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7章
リュイと卵(3)
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階段を上り、部屋の前に着く。リュイがドアを開け私も続いて中に入った。綺麗に整理されたその部屋は、窓から差し込む光で照らされていた。リュイはそのまま窓際まで行き、そこから卵を持って私のところまで来た。
「持ってきました。卵の様子何か変わりましたか?」
「見た目じゃ朝食の時と変わらないような気がするのだけれど、さっき一瞬その中から微かな気配を感じたの」
「気配ですか? もしかして中の妖精が成長しているんでしょうか?」
「私には分からないから、それを含めてレミナに聞いてみようかと思っているわ」
しばらくリュイと話していると、リュイは何か思いついたような表情で私に問いかけてきた。
「サラは、この卵を入れるような箱を持っていませんか?」
「うーん、そうね……」
私は家の中にあるものを隅から隅まで思い出して、いくつかの箱のようなものかた候補を絞った。
「いくつかその卵に合いそうなものがあるわ。少しここで待っていて。持ってくるわ」
そう言って、私は階段を下りて棚からいくつか箱を取ってリュイの元へ戻った。近くの机に箱を並べ、リュイに見せる。
「この家の中だとこれくらいしかないけれど、大丈夫そうかしら?」
「そうですね……これとか大きさ的にも良さそうです!」
リュイは紙でできた赤い箱を選び、手に取った。それをクルクルとまわしながら確認している。
「リュイ、その卵をくるんでいた布を箱の中に入れてその上に卵を乗せたらどうかしら?」
「それいいですね! 試してみます」
そう言って、リュイは箱の中に布を入れ卵を乗せる。見た目はふかふかのベッドに寝ている卵のようだ。リュイはその箱を机の上に置いた。赤い箱は、光に照らされキラキラとしている。その置かれた箱を私とリュイは見つめていた。
「バランスも良いですし、もう落ちる心配はないですね」
「そうね。これなら大丈夫ね」
コンコンと玄関のほうから、ドアを叩く音が聞こえた。お昼までまだ時間があるのでレミナではないだろう。私は、急いで玄関のほうへ向かった。ドアを開けると、村の子供たちが数人立っていた。
「あら、どうしたの?」
「リュイ君元気になりましたか? 今日は遊べるかなってみんなで話してて……」
「もうリュイは元気よ。呼んでくるから少し待っててもらえるかしら?」
「はーい!」
私は階段の下から部屋の中にいるリュイに声をかけた。
「リュイー! 村の子たちが来てるわよー」
「はーい!」
パタパタと走る音がし、部屋のドアが開く。リュイは玄関のほうへ走っていった。私も、後を追い玄関まで歩いて行く。リュイは村の子たちと楽しそうに話していた。
「サラ、僕少し遊んできてもいいでしょうか?」
「もちろんよ!」
「あっ、お昼までには帰ってきます」
そう言って、リュイは村の子たちとどこかへ遊びに行った。私はそのリュイの後姿を見送り、家の中に入った。
自室に向かう途中に、机の魔法陣の上に封筒が一つ置かれていた。封を開け中身を確認すると、中央魔法局からの依頼の文書が一枚入っていた。
「今回は少ないわね……」
私は文書の内容を確認しながら、現時点で足りない材料をメモに書く。レミナが来るまでまだ時間があるので、少しは進められそうだ。
足りない材料のうち、家の裏で採れる薬草などを集めに私は裏口のドアを開ける。
もうすぐ花の季節も終わるのか、木々の色は少しずつ茶色に変わり始めている。遠くから風に乗ってくる花々の香りも、いつの間にか種類の違うものになっていた。
私はそんな空気を感じながら、薬草や花などを集め家に戻った。時間はもうすぐお昼といったところだろうか。遠くからリュイがこちらに走ってくる気配を感じた。
「持ってきました。卵の様子何か変わりましたか?」
「見た目じゃ朝食の時と変わらないような気がするのだけれど、さっき一瞬その中から微かな気配を感じたの」
「気配ですか? もしかして中の妖精が成長しているんでしょうか?」
「私には分からないから、それを含めてレミナに聞いてみようかと思っているわ」
しばらくリュイと話していると、リュイは何か思いついたような表情で私に問いかけてきた。
「サラは、この卵を入れるような箱を持っていませんか?」
「うーん、そうね……」
私は家の中にあるものを隅から隅まで思い出して、いくつかの箱のようなものかた候補を絞った。
「いくつかその卵に合いそうなものがあるわ。少しここで待っていて。持ってくるわ」
そう言って、私は階段を下りて棚からいくつか箱を取ってリュイの元へ戻った。近くの机に箱を並べ、リュイに見せる。
「この家の中だとこれくらいしかないけれど、大丈夫そうかしら?」
「そうですね……これとか大きさ的にも良さそうです!」
リュイは紙でできた赤い箱を選び、手に取った。それをクルクルとまわしながら確認している。
「リュイ、その卵をくるんでいた布を箱の中に入れてその上に卵を乗せたらどうかしら?」
「それいいですね! 試してみます」
そう言って、リュイは箱の中に布を入れ卵を乗せる。見た目はふかふかのベッドに寝ている卵のようだ。リュイはその箱を机の上に置いた。赤い箱は、光に照らされキラキラとしている。その置かれた箱を私とリュイは見つめていた。
「バランスも良いですし、もう落ちる心配はないですね」
「そうね。これなら大丈夫ね」
コンコンと玄関のほうから、ドアを叩く音が聞こえた。お昼までまだ時間があるのでレミナではないだろう。私は、急いで玄関のほうへ向かった。ドアを開けると、村の子供たちが数人立っていた。
「あら、どうしたの?」
「リュイ君元気になりましたか? 今日は遊べるかなってみんなで話してて……」
「もうリュイは元気よ。呼んでくるから少し待っててもらえるかしら?」
「はーい!」
私は階段の下から部屋の中にいるリュイに声をかけた。
「リュイー! 村の子たちが来てるわよー」
「はーい!」
パタパタと走る音がし、部屋のドアが開く。リュイは玄関のほうへ走っていった。私も、後を追い玄関まで歩いて行く。リュイは村の子たちと楽しそうに話していた。
「サラ、僕少し遊んできてもいいでしょうか?」
「もちろんよ!」
「あっ、お昼までには帰ってきます」
そう言って、リュイは村の子たちとどこかへ遊びに行った。私はそのリュイの後姿を見送り、家の中に入った。
自室に向かう途中に、机の魔法陣の上に封筒が一つ置かれていた。封を開け中身を確認すると、中央魔法局からの依頼の文書が一枚入っていた。
「今回は少ないわね……」
私は文書の内容を確認しながら、現時点で足りない材料をメモに書く。レミナが来るまでまだ時間があるので、少しは進められそうだ。
足りない材料のうち、家の裏で採れる薬草などを集めに私は裏口のドアを開ける。
もうすぐ花の季節も終わるのか、木々の色は少しずつ茶色に変わり始めている。遠くから風に乗ってくる花々の香りも、いつの間にか種類の違うものになっていた。
私はそんな空気を感じながら、薬草や花などを集め家に戻った。時間はもうすぐお昼といったところだろうか。遠くからリュイがこちらに走ってくる気配を感じた。
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