5 / 14
5:天使の後悔(サラフィエル視点)
しおりを挟む
やってしまった。
完全に失敗した。
美しい魂を回収しようと欲をかいたばかりに、本当に可憐で清らかなアリシアを悲しませ不幸のどん底に突き落としてしまった。
酷いことをした。
アリシアの愛は身勝手に裏切られてしまった。
優しいアリシアはそれでもレオナルドを愛し続けた。
可哀想なアリシア。
私はなんとか考え直させようとレオナルドの裏切りを告げたが、アリシアはただ静かな微笑みを浮かべ最期の時を待っている。
魂の契約は絶対だ。
私が神に逆らう以外、この契約をなかったことにはできない。
だから私は世界で一番美しいアリシアの魂を受け取らなくてはいけない。
もう一度、何か他の祈りを捧げてくれたら。
そうしたらまた、別の条件を提示することができるのに。
アリシアはレオナルドを愛している。
愛し続けたまま死のうとしている。
「アリシア。今からでも」
──いいえ。私はレオナルドを愛してます。
「アリシア。もう一度、生きることを考えてみないかい?」
──私は、レオナルドに生きていてほしい。
埒が明かない。
そんなアリシアの深い愛を知らないで、レオナルドは意気揚々と結婚準備を進めている。
イザベラはアリシアを蔑視して遠ざけようとしている。
結婚式に呼ばない?
病気をうつされたら困る?
アリシアが尊い犠牲を払ったからこそ、今レオナルドの腕に抱かれうっとりとしていられるのに。
天国の事情を知らないとしても、イザベラは冷酷すぎた。
敬意を払い見舞うべきだった。
──お願い。
おや?
アリシアがやっと心を入れ替えてくれたようだ。
「なんだい?なんでも望むことを言ってごらん」
──最期に、もう一度だけ……もう一度だけ、レオナルドに会いたいの……
よしたほうがいい。
あいつは最悪だ。
──お願いします。最期に、もう一度だけ……どうしても伝えたいことがあるの……
「……アリシア」
悩む。
これは凄く悩む。
あんな薄情な恩知らずに会わせたら、アリシアが傷つけられるに決まっている。
でも……
──お願いします。どうか、最期に、もう一度だけ……
無垢な魂。
アリシアの美しい魂は、もしかしたら、もう誰にも傷つけられないのかもしれない。
「それが、君の最期の願いなんだね」
──はい。
「わかったよ。もともとレオナルドと過ごすための時間として延命したからね」
──ありがとうございます……!
「会いに行くなら、少しだけ体を自由にしてあげよう。痛みも苦しみも取り除いてあげようね。呼吸も楽にしてあげよう。美味しい空気を胸一杯吸うといい」
君が満足できるように。
──ありがとうございます、天使様。
「行っておいで。可愛い、可愛いアリシア」
完全に失敗した。
美しい魂を回収しようと欲をかいたばかりに、本当に可憐で清らかなアリシアを悲しませ不幸のどん底に突き落としてしまった。
酷いことをした。
アリシアの愛は身勝手に裏切られてしまった。
優しいアリシアはそれでもレオナルドを愛し続けた。
可哀想なアリシア。
私はなんとか考え直させようとレオナルドの裏切りを告げたが、アリシアはただ静かな微笑みを浮かべ最期の時を待っている。
魂の契約は絶対だ。
私が神に逆らう以外、この契約をなかったことにはできない。
だから私は世界で一番美しいアリシアの魂を受け取らなくてはいけない。
もう一度、何か他の祈りを捧げてくれたら。
そうしたらまた、別の条件を提示することができるのに。
アリシアはレオナルドを愛している。
愛し続けたまま死のうとしている。
「アリシア。今からでも」
──いいえ。私はレオナルドを愛してます。
「アリシア。もう一度、生きることを考えてみないかい?」
──私は、レオナルドに生きていてほしい。
埒が明かない。
そんなアリシアの深い愛を知らないで、レオナルドは意気揚々と結婚準備を進めている。
イザベラはアリシアを蔑視して遠ざけようとしている。
結婚式に呼ばない?
病気をうつされたら困る?
アリシアが尊い犠牲を払ったからこそ、今レオナルドの腕に抱かれうっとりとしていられるのに。
天国の事情を知らないとしても、イザベラは冷酷すぎた。
敬意を払い見舞うべきだった。
──お願い。
おや?
アリシアがやっと心を入れ替えてくれたようだ。
「なんだい?なんでも望むことを言ってごらん」
──最期に、もう一度だけ……もう一度だけ、レオナルドに会いたいの……
よしたほうがいい。
あいつは最悪だ。
──お願いします。最期に、もう一度だけ……どうしても伝えたいことがあるの……
「……アリシア」
悩む。
これは凄く悩む。
あんな薄情な恩知らずに会わせたら、アリシアが傷つけられるに決まっている。
でも……
──お願いします。どうか、最期に、もう一度だけ……
無垢な魂。
アリシアの美しい魂は、もしかしたら、もう誰にも傷つけられないのかもしれない。
「それが、君の最期の願いなんだね」
──はい。
「わかったよ。もともとレオナルドと過ごすための時間として延命したからね」
──ありがとうございます……!
「会いに行くなら、少しだけ体を自由にしてあげよう。痛みも苦しみも取り除いてあげようね。呼吸も楽にしてあげよう。美味しい空気を胸一杯吸うといい」
君が満足できるように。
──ありがとうございます、天使様。
「行っておいで。可愛い、可愛いアリシア」
43
お気に入りに追加
535
あなたにおすすめの小説
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました
紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。
だがそれは過去の話。
今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。
ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。
タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。
殿下が望まれた婚約破棄を受け入れたというのに、どうしてそのように驚かれるのですか?
Mayoi
恋愛
公爵令嬢フィオナは婚約者のダレイオス王子から手紙で呼び出された。
指定された場所で待っていたのは交友のあるノーマンだった。
どうして二人が同じタイミングで同じ場所に呼び出されたのか、すぐに明らかになった。
「こんなところで密会していたとはな!」
ダレイオス王子の登場により断罪が始まった。
しかし、穴だらけの追及はノーマンの反論を許し、逆に追い詰められたのはダレイオス王子のほうだった。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。ただ改稿を行い、結末がこちらに掲載している内容とは異なりますので物語全体の雰囲気が異なる場合がございます。あらかじめご了承下さい。(あちらはゲオルグと並び人気が高かったエイドENDです)
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
婚約者が高貴なご令嬢と愛し合ってるようなので、私は身を引きます。…どうして困っているんですか?
越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
大切な婚約者に、浮気されてしまった……。
男爵家の私なんかより、伯爵家のピア様の方がきっとお似合いだから。そう思って、素直に身を引いたのだけど。
なんかいろいろ、ゴタゴタしているらしいです。
人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる