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第二章 王都への旅立ち

いざ王都へ

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それから、依頼当日を迎えた。
早朝、俺はラルスさんの店に武具を受け取りに来ていた。
「おはようございます。ツバキです」
「おぉ、来たな。武具なら出来てるぞ。こっちに来い」
暖簾から顔を出しながら手で俺を手招きして呼んだ。
「失礼します。おぉ」
「驚いたか?まぁ、これでも少し足りないんだが、時間的にこれが限界だったんだ」
「これで、ですか?」
工房の机の上にあったのは何の変哲もない防具だけれど、鑑定してみると嘘のように防御力が高い。
これで少し足りないと思うラルスさんが凄い。

「で、値段なんだが大銀貨一枚が妥当だな」
「え?これだけ防御力が高いのにですか?」
俺は値段の安さに驚いてしまった。
確かに大銀貨一枚は十万円と日本円に換算すれば高いかもしれないけど、この世界は物価高、それに加え、これだけの防具だと金貨数枚から大金貨数枚と高価なものだ。
それを大銀貨一枚とは。
俺、多分高いだろうって金貨持ってきたんだけど‥‥‥‥。まぁ、いっか。

「あぁ。これに関しては俺のプライドだ。客に半端なものを渡して値段踏んだくるなんて真似出来ねぇよ」
この世界の人は鍛冶屋の店主さんもそうだが、優しく、自分の仕事に責任を持っている人が沢山いるようだ。
「凄いですね。じゃあ、金貨一枚から」
「別に凄かぁねぇよ。普通だ。ほい大銀貨一枚のお返しだ」
お釣りを受け取り、改めてラルスさんにお礼を言うと俺はギルドへと戻った。

♦︎♦︎♦︎♦︎

「あ、ツバキさんお帰りなさい」
ギルドに戻るとヒーカさんが出迎えてくれた。
「ただいまです。ギルマス、今いますか?」
「えぇ、先程来られて今、ルイナスさんと一緒に部屋にいらっしゃいますよ」
「ありがとうございます」
ヒーカさんにはお礼を言うと、ギルマスのいる部屋に向かった。

「ツバキです」
「来たな。入れ」
扉をノックしながら挨拶すると、部屋の中から、ギルマスの返事が返ってきた。
「失礼します」
「ツバキ準備は出来たか?」
「はい」
「良かった。流石に短いかとも思ったんだが、王都まではそれなりに距離があるからな。それとな、済まないが他に寄る所が出来てしまった。まぁ、道すがらだから問題はないと思うが、一応な」
ルイナスさんは申し訳なさそうに言った。
寄る所か、俺としてはこの街しか知らないから、いろんなところに寄れるのは願っても見ない事だけど、ルイナスさんはなんか悩みの種みたいだな。

「全然大丈夫ですよ。俺としても沢山の場所を見たいですしね」
「そう言ってくれて助かった」
安心したようにルイナスさんは微笑んだ。
「そうだ、ツバキ。ヒーカから俺の伝言を聞いたと思うが、俺も依頼に同行することになった。宜しく頼む」
「理由を聞いても?」
「実はな、諸事情でルイナスの家族に挨拶する事になってな。それに、済まないが言えない。事情があってな」
ギルマスは言いかけて、思いとどまったように説明をやめた。

「分かりました。何か事情があるなら仕方ないですね。答えにくい質問をすみません」
「いや、良い。それよりそろそろ出発しないとライザイにつかないぞ」
ギルマスの言葉で俺達はルイナスさんの荷馬車が置いてある、ギルドの裏へ周った。

着くと、そこにはヒーカさんの姿があった。
「ツバキさん、初の指名依頼頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
ヒーカさんの応援にお礼を言うと、馬の準備をし終えたギルマスとルイナスさんが歩いてきた。
「ヒーカ、ギルドの事頼むな。何かあればライザイの冒険者ギルドを頼ってくれ」
「分かりました。お気をつけて行ってきてください。ルイナスさんもお気をつけて」

「ありがとな。ヒーカ」
「ヒーカちゃん、ありがとな」
二人はヒーカさんにお礼を言うと、ギルマスは荷馬車の中へ、ルイナスさんは御者の席へ座った。

「ツバキ、荷馬車に乗ってくれ」
俺はルイナスさんの荷馬車に乗り込むと、荷物を避けながら座った。
この荷馬車に乗るのは異世界に初めて来た時以来だな。
なんか思いれ深いかも。
「それじゃ、出発するぞ」
「はい」
こうして初めての異世界での旅が始まった。


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