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第百六話 妖精さんの頼み
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見た目は藤色の髪をツインテールにした可愛らしい子だ。また三人と比べて少し大きい。それに羽の数も二枚多いことから、彼女が妖精さんの中でも上位に位置する子だということが分かる。
妖精さんは生まれつき二枚の羽を持っているが、四枚、六枚と、成長度合いで変わって行く。また羽の数は、そのまま所持している力の強さにも比例する。この子は四枚で、三人よりも強い妖精さんということが一目で分かった。
「これはこれは、おなかまさんなのですぅ!」
「まあまあ、ではまずごあいさつをしなければなりませんよねぇ」
「うむ! わたしたちはヨウセイだ! ヒダリからイチゴウ、ニゴウ、サンゴウ! よろしくな!」
最初の二人はともかく、最後の挨拶はどうだろうか。妖精さんに対し、自分たちも妖精だといちいち紹介する必要があったのか。それに一号、二号、三号? 初めて聞いたんだけど。
「えと……ア、アタシも妖精よ! ていうか何でこんなとこにいるのよ? ここらへんの子らじゃないでしょ? それにアンタ……人間、よね?」
「まあな。俺はアオスだ」
「アオスさんはすっごいヒトなのです! ドウシなのですよ! ドウシ!」
「ええそう、なにをかくそうわたしたちのだんなさまでもあって……うふふ」
「わたしたちをみちびき、そして…………とにかくドウシってやつだ!」
今度は二人目から順におかしかったな。
いつ彼女たちの旦那様になったのだろうか? それに最後の子は、何かもっとカッコ良いことを言いたかったが思いつかなかった感が半端ない。
「ドウ……シ? ドウシってもしかしてあの『導師』のこと!? 噓っ、もうそんな時期なの!?」
信じられないといった面持ちで俺を見つめてくる藤色髪の妖精さん。
「そっか……それじゃお婆様が言ってた通り、女王様はもう目覚めたのね……」
ブツブツと思案顔で呟いているが、突然地面がグラグラと揺らぎ始めたので身構える。
地震は十秒ほどで収まったが……。
「ったく、こっちもこっちで忙しいわね、もう!」
墓場跡の方を見ながら口を尖らせる藤色髪の妖精さん。そんな彼女が俺の方をジッと見つめてくる。
「……何だい?」
「一つどうしても頼みたいことがあるのよ」
「頼み?」
「アンタが本当に『導師』っていうなら力を貸してほしいの」
「別に構わないぞ」
「まあいきなりこんなこと言われて納得できるわけが……って、いいの!?」
「ああ、何でも言ってくれ。俺にできることなら手を貸そう」
「…………怪しく思わないわけ? 初めて会ったアタシなんかにいきなり頼まれてさ」
「君が妖精っていうことで、信用するには十分だよ」
「アンタ……」
もしこれが人間相手なら、無論即決で返事をするようなことはしない。ある程度、どんな人物か見極めてからじゃないと動かないだろう。
しかし妖精さんの頼みというなら、俺に是非なんてない。ただ彼女たちのために尽くすだけだ。
「……アタシはリモコよ」
「さっきも言ったがアオスだ。それでリモコ、手を貸すって……ケガレに関することでいいんだな?」
「!? ……そうよ。アンタにもさっき見えてたでしょ? あの黒い煙みたいなの。アレがケガレって呼ばれるもので――」
「あー大丈夫。ケガレと対峙するのは初めてじゃないから。それにもうケガレモノとも戦闘経験がある」
「そうなの!? ……これは思った以上にタイミングが良かったみたいね。なら話は早いわ。ここの墓場の下にはね、大量のケガレが埋まってるの」
「埋まってる?」
「うん。長い年月をかけて集束していき、とうとう外に漏れ出すくらいになっちゃったみたいなのよ。ケガレモノになるのも時間の問題だわ」
「つまりそいつを何とかしてほしいってことだな? あの外に漏れ出しているケガレを排除すればいいのか?」
今も墓場跡から天へと立ち昇っている。
「いいえ……ケガレは根元から絶たないとダメなのよ。今見えているケガレをいくら浄化したところで、すぐにまた生まれてくるから」
「根元……ってことは、まさか……」
「そう、ここを掘り返す必要があるわね」
「……そんな罰当たりなことをしていいのか? 何だかかえってケガレが強くなりそうだが」
埋葬された先人たちが怒って、さらにケガレが膨らむような気がしてならない。そうでなくとも墓を暴くというのは、さすがに気が引けてしまう。
「仕方ないでしょ。このまま放置なんてできないんだから。アタシもここを見つけてから、ずっと何とかしようと力ずくで抑えてきたけど、もう限界が近かったの。そのせいで漏れ出したケガレに当てられて、この近くを通った人間たちにも被害が出たみたいだし」
「! ……なるほど。今も眠り続けてる被害者は、その身にケガレを受けたってことか」
確かに耐性のない一般人が、こんな醜悪なエネルギーを浴びてしまえば一溜まりもないだろう。
まだリモコが抑えていたから命は繋がっているが、もし彼女がいなかったら、即死しているかケガレモノになっているかどっちかだとリモコは言う。
「でも掘り起こすって言ったって、ここら一帯となると結構大変だな……」
ここは《万物操転》を使って早々に対処しようと思った矢先のことだ。
再び地震が起き、今度はさっきよりも格段に大きいものだ。とても立っていられないほどに。
「気を付けなさい! この地震はケガレが起こしているものよ! それにこの大きさ。マズイわ! もうこれは前兆かもしれない!」
前兆……?
そして地面に亀裂が走り始め、あろうことか足場が墓場跡もろとも崩れ落ちてしまった。
妖精さんは生まれつき二枚の羽を持っているが、四枚、六枚と、成長度合いで変わって行く。また羽の数は、そのまま所持している力の強さにも比例する。この子は四枚で、三人よりも強い妖精さんということが一目で分かった。
「これはこれは、おなかまさんなのですぅ!」
「まあまあ、ではまずごあいさつをしなければなりませんよねぇ」
「うむ! わたしたちはヨウセイだ! ヒダリからイチゴウ、ニゴウ、サンゴウ! よろしくな!」
最初の二人はともかく、最後の挨拶はどうだろうか。妖精さんに対し、自分たちも妖精だといちいち紹介する必要があったのか。それに一号、二号、三号? 初めて聞いたんだけど。
「えと……ア、アタシも妖精よ! ていうか何でこんなとこにいるのよ? ここらへんの子らじゃないでしょ? それにアンタ……人間、よね?」
「まあな。俺はアオスだ」
「アオスさんはすっごいヒトなのです! ドウシなのですよ! ドウシ!」
「ええそう、なにをかくそうわたしたちのだんなさまでもあって……うふふ」
「わたしたちをみちびき、そして…………とにかくドウシってやつだ!」
今度は二人目から順におかしかったな。
いつ彼女たちの旦那様になったのだろうか? それに最後の子は、何かもっとカッコ良いことを言いたかったが思いつかなかった感が半端ない。
「ドウ……シ? ドウシってもしかしてあの『導師』のこと!? 噓っ、もうそんな時期なの!?」
信じられないといった面持ちで俺を見つめてくる藤色髪の妖精さん。
「そっか……それじゃお婆様が言ってた通り、女王様はもう目覚めたのね……」
ブツブツと思案顔で呟いているが、突然地面がグラグラと揺らぎ始めたので身構える。
地震は十秒ほどで収まったが……。
「ったく、こっちもこっちで忙しいわね、もう!」
墓場跡の方を見ながら口を尖らせる藤色髪の妖精さん。そんな彼女が俺の方をジッと見つめてくる。
「……何だい?」
「一つどうしても頼みたいことがあるのよ」
「頼み?」
「アンタが本当に『導師』っていうなら力を貸してほしいの」
「別に構わないぞ」
「まあいきなりこんなこと言われて納得できるわけが……って、いいの!?」
「ああ、何でも言ってくれ。俺にできることなら手を貸そう」
「…………怪しく思わないわけ? 初めて会ったアタシなんかにいきなり頼まれてさ」
「君が妖精っていうことで、信用するには十分だよ」
「アンタ……」
もしこれが人間相手なら、無論即決で返事をするようなことはしない。ある程度、どんな人物か見極めてからじゃないと動かないだろう。
しかし妖精さんの頼みというなら、俺に是非なんてない。ただ彼女たちのために尽くすだけだ。
「……アタシはリモコよ」
「さっきも言ったがアオスだ。それでリモコ、手を貸すって……ケガレに関することでいいんだな?」
「!? ……そうよ。アンタにもさっき見えてたでしょ? あの黒い煙みたいなの。アレがケガレって呼ばれるもので――」
「あー大丈夫。ケガレと対峙するのは初めてじゃないから。それにもうケガレモノとも戦闘経験がある」
「そうなの!? ……これは思った以上にタイミングが良かったみたいね。なら話は早いわ。ここの墓場の下にはね、大量のケガレが埋まってるの」
「埋まってる?」
「うん。長い年月をかけて集束していき、とうとう外に漏れ出すくらいになっちゃったみたいなのよ。ケガレモノになるのも時間の問題だわ」
「つまりそいつを何とかしてほしいってことだな? あの外に漏れ出しているケガレを排除すればいいのか?」
今も墓場跡から天へと立ち昇っている。
「いいえ……ケガレは根元から絶たないとダメなのよ。今見えているケガレをいくら浄化したところで、すぐにまた生まれてくるから」
「根元……ってことは、まさか……」
「そう、ここを掘り返す必要があるわね」
「……そんな罰当たりなことをしていいのか? 何だかかえってケガレが強くなりそうだが」
埋葬された先人たちが怒って、さらにケガレが膨らむような気がしてならない。そうでなくとも墓を暴くというのは、さすがに気が引けてしまう。
「仕方ないでしょ。このまま放置なんてできないんだから。アタシもここを見つけてから、ずっと何とかしようと力ずくで抑えてきたけど、もう限界が近かったの。そのせいで漏れ出したケガレに当てられて、この近くを通った人間たちにも被害が出たみたいだし」
「! ……なるほど。今も眠り続けてる被害者は、その身にケガレを受けたってことか」
確かに耐性のない一般人が、こんな醜悪なエネルギーを浴びてしまえば一溜まりもないだろう。
まだリモコが抑えていたから命は繋がっているが、もし彼女がいなかったら、即死しているかケガレモノになっているかどっちかだとリモコは言う。
「でも掘り起こすって言ったって、ここら一帯となると結構大変だな……」
ここは《万物操転》を使って早々に対処しようと思った矢先のことだ。
再び地震が起き、今度はさっきよりも格段に大きいものだ。とても立っていられないほどに。
「気を付けなさい! この地震はケガレが起こしているものよ! それにこの大きさ。マズイわ! もうこれは前兆かもしれない!」
前兆……?
そして地面に亀裂が走り始め、あろうことか足場が墓場跡もろとも崩れ落ちてしまった。
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