハエルが抱き上げていくほうがいいかもしれんと、そう言って抱っこしていくことになったんだけども……。

 二人共思い切り抱き着いてしまって、今は頬を赤くしてしまっている。

「ご、ごめんなさい。空なんて飛んだことなかったから、びっくりしちゃって……」
「いや、俺こそごめん。もっとゆっくりならせばよかったな」
「ううん、でも、その、最初だけ、慣れるまで抱きあげてもらってもいいかしら……」

 そうして頬を赤くして上目遣いに俺を見上げてくるフィーネに俺は動揺してしまう。

「あ、ああ。えっと、エ、エルナはミハエルにそのまま任せてもいいか?」

 ミハエルにそう言うと、天然イケメンは動揺することなく、サラリと頷いた。

「おう。エルナ、いいか?」
「あ! は、はい! よっよろしくおねがいします!」

 そうしてミハエルはスッとエルナを抱き上げた。
 まじかよ。ミハエル、スマートすぎるだろ。
 俺は若干ぎこちなく、フィーネに話しかけた。

「あ、じゃ、じゃあ、抱き上げるけど、いいかな?」
「え、ええ。おっお願いするわ」

 俺はフィーネの膝裏に手をかけお姫様抱っこをする。
 俺の前世含めて初めての経験です! めちゃくちゃ緊張するんだが!
 しかもこんなかわいい女の子をお姫様抱っこするなんて……。
 頬が段々熱を持ち始めたのを感じた俺はすぐに光学迷彩をかけた。

 まだ改造をしてないので、俺の姿を見られるのはミハエルだけだ。
 チラリとミハエルを見ると、俺を見てニヤっと笑っている。
 くそぉ。イケメンスマート野郎め。

「じゃ、じゃあ、とりあえず、人がいなくて、魔法の訓練しやすそうなとこへ行こうか」
「おう」
「わっ分かったわ」
「わ、わかりました!」

 浮かび上がろうとしたところで、俺の腕の中にいるフィーネが身を固くして震えているのに気づいた。
 そうだよな、怖いよな。
 俺は自分の恥ずかしさばかりに気を取られて、初めての飛行で怖がっている彼女を気遣うことを忘れていた。

「フィーネ、大丈夫。絶対に君を離したりしないから。何があっても守るから、大丈夫だよ」
「う、うん……」

 フィーネの顔は見えないが、震えが少し収まったので、少しは安心させられたかもしれない。

 こうして俺とミハエルは空中にゆっくりとあがっていった。
 さすがに空中にあがったときはフィーネは俺の服にガッシリとしがみついていたが、数分もすれば慣れてきたようだ。
 かなり高い位置まで来たときに、フィーネが声をあげた。

「わぁ……すごい。鳥になったみたい……」
「少し速度をあげて飛んでみようか?」
「ええ、お願い、ルカ」

 フィーネの返事を聞いた俺は少しだけ速度をあげて空中を飛び回った。

「きゃ! すごい! すごいわ! 本当に鳥みたいね!」

 フィーネはとても楽し気な声をあげていた。

 ミハエルが抱き上げているエルナもエルナで弾んだ声をあげていたので、楽しんでいるようだ。
 暫くそうして空中飛行を楽しんだあと、俺たちは目的を果たすために人のいない開けた場所へと移動をはじめた。

「ルカ、あの辺いいんじゃねぇか?」
「そうだな、あそこにするか」

 ちょうどいい開けた場所があったので俺たちはそこへ下りた。
 フィーネを降ろしてから俺は魔法を解く。

「ありがとう、ルカ。空も楽しかったけど、地上に下りると少しホッとするわね」

 そう言ってフィーネは苦笑していた。

「そうだな。俺も慣れるまではやっぱり飛ぶのは怖かったからな」
「あら、ルカも怖がることあるのね」

 俺はそんなフィーネの言葉に苦笑する。

「そりゃ俺だって普通の人間だからな。怖いもんは怖いさ」
「そうよね、うふふ。ごめんなさい」

 そうして俺は少し落ち着いたところでエルナに魔法について話し始めた。
 彼女自身は魔力操作のパッシブがあるのでコツさえ掴めば比較的簡単に魔法行使ができるはずだ。

 俺がエルナに魔法について教えている間、ミハエルとフィーネは軽い試合をしているようだ。
 ミハエルの流れるような剣捌きに、フィーネは柔らかい動きで対応している。
 実際に弓を射るわけにはいかないので、射る仕草をして、それをミハエルが避けたりはじいたりといった動きをしているようだ。

 俺はそんな二人の美しい舞を横目にみつつも、エルナに教えていく。
 三十分もすると彼女は手のひらに魔力の塊を作り出すことに成功した。
 そこからはもうトントン拍子だった。

 コツを掴んだエルナはすぐに火魔法、水魔法、土魔法、風魔法など、初級の魔法を撃てるようになった。
 打てば響くとはこのことかと思うほど、エルナは教えれば教えるだけ魔法を覚えていく。
 ただ、この世界に元々ある魔法しか覚えれないようで、俺が作った探索魔法や飛行魔法などは覚えることができないようだった。

 それでもどんどん魔法を覚え、大体の魔法は覚えたのではないだろうか。
 回復魔法も切り傷程度なら回復できるくらいの魔法は使えるようだ。
 この世界では見たことはなかったが、バレット系も覚えたので、俺の中での中級魔法まではエルナは覚えることが可能らしい。
 上級魔法だと思ってる混合魔法は扱うことは出来なかった。

 次は、魔法の威力を上げることができるかの検証だ。
 俺の考えが正しければきっと威力はあがるはずなのだ。
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