愛するあなたへ最期のお願い

つぶあん

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2:心変わり

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「ん……」

レオナルドの声が遠くから聞こえる。
握っていたレオナルドの手がぴくりと動く。

そして……

「僕は……」

起き上った。
ずっとベッドに寝た切りで昏睡状態だったのに、朝、目覚めるように……

「アリシア?」
「レオ……ナルド……」

ああ、レオナルド。
あなた、本当に助かったのね。

「よか……た……」
「アリシア!?」

嬉しい。

神様は、私の祈りを聞いて、天使を遣わしてくださった。
レオナルドを救ってくれた。

ありがとうございます、神様、天使様。
最期にレオナルドの声を聞けて、私は幸せです。

名前を呼んでもらえて、幸せです。

でも、もう……駄目です。

レオナルドの手からするりと抜けて、ベッドに寄りかかる体力も残されていない。
床に倒れ込むと、焦ったレオナルドがこちらを覗き込んだ。

「レオナルド……愛してるわ……」


──ああ、美しい魂だ


「レオナルド……」


──アリシア。清らかな君には、特別に少しだけ時間をあげる


「誰か!誰か来てください!アリシアが──」


──愛に包まれて安らかに眠れるようにしてあげる



  ◇ ◇ ◇


私は病に倒れた。
でも、レオナルドが元気になった。

だから私は幸せだった。
満足して、最期の時を静かに待っていた。

天使の声はあれきり聞こえない。
でも天使は優しかった。

痛くない。
とても体が重くて、弱ってしまったけれど、痛くはない。

少し呼吸が細くなったくらいで、苦しくもない。

静かに、静かに、弱っていく。
痩せていく。

穏やかな最期をくれるのね。

神様、ありがとうございます。
天使様、ありがとうございます。

「アリシア」

今日もレオナルドがお見舞いに来てくれました。

「レオナルド……、ありがとう」

私を心配して、そんな、苦しそうな顔をしてるのね。
でも、苦しまないで。
悩まないで。
悲しまないで。

これは私が選んだことなのだから。

「アリシア。君に話があるんだ」
「なに?」

あとどれくらいの時間が残されているのだろう。
どれくらい、愛するレオナルドの声が聞いていられるかしら。

神様。

もし、もう一度、我儘を聞いてくださるなら。

レオナルドの声を聞きながら眠りたい。

「体を壊すまで僕の看病をしてくれたことは感謝してる」

当たり前のことをしただけよ。
愛しているのだもの。

「だけど、僕は、君の傍に居続けることはできない」

……え?

「奇跡だよ。だから僕は、本当に愛している人と結婚する」

レオナルド……
何を、言ってるの……?

「その為に神様は生き返らせてくれたんだ」
「レオナルド……」
「さようなら、アリシア。この場をもって君との婚約は破棄する。僕の人生を返してもらうよ」
「レオナルド……!」
「お大事に」

嘘。
レオナルド……

私に求婚してくれたとき、愛を囁いた。
私と踊るとき、優しく抱き寄せてくれた。
私と過ごす全ての時間、あなたは優しくて誠実だった。

それなのに、どうして……
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