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5:天使の後悔(サラフィエル視点)

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やってしまった。
完全に失敗した。

美しい魂を回収しようと欲をかいたばかりに、本当に可憐で清らかなアリシアを悲しませ不幸のどん底に突き落としてしまった。

酷いことをした。

アリシアの愛は身勝手に裏切られてしまった。
優しいアリシアはそれでもレオナルドを愛し続けた。

可哀想なアリシア。
私はなんとか考え直させようとレオナルドの裏切りを告げたが、アリシアはただ静かな微笑みを浮かべ最期の時を待っている。

魂の契約は絶対だ。
私が神に逆らう以外、この契約をなかったことにはできない。

だから私は世界で一番美しいアリシアの魂を受け取らなくてはいけない。

もう一度、何か他の祈りを捧げてくれたら。
そうしたらまた、別の条件を提示することができるのに。

アリシアはレオナルドを愛している。
愛し続けたまま死のうとしている。

「アリシア。今からでも」

──いいえ。私はレオナルドを愛してます。

「アリシア。もう一度、生きることを考えてみないかい?」

──私は、レオナルドに生きていてほしい。

埒が明かない。

そんなアリシアの深い愛を知らないで、レオナルドは意気揚々と結婚準備を進めている。
イザベラはアリシアを蔑視して遠ざけようとしている。

結婚式に呼ばない?
病気をうつされたら困る?

アリシアが尊い犠牲を払ったからこそ、今レオナルドの腕に抱かれうっとりとしていられるのに。

天国の事情を知らないとしても、イザベラは冷酷すぎた。
敬意を払い見舞うべきだった。

──お願い。

おや?
アリシアがやっと心を入れ替えてくれたようだ。

「なんだい?なんでも望むことを言ってごらん」

──最期に、もう一度だけ……もう一度だけ、レオナルドに会いたいの……

よしたほうがいい。
あいつは最悪だ。

──お願いします。最期に、もう一度だけ……どうしても伝えたいことがあるの……

「……アリシア」

悩む。
これは凄く悩む。

あんな薄情な恩知らずに会わせたら、アリシアが傷つけられるに決まっている。

でも……

──お願いします。どうか、最期に、もう一度だけ……

無垢な魂。
アリシアの美しい魂は、もしかしたら、もう誰にも傷つけられないのかもしれない。

「それが、君の最期の願いなんだね」

──はい。

「わかったよ。もともとレオナルドと過ごすための時間として延命したからね」

──ありがとうございます……!

「会いに行くなら、少しだけ体を自由にしてあげよう。痛みも苦しみも取り除いてあげようね。呼吸も楽にしてあげよう。美味しい空気を胸一杯吸うといい」

君が満足できるように。

──ありがとうございます、天使様。

「行っておいで。可愛い、可愛いアリシア」
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