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第二章 少年期 後編

39 初めてのコボルト

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 ゴブリンを再度手にかけてから一年の時が経った。
 俺は十一歳となり、あれからも頻繁にゴブリン狩りを行った。
 時間が合えばミハエルも連れてゴブリン狩りに行き、訓練を繰り返した。

 やはりミハエルは剣術強化・大があるだけあって、実に強い。
 俺と比べるとミハエルの剣筋は凄く綺麗で、素人の俺から見てもまるで踊るように剣を振るう。
 なので、俺はミハエルと共に狩りをする時は基本後衛として魔法を使った攻撃をしている。
 ――もちろん一人の時はできるだけ剣で攻撃をしているが。

「よし、これで最後だな」

 そう言ってミハエルはゴブリンに突き刺した剣を引き抜き剣を振って血を飛ばした。

「ああ、お疲れ、ミハエル」
「おう。とりあえず浄化魔法頼むわ」
「あいよ」

 最後のゴブリンを始末し終え、俺はミハエルに浄化魔法をかけつつ、土魔法で穴を掘って倒したゴブリンを放り込んで埋めた。
 ここ最近はできるだけミハエルと休みを合わせるようにして、こうしてゴブリン狩りやゴブリンの巣の狩りを行っている。
 ミハエルは筋肉がつきやすいのか最近は体格も良くなってなんとも男らしくなっている。
 それに比べて俺は筋肉があまりつかないのか、ついても目立たないようで少し羨ましく感じていた。

「しかしそろそろゴブリンは簡単に感じるな」

 ミハエルの言葉に俺も頷く。

「そうだなぁ、そろそろワンランク上を狩ってみたくはあるが、さすがに街の近くだとゴブリンとかスライムくらいなんだよな」
「まぁそうだろうな。こんな街の近くに強いモンスターいたらさすがにな。とはいえ、あんまり遠くにも行けねーし、当分はゴブリン狩りかねぇ」

 そんな会話をしつつ、俺はアイテムボックスから冷えた水と、サンドイッチを取り出しミハエルに渡す。

「おう、ありがとな。つか、ルカのそのアイテムボックスだっけ? まじで便利だな」
「ああ、かなり便利だな」

 俺はすでにミハエルには魔法について色々と明かしている。
 本当は冒険者になってから話すつもりだったのだが、こうして一緒に狩りをするなら早めに伝えておいた方が連携もしやすいからだ。

「そこまで容量なくていいから俺も使えりゃいいんだけどな」
「あーそうだよなぁ。金とか放り込んどけば安心安全だしな」
「そうそう。まぁそれもあるが、毎度毎度ルカに武器防具預かってもらったり、飯の用意させたりとかわりーからなぁ」

 俺は別に気にはしてないのだが、そうだな、俺も友達におんぶにだっこは嫌だもんな。
 魔法がそもそもという話でもあるが、そこはお互い様なので気にしない。
 俺はミハエルの剣の腕にとても頼っているし、何より一緒に冒険者になってくれたことに感謝しているのだから。

「そうか、よし、次までにちょっと魔法作っとくわ」
「まじかよ、いいのか?」
「ああ、容量は大きくなくてもいいんだろ?」
「そうだな、武器防具とまぁちょっとしたもん入れられればいいな」
「分かった、作っておくよ」
「ありがとな、ルカ」
「おう」

 そうして俺たちは更なる獲物を求めて移動をすることにした。
 ミハエルはこの一年で飛行魔法に慣れ今では自分で自由に飛べるまでになっている。
 空中に上がり探索魔法で捜索しつつ俺とミハエルは移動を始めた。
 光学迷彩をかけているが、今は改良して俺とミハエルはお互いが見えるようにしてある。
 時刻はまだ昼の十二時を回ったところなのであと数回はゴブリン討伐をできるだろう。


 討伐証明部位に関しては、俺たちは全て捨てている。
 冒険者のランク上げに使えると言えば使えるのだが、なんだかちょっとズルをしてる気分になってしまい、ミハエルとも話した結果、冒険者になってから依頼を受けたり見つけて狩ればいいということに落ち着いた。
 実際は別にズルでもなんでもないのだが、まぁ気分の問題である。

 そうして飛んでいるとなにやらミニマップにおかしな光景を目にした。
 赤い光点が七つ走っているのだが、どうも何かおかしい。
 どちらかというと、三つの光点を四つが追いかけているように見える。

 俺がミニマップをよく見る為に飛ぶ速度を緩めたのに気づいたミハエルが声をかけてきた。

「どうした?ルカ。ゴブリンいたか?」
「――いや、モンスターがいたにはいたんだが……」

 俺はミハエルに光点について話し、様子を見に行くことにした。

 光点に向かって飛んでいくとやっと詳細が見えた。

「なるほど、モンスター同士でも本当に殺し合いするんだな」
「みてーだな。あれは、コボルト……か」

 ミハエルの言葉通り、ゴブリンを追いかけまわしているのはコボルトだ。
 ――コボルトはゴブリンをエサとすることがあるので、きっとあれはエサとして追いかけているのだろう。
 すでにゴブリンは最後の一匹になっている。
 やはり移動速度が違いすぎるのだろう、ゴブリンはすぐにコボルトに追い付かれ首を噛みきられ、そして絶命した。

 コボルトはゴブリンよりは少し大きく、俺たちより少し低い百五十センチくらいだろうか。
 全身に毛が生えており、二足歩行する犬というところだ。
 ――犬ほど可愛い顔はしてはいないが。

「あれ、やるか?」

 ミハエルの言葉に俺は首を振る。

「いや、少し様子を見よう。ゴブリンをその場で食べずに持ち帰ってるから巣の場所が分かるはずだ」
「ああ、そうだな」

 コボルトはゴブリンの死体を担ぐとどこかへ向けて歩きはじめた。
 俺たちはそんなコボルトの後を空からついていく。
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