おじいちゃん

疑問

…いつからだっただろうか
   私は目の前に静かに横たわる亡き祖父を前にそんな疑問が浮かんだ。
   遊ばなくなったとか、会わなくなったとかではない。むしろ、昨日まで私は祖父と一緒に暮らしていた。
親がいないのか？あなたたちは私にそんな疑問が浮かぶだろう。その質問にyesと答えたら嘘になるため私はyesに近いnoだと答えよう。
   何故かというと何やら私の母は私の父とは別の男と結婚しており、不倫相手と出来た子である私を祖父に預け(捨てたも同然)そのまま男と暮らしているらしい。
   私の本当の父親はそのまま母との不倫を続けているそうだ。バレたかどうかなど私は知らないし知ろうとも思わない。
   父親は時々家に来るため見たことあるが母の顔は物心ついてから17歳の現在まで見た覚えはない。
   ちなみに祖母は私が生まれる前に他界したそうだ。
   ところで話を戻そう。私の浮かんだ疑問とは祖父の表情だ。
   別に無表情で感情を全く表さなかったわけではない。怒ることもあるし笑うこともある。もちろん、泣くこともある。ただ、なんとなく祖父が時々とても悲しそうな顔をするのだ。
   その顔は私が見るとすぐにいつもの表情に変わるという少し不思議なものだ。
   いつからだろうか…この疑問はその顔をいつから見せるようになったかというものだ。
   その疑問を持ったまま祖父の遺体を見つめているとさっ、さと畳の上を歩く足音が聞こえてきた。
   足音のする方へ目を向ければそこには私の父が佇んでいた。