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5章
目覚め
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その後二日経ってもリュイは目覚めなかった。お昼ごろになると、村の子供たちが数人家を訪ねてきた。
「リュイ君いますかー?」
「こんにちは。リュイは今日は疲れて寝ているの」
「えーそうなの?」
子供たちに不安を感じさせないため、本当のことは伝えなかった。
「また今度、リュイと遊んでくれると嬉しいわ」
「分かった! また誘いに来るね! じゃあね、サラさん」
そう言って子供たちは、手を振りながら敷地の外に出ていった。リュイはこの村の子たちとも打ち解けて仲良くなっているようだった。
一度リュイの様子を見に、部屋に入るが状況は変わっていなかった。中央魔法局から依頼された魔法薬も作らなければならないので、一旦作業場に戻る。魔法薬を届ける期限も迫っていたので、私は急いで薬を調合した。
「リュイ? 今日も起きないの?」
夜になり、眠る前に部屋を訪れたが返事はなかった。リュイの部屋の明かりを消し、私は自分の部屋に戻る。
その一日の流れを十日ほど繰り返した。花の季節も終わりに近づき、空気がだんだんと次の季節に変わってくる。
途中、レミナは何度か様子を見に来てくれた。私は昨日の会話を思い出す。
「サラ、そろそろリュイは目覚めるかもしれないわ」
「分かるの?」
「この道具の中の一つに、反応が出ているから可能性はあるかもしれないわね」
「ならいいんだけれど……」
そろそろとはいつだろうか。私はリュイが図書館から借りてきた本を手に取り、椅子に腰かけて、パラパラとページを捲った。
本の中身を読み終え、空気でも入れ変えようかとカーテンに手をかけ窓も開ける。ふわりと風が部屋の中に入り、暖かな光は壁を照らした。
部屋の中に入った風がリュイの髪をフワフワと揺らす。その様子を見ているとリュイが少し体を動かす音が聞こえ、リュイの手が自身の目をこすっていた。
「リュイ!」
私の声にピクリと反応し、リュイはゆっくりと体を起こし大きなあくびをしながら腕を伸ばす。
「サラ、どうしたんですか? なんで部屋に……」
そう言葉を零すリュイに私は抱き着いた。
「リュイ! 良かった……もう何日も寝ていたのよ?」
「ええっ!サラ、どうしたんですか!?」
リュイは驚いたような声を上げ、慌てた様子で私の肩に手を置いた。
「えっと、サラ……僕そんなに寝ていたんですか?」
「十日は寝ていたわよ?」
「十日!? 一体どうして……」
私はリュイから身体を離し、リュイの顔に視線を移した。そこである変化に気付く。
「リュイ、あなた瞳の色が綺麗な金色になっているわよ」
「えっ!」
リュイの瞳は蜜のような金色に近い色から、澄んだ透明感のある綺麗な金色に変化していた。
「そういえば、レミナが持ってきた道具が光の属性を指していたけれど関係があるのかしら?」
「光ですか?」
「ねえ、リュイ。指先に魔力を集中させるようなイメージで光の玉を作ってみてくれない?」
そう言うと、リュイはふうっと息を吐き目を閉じた。指の先には、前に見た時よりも数倍は大きな光の玉がフワフワと浮いている。
「リュイ、目を開けてみて」
ゆっくりと目を開けたリュイは、その光の玉を見て驚いたように口を開けていた。
「サラ、この光の玉大きくないですか!?」
「眠っている間に、魔力が増えたのは本当だったのね」
「わあ、凄い! それに消えませんよ!」
リュイはキラキラとした笑顔で、フワフワと指先に浮かぶ光の玉を見て興奮した様子で色々と話している。
私はその光景を見ながら、レミナに報告しなければと考えながらリュイが目覚めた喜びを噛みしめていた。
「リュイ、私はレミナに手紙を書いてくるわ」
「はい。分かりました」
「手紙を書いたら戻ってくるから、起きていてね?」
ドアのほうに移動しながらそう言うと、リュイは私が部屋から出ていくまでこちらに笑いかけながら手を振っていた。
「リュイ君いますかー?」
「こんにちは。リュイは今日は疲れて寝ているの」
「えーそうなの?」
子供たちに不安を感じさせないため、本当のことは伝えなかった。
「また今度、リュイと遊んでくれると嬉しいわ」
「分かった! また誘いに来るね! じゃあね、サラさん」
そう言って子供たちは、手を振りながら敷地の外に出ていった。リュイはこの村の子たちとも打ち解けて仲良くなっているようだった。
一度リュイの様子を見に、部屋に入るが状況は変わっていなかった。中央魔法局から依頼された魔法薬も作らなければならないので、一旦作業場に戻る。魔法薬を届ける期限も迫っていたので、私は急いで薬を調合した。
「リュイ? 今日も起きないの?」
夜になり、眠る前に部屋を訪れたが返事はなかった。リュイの部屋の明かりを消し、私は自分の部屋に戻る。
その一日の流れを十日ほど繰り返した。花の季節も終わりに近づき、空気がだんだんと次の季節に変わってくる。
途中、レミナは何度か様子を見に来てくれた。私は昨日の会話を思い出す。
「サラ、そろそろリュイは目覚めるかもしれないわ」
「分かるの?」
「この道具の中の一つに、反応が出ているから可能性はあるかもしれないわね」
「ならいいんだけれど……」
そろそろとはいつだろうか。私はリュイが図書館から借りてきた本を手に取り、椅子に腰かけて、パラパラとページを捲った。
本の中身を読み終え、空気でも入れ変えようかとカーテンに手をかけ窓も開ける。ふわりと風が部屋の中に入り、暖かな光は壁を照らした。
部屋の中に入った風がリュイの髪をフワフワと揺らす。その様子を見ているとリュイが少し体を動かす音が聞こえ、リュイの手が自身の目をこすっていた。
「リュイ!」
私の声にピクリと反応し、リュイはゆっくりと体を起こし大きなあくびをしながら腕を伸ばす。
「サラ、どうしたんですか? なんで部屋に……」
そう言葉を零すリュイに私は抱き着いた。
「リュイ! 良かった……もう何日も寝ていたのよ?」
「ええっ!サラ、どうしたんですか!?」
リュイは驚いたような声を上げ、慌てた様子で私の肩に手を置いた。
「えっと、サラ……僕そんなに寝ていたんですか?」
「十日は寝ていたわよ?」
「十日!? 一体どうして……」
私はリュイから身体を離し、リュイの顔に視線を移した。そこである変化に気付く。
「リュイ、あなた瞳の色が綺麗な金色になっているわよ」
「えっ!」
リュイの瞳は蜜のような金色に近い色から、澄んだ透明感のある綺麗な金色に変化していた。
「そういえば、レミナが持ってきた道具が光の属性を指していたけれど関係があるのかしら?」
「光ですか?」
「ねえ、リュイ。指先に魔力を集中させるようなイメージで光の玉を作ってみてくれない?」
そう言うと、リュイはふうっと息を吐き目を閉じた。指の先には、前に見た時よりも数倍は大きな光の玉がフワフワと浮いている。
「リュイ、目を開けてみて」
ゆっくりと目を開けたリュイは、その光の玉を見て驚いたように口を開けていた。
「サラ、この光の玉大きくないですか!?」
「眠っている間に、魔力が増えたのは本当だったのね」
「わあ、凄い! それに消えませんよ!」
リュイはキラキラとした笑顔で、フワフワと指先に浮かぶ光の玉を見て興奮した様子で色々と話している。
私はその光景を見ながら、レミナに報告しなければと考えながらリュイが目覚めた喜びを噛みしめていた。
「リュイ、私はレミナに手紙を書いてくるわ」
「はい。分かりました」
「手紙を書いたら戻ってくるから、起きていてね?」
ドアのほうに移動しながらそう言うと、リュイは私が部屋から出ていくまでこちらに笑いかけながら手を振っていた。
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