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身体に刻印した《魔文字》の効果によって魔力コントロールができるようになったお蔭で魔法を扱うことはできたものの、それでも普通の魔法使いと比べてもそれほど違いはなかった。
魔力量だけは誰よりも膨大という優位はあったものの、それでも魔法の威力や扱い方を取って見れば普通としか言いようがなかったのである。
この状態から一流、いや、超一流と呼べる魔法使いになるには、相応の修練が必要になる。しかしそれなら元々存在する超一流の魔法使いを仲間にすればいいだけ。
日門だから必要というわけではない。正直いうならば、日門を育てるよりも、一流の魔法使いを育てた方が効率が良いのだ。
それを理解していたからこそ、マクスは日門にある技術を施すことにしたのである。
それは――《呪文拳》と呼ばれる拳技。
マクスが自身で編み出した唯一無二の格闘術である。
彼は確かに研究者であるが、その一方で闘士でもあった。何せ生き抜く強さが求められるこの恐ろしい環境に住んでいるのだから、彼もまた一般人とは隔絶した力を有しているのは当然である。
マクスは普通を嫌い、常に進化を求めた。
魔法使いのように普通に魔法を放つだけという現実に我慢できずに、彼は己を鍛えた結果――魔法と武術を組み合わせた《呪文拳》を開発したのである。
そしてそれを日門に継承させたのだ。
ただ日門自身、武術の心得などなかったため、最初は超一流の魔法使いになるよりも時間がかかるのではと心配していた。
しかしこれには日門も驚いたことだが、武術の特訓をしていると妙に自分にしっくりくるものを感じたのである。
どうやら日門も知らなかった武の才が、自分の身体に眠っていたことを、その時初めて実感したのだ。
マクスは最初から日門の武の才を見抜いていたらしく、だからこそ継承者として選んだと彼は言った。
そこから乾いたスポンジが水を吸収するかのごとく、物凄いスピードで次々と武術を体得していった日門。
そして半年が過ぎた頃には、魔法と武術を融合させた《呪文拳》を形にし、相応の強さを得ることに成功していた。
だがそれだけではまだ超一流には届かない。確かに《呪文拳》は強力だが、勇者たちと肩を並べるには頼りない印象を拭えなかったのである。
マクスも信じられない速度で強くなる日門の焦りを感じ取ってはいたが、彼の頭脳を持っていてもそれ以上の速度で得られる強さには限界があることを知っていたので、あとは時間をかけるしかないと口にする。
それでも日門は、まだ他に方法はあるかもと模索し、そしてその日、日門はついに見つけてしまった。
マクスに見て欲しいと言い、彼の前で日門は自分の腕にナイフをあてがい、そのまま切り付けたのである。当然マクスは驚くが、次の瞬間、彼は文字通り言葉を失った。
何せ日門の腕の傷が、瞬く間に塞がっていくのだから。
『こ、これは……!?』
圧倒的な頭脳の持ち主でも、すぐには理解できない現象。対して日門は、自身で編み出した技術が師を驚愕させたことでどこか誇らしげだった。
だからもっと驚かせてやろうと、今度は魔法の刃を使い左腕を切断したのである。もうこの時点で日門の人格は多少の狂いを見せていたが、あらゆる激痛に耐えてきた日門にとっては何てことの無い痛みだったのも確かだった。
奇行としか思えないその行為に、当然マクスは怒鳴り声を上げるが、その声もすぐに収まることになる。何せ切断した部位が再生したのだ。たった数秒ほどで。
またもや言葉を失って立ち尽くすマクスを見て得意げになる日門だが、ここで日門にとって予想外なことが起きる。
突然日門の身体が淡く発光したと思ったら、身体が縮み始めてしまい、結果的に六歳くらいの体躯になったのだ。
これには先ほどまで胸を張っていた日門も絶句するしかなかった。
この技術を編み出した時は、こんな現象は起きなかったので戸惑いを越えて大パニックに陥った。
マクスの一喝により我に返った日門は、二人でその現象についての解明を始めることにしたのである。
そうしてこの現象についていろいろ判明した。
まずこの現象を《子供化》と名付けることになった。見たままの名付けだが、分かりやすいとのことで確定する。
日門はこの治癒……いや、再生能力がどのように作用されているか説明し、マクスが噛み砕いて解明した。
この力は、一種の《魔核暴走《オーバーヒート》》と呼ばれる現象を利用してのもの。
《魔核》から瞬時にして大量の魔力を捻出し、さらに強烈に練って高質化する。それを身体全体に巡らせることで、身体が持つ本来の再生能力を究極までに引き上げるのだ。
ただし擦り傷程度ならば再生力も大したことはないが、これが部位欠損以上の傷を一瞬で再生するとなると、そこには相応の負荷が生まれることになる。
つまり再生の代償、いわゆる副作用として身体が小型化するということ。そうすることで暴走した《魔核》の休息を行っているわけだ。端的にいえば省エネモードになり、負荷でダメージを負った《魔核》を治療しているらしい。
当然その間は魔法は使えない。いや、無理して使うこともできるが、そんなことをすれば《魔核》がさらにダメージを受けて壊れかねない。そうなれば命にも関わるし、助かっても二度と魔法は使えないだろう。
そんなリスクがあったことに日門も最初はガックリとしたが、それでも扱い方次第では十分な強みになるとマクスからお墨付きをもらったのでホッとした。
何せ致命傷を受けたとしても、すぐに再生できるのだから、敵にしてみればこれほど厄介な存在はいないだろう。
傷を、死を恐れない存在というのは、敵にとっては脅威であり味方にとっては最高の武器となる。
しかしながらリスクがあるのもまた事実。だからこそこの技術の幅を細部まで見極める必要があった。
どこからどこまでが許容範囲なのか、あるいは子供になったらどれだけの時間で戻るのかなど、確かめなければいけないことは多かった。
ただ、この力があったお蔭で修練もより濃い密度で行うことができ、さらに強さを得ることができた日門は、瞬く間に様々な壁を乗り越えていき結果、一つの世界を救う存在となったのである。
そしてこの技術のことを日門はこう名付けた。
――《外道再生》と。
魔力量だけは誰よりも膨大という優位はあったものの、それでも魔法の威力や扱い方を取って見れば普通としか言いようがなかったのである。
この状態から一流、いや、超一流と呼べる魔法使いになるには、相応の修練が必要になる。しかしそれなら元々存在する超一流の魔法使いを仲間にすればいいだけ。
日門だから必要というわけではない。正直いうならば、日門を育てるよりも、一流の魔法使いを育てた方が効率が良いのだ。
それを理解していたからこそ、マクスは日門にある技術を施すことにしたのである。
それは――《呪文拳》と呼ばれる拳技。
マクスが自身で編み出した唯一無二の格闘術である。
彼は確かに研究者であるが、その一方で闘士でもあった。何せ生き抜く強さが求められるこの恐ろしい環境に住んでいるのだから、彼もまた一般人とは隔絶した力を有しているのは当然である。
マクスは普通を嫌い、常に進化を求めた。
魔法使いのように普通に魔法を放つだけという現実に我慢できずに、彼は己を鍛えた結果――魔法と武術を組み合わせた《呪文拳》を開発したのである。
そしてそれを日門に継承させたのだ。
ただ日門自身、武術の心得などなかったため、最初は超一流の魔法使いになるよりも時間がかかるのではと心配していた。
しかしこれには日門も驚いたことだが、武術の特訓をしていると妙に自分にしっくりくるものを感じたのである。
どうやら日門も知らなかった武の才が、自分の身体に眠っていたことを、その時初めて実感したのだ。
マクスは最初から日門の武の才を見抜いていたらしく、だからこそ継承者として選んだと彼は言った。
そこから乾いたスポンジが水を吸収するかのごとく、物凄いスピードで次々と武術を体得していった日門。
そして半年が過ぎた頃には、魔法と武術を融合させた《呪文拳》を形にし、相応の強さを得ることに成功していた。
だがそれだけではまだ超一流には届かない。確かに《呪文拳》は強力だが、勇者たちと肩を並べるには頼りない印象を拭えなかったのである。
マクスも信じられない速度で強くなる日門の焦りを感じ取ってはいたが、彼の頭脳を持っていてもそれ以上の速度で得られる強さには限界があることを知っていたので、あとは時間をかけるしかないと口にする。
それでも日門は、まだ他に方法はあるかもと模索し、そしてその日、日門はついに見つけてしまった。
マクスに見て欲しいと言い、彼の前で日門は自分の腕にナイフをあてがい、そのまま切り付けたのである。当然マクスは驚くが、次の瞬間、彼は文字通り言葉を失った。
何せ日門の腕の傷が、瞬く間に塞がっていくのだから。
『こ、これは……!?』
圧倒的な頭脳の持ち主でも、すぐには理解できない現象。対して日門は、自身で編み出した技術が師を驚愕させたことでどこか誇らしげだった。
だからもっと驚かせてやろうと、今度は魔法の刃を使い左腕を切断したのである。もうこの時点で日門の人格は多少の狂いを見せていたが、あらゆる激痛に耐えてきた日門にとっては何てことの無い痛みだったのも確かだった。
奇行としか思えないその行為に、当然マクスは怒鳴り声を上げるが、その声もすぐに収まることになる。何せ切断した部位が再生したのだ。たった数秒ほどで。
またもや言葉を失って立ち尽くすマクスを見て得意げになる日門だが、ここで日門にとって予想外なことが起きる。
突然日門の身体が淡く発光したと思ったら、身体が縮み始めてしまい、結果的に六歳くらいの体躯になったのだ。
これには先ほどまで胸を張っていた日門も絶句するしかなかった。
この技術を編み出した時は、こんな現象は起きなかったので戸惑いを越えて大パニックに陥った。
マクスの一喝により我に返った日門は、二人でその現象についての解明を始めることにしたのである。
そうしてこの現象についていろいろ判明した。
まずこの現象を《子供化》と名付けることになった。見たままの名付けだが、分かりやすいとのことで確定する。
日門はこの治癒……いや、再生能力がどのように作用されているか説明し、マクスが噛み砕いて解明した。
この力は、一種の《魔核暴走《オーバーヒート》》と呼ばれる現象を利用してのもの。
《魔核》から瞬時にして大量の魔力を捻出し、さらに強烈に練って高質化する。それを身体全体に巡らせることで、身体が持つ本来の再生能力を究極までに引き上げるのだ。
ただし擦り傷程度ならば再生力も大したことはないが、これが部位欠損以上の傷を一瞬で再生するとなると、そこには相応の負荷が生まれることになる。
つまり再生の代償、いわゆる副作用として身体が小型化するということ。そうすることで暴走した《魔核》の休息を行っているわけだ。端的にいえば省エネモードになり、負荷でダメージを負った《魔核》を治療しているらしい。
当然その間は魔法は使えない。いや、無理して使うこともできるが、そんなことをすれば《魔核》がさらにダメージを受けて壊れかねない。そうなれば命にも関わるし、助かっても二度と魔法は使えないだろう。
そんなリスクがあったことに日門も最初はガックリとしたが、それでも扱い方次第では十分な強みになるとマクスからお墨付きをもらったのでホッとした。
何せ致命傷を受けたとしても、すぐに再生できるのだから、敵にしてみればこれほど厄介な存在はいないだろう。
傷を、死を恐れない存在というのは、敵にとっては脅威であり味方にとっては最高の武器となる。
しかしながらリスクがあるのもまた事実。だからこそこの技術の幅を細部まで見極める必要があった。
どこからどこまでが許容範囲なのか、あるいは子供になったらどれだけの時間で戻るのかなど、確かめなければいけないことは多かった。
ただ、この力があったお蔭で修練もより濃い密度で行うことができ、さらに強さを得ることができた日門は、瞬く間に様々な壁を乗り越えていき結果、一つの世界を救う存在となったのである。
そしてこの技術のことを日門はこう名付けた。
――《外道再生》と。
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