8 / 14
8:愛の奇跡
しおりを挟む
「……ん」
体が、ふわふわする。
少し寒い。
何か冷たい……頬に当たるのは、花びら……?
「アリシア!」
「アリシアが生き返った!!」
「奇跡だ!」
「おお神よ!」
……え?
私、夢を見ていたの?
さっき、美しい天使様が、私を優しく抱きしめてくれて……
◇ ◇ ◇
葬儀の最中に生き返るなんて、本当に奇跡みたいなことが起きた。
私は忽ち元気になった。
「神様が守ってくださったのよ」
お母様の言葉に、私は心の中で呟く。
違うの。
知ってる。
これは、天使様のおかげ。
優しい天使様が、特別に、私を生き返らせてくださった。
「……」
大切にしよう。
天使様の優しさに報いる為に、今度は、私自身を大切に生きていこう。
そう思うと不思議と笑顔が溢れて来た。
とてもとても幸せで。
目に映る全てが美しくて。
お母様やお父様、弟たちや、使用人のみんな。
私を取り囲む全ての人たちが、以前よりもっともっと愛しくて。
「神様……天使様……」
いつも。
いつも。
祈りを捧げている。
「慈しみ深い御導きに感謝します。どうか、みんなが幸せでいられますように。私にしてくださったように、みんなも愛してくださいますように。お願いします」
新しい日々が始まって、少し経ったある日のこと。
私は家族で王城に招かれた。
長い旅だったけれど、すべてが新鮮で楽しい経験になった。
賑やかな城下町に、活気にあふれる人々の笑顔。
美しい煉瓦道や、宝石のように煌びやかな焼き菓子に、流行のドレス。
目に映る全てが色鮮やかで、まるで夢をみているみたい。
御伽噺の中に迷い込んだ、女の子みたい。
楽しい時間が瞬く間に過ぎていく。
謁見の間に通されて、国王陛下と王妃様に初めてお会いした。
緊張したけれど、なんだか、強い自分でいることができた。
「……」
天使様。
私の心には、天使様がいる。
優しい天使様が私を大切にしてくださったことを、ちゃんと覚えている。
今も、まるで天使様が傍にいてくれるような気がする。
だから心強かった。
「あなたが奇跡の伯爵令嬢ですね、アリシア」
王妃様の深く美しい声が私の名前を呼んだ。
「神様に愛されたあなたを、私たち王家は歓迎いたします」
「顔をあげよ。神に愛された聖なる乙女アリシア」
国王陛下の命じる声もとても優しい。
恐る恐る顔を上げると、この国で一番偉く尊い夫婦が、まるで天使様みたいに優しく慈愛に満ちた微笑みで私を見つめていた。
それから、本当に奇跡のような毎日だった。
王妃様のお茶会に、親しいお友達として招待された。
王家と親交のある貴婦人たちも、とても優しくしてくれた。
そして……
体が、ふわふわする。
少し寒い。
何か冷たい……頬に当たるのは、花びら……?
「アリシア!」
「アリシアが生き返った!!」
「奇跡だ!」
「おお神よ!」
……え?
私、夢を見ていたの?
さっき、美しい天使様が、私を優しく抱きしめてくれて……
◇ ◇ ◇
葬儀の最中に生き返るなんて、本当に奇跡みたいなことが起きた。
私は忽ち元気になった。
「神様が守ってくださったのよ」
お母様の言葉に、私は心の中で呟く。
違うの。
知ってる。
これは、天使様のおかげ。
優しい天使様が、特別に、私を生き返らせてくださった。
「……」
大切にしよう。
天使様の優しさに報いる為に、今度は、私自身を大切に生きていこう。
そう思うと不思議と笑顔が溢れて来た。
とてもとても幸せで。
目に映る全てが美しくて。
お母様やお父様、弟たちや、使用人のみんな。
私を取り囲む全ての人たちが、以前よりもっともっと愛しくて。
「神様……天使様……」
いつも。
いつも。
祈りを捧げている。
「慈しみ深い御導きに感謝します。どうか、みんなが幸せでいられますように。私にしてくださったように、みんなも愛してくださいますように。お願いします」
新しい日々が始まって、少し経ったある日のこと。
私は家族で王城に招かれた。
長い旅だったけれど、すべてが新鮮で楽しい経験になった。
賑やかな城下町に、活気にあふれる人々の笑顔。
美しい煉瓦道や、宝石のように煌びやかな焼き菓子に、流行のドレス。
目に映る全てが色鮮やかで、まるで夢をみているみたい。
御伽噺の中に迷い込んだ、女の子みたい。
楽しい時間が瞬く間に過ぎていく。
謁見の間に通されて、国王陛下と王妃様に初めてお会いした。
緊張したけれど、なんだか、強い自分でいることができた。
「……」
天使様。
私の心には、天使様がいる。
優しい天使様が私を大切にしてくださったことを、ちゃんと覚えている。
今も、まるで天使様が傍にいてくれるような気がする。
だから心強かった。
「あなたが奇跡の伯爵令嬢ですね、アリシア」
王妃様の深く美しい声が私の名前を呼んだ。
「神様に愛されたあなたを、私たち王家は歓迎いたします」
「顔をあげよ。神に愛された聖なる乙女アリシア」
国王陛下の命じる声もとても優しい。
恐る恐る顔を上げると、この国で一番偉く尊い夫婦が、まるで天使様みたいに優しく慈愛に満ちた微笑みで私を見つめていた。
それから、本当に奇跡のような毎日だった。
王妃様のお茶会に、親しいお友達として招待された。
王家と親交のある貴婦人たちも、とても優しくしてくれた。
そして……
50
お気に入りに追加
535
あなたにおすすめの小説
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
殿下が望まれた婚約破棄を受け入れたというのに、どうしてそのように驚かれるのですか?
Mayoi
恋愛
公爵令嬢フィオナは婚約者のダレイオス王子から手紙で呼び出された。
指定された場所で待っていたのは交友のあるノーマンだった。
どうして二人が同じタイミングで同じ場所に呼び出されたのか、すぐに明らかになった。
「こんなところで密会していたとはな!」
ダレイオス王子の登場により断罪が始まった。
しかし、穴だらけの追及はノーマンの反論を許し、逆に追い詰められたのはダレイオス王子のほうだった。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。
田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」
それが婚約者から伝えられたことだった。
最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。
子供ができても無関心。
だから私は子供のために生きると決意した。
今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる