転生なの?召喚なの?

蒼華

文字の大きさ
上 下
11 / 11

ことの真相

しおりを挟む
急に謝られ、呆気に取られてしまった。
「は!あの、急に謝られても状況説明をお願いしたいんですけど」
無理やり意識を戻すと、女の人は申し訳なさそうな顔をした。
「そうですね。しっかり説明しますね。まず、ハルヤさんは地球とこの世界の事を知っていますよね」
「はい、知っています」
「では、この世界、いや、シーリス王国に伝わる儀式も知っていますよね」
「はい」
女の人は中々本題を切り出せないのか、細かい質問ばかりしてくる。
にしても、この人どっかで見たことがあるような気がするんだよな。

「『異世界渡り』この儀式が行われるようになった所以を知っていますか?」
「はい、知っていますけど。確かこの世界の女神と異世界の神がお互いの世界の者を送り合う、でしたっけ」
「はい、その通りです。そこでハルヤさんが異世界、つまり地球に飛ばされたんです。それで、その、あの、この世界の女神というのが私でして‥‥‥、今回起きた地球からの召喚についてご説明に伺った次第です」
申し訳なさそうに女の人‥‥女神ルルーユが言った。
見たことがあると思ったのは王都の教会で女神像を見たからか。
そんな似るもんかね。
そんなことよりも、現状の把握が一番だな。

「それで、今回の事はどういった経緯で起きたんですか?」
「ふぅ。まず、私たち神もお互いの世界に干渉する事は至難の業です。そこで、関係を保つ為に行われたのが『異世界渡り』です。元々、地球にはそういった書物が人気だったこともあり、『異世界渡り』‥‥地球の場合は転生ですね。が、受け入れられました。しかし、この世界のでは中々受け入れられず、唯一定着したのがシーリス王国でした。定着っていう言い方もおかしいですが」
遠くを見つめるように、女神ルルーユは言った。

女神ルルーユの話を聞いていると、ある疑問が頭の中に浮かんだ。
「あの、もしかして、俺がこの世界に転生したのも『異世界渡り』ですか?」
「あ、いえ。ハルヤさんがこの世界に来たのは『異世界渡り』とは関係ありません。この件は詳しくは教える事が出来ません。ただ一つだけ、不慮の事故だったと言うことだけ記憶に止めておいて下さい」
「は、はい」
女神ルルーユの目は出会ってまだ少ししか経っていないけれども、本当に真剣だった。

「本題に戻しますが、今回起きた召喚の件は言い訳になってしまいますが私は事前に把握することができていませんでした。突然でしたので、言語理解もままならない状態で、迎えてしまい本当に申し訳ありません」
「え?把握出来ていなかったって‥‥。じゃあ、地球の神はどうしたんですか?それに一方的に召喚出来るならこっちの世界から地球に帰すことも出来るんじゃないんですか?」
俺が聞くと女神ルルーユは何と答えるべきかと言わんばかりの顔で悩んでいた。

「その事を説明する前に時空之扉について説明しますね。時空之扉は各世界を繋ぐ門の役割を果たしています。この世界と地球も例外ではありません。何度もお互いの世界の者を行き来させていたせいで、この世界の時空之扉が緩くなっていたらしく簡単に皆さんをこの世界に引き摺り込んでしまったことが今回が、事前に把握出来なかった理由です」
女神ルルーユはここで一息付くと再び説明を始めた。

「ここからハルヤさんの疑問に答えると、まず地球の神は現在連絡が取れません。ですから私はこれ以上状況を知ることが出来ないです。そして、地球には今の所、帰すことが出来ません。地球の神が戻ってこないと時空之扉は開かないからです」
「えっと、つまりその地球の神の所在が分からないことにはどうのしようもないって事ですか?」
「はい、その通りです。ですので、しばらくこの世界に居ていただくほかないんです」

申し訳なさそうに女神ルルーユは言った。
地球にしばらく帰れない、か。
俺はこの世界のこともある程度知っているし、問題はないだろけど、雫達は問題過ぎるよな。
言語理解もまともに出来ていないのに、魔物や盗賊、地球と比べてあまりに治安が悪すぎる。
自衛の方法と言語の理解が課題か。

「事情は分かりました。一つお願いがあるんですけど」
「何でしょう。叶えられる範囲なら何でも言ってください」
「雫‥‥召喚者達への言語理解と自衛の手段を神の加護として頂けませんか?」
俺は女神ルルーユにダメ元でお願いしてみた。
そう易々と加護を与えるのは女神としてよくないと思うからだ。

「ん~。そうですね、それくらいさせていただかないと今回のお詫びとしては不十分ですね。では、ランダムに魔法と剣の才、そして召喚者達全員には言語理解を加護をとして付与させていただきます」
「ありがとうございます」
俺は安堵して女神ルルーユにお礼を言った。

「だいぶ長居をさせてしまいました。現実へ引き戻しますね。ハルヤさんは聖之間に来た要領で現実、つまりここに来るまでいた場所を思い浮かべてください。なるべく正確に」
「はい」
俺は返事をすると寝ていた部屋を思い浮かべた。
五年振りで帰って来て居たのも少しだったため、思い出すのは少し時間がかかってしまった。

「思い出せたようですね。では、行きます。現実に戻れ!」
女神ルルーユは女神とは思えない大声で言うと俺の意識は落ちた。
まるで誰かに喝を入れているようだった。

「うぅん?ふぁぁ~」
目を覚ました時には王城の部屋にいた。
置き時計というものがないから体内時計になるけど大体四時くらいだと思う。
起こされるまでもう少し寝ていよう。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

処理中です...