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しおりを挟むあれから平穏な日々を送っている。元婚約者も絡んで来なくなり、愛しい人と仲良くしている。なぜか私に哀れみの視線を向けてくる人がいるけど気にしない。
癒やしの場ももうそろそろ卒業しないとね。
「今度初顔合わせをする事になった」
「おめでとうございます」
「まだ婚約者になれるかは分からないが」
「顔合わせをするなら婚約者になると言う事なのでは?」
「いや、父上が今度は俺の意見も尊重してくれるらしい。前が前だったからな」
「それは良かったですね」
「ああ。顔合わせをしてお互い好印象を持ったら婚約するらしい」
「それなら好印象を持てなかったら婚約はしないんですか?」
「そうなるな」
「良い方だと良いですね」
「そればかりは分からないな」
「ふふっ、そうですね。会ってみないと分かりませんよね」
「ああ。だがお前と話していて女性の気持ちも少しは理解できた。少しはだが」
「これからですよ?婚約者さんと育むものです。女性だって人それぞれですから。男性だって人それぞれですよね?
二人で少しずつ育んでいけば良いんです。他の婚約者の人達でもそれぞれですから」
「そうだな、そうするよ。今迄ありがとな」
「こちらこそありがとうございます。楽しい時間が過ごせました」
「いや、俺の方こそ楽しかった」
きっと黄昏さんは婚約者さんと上手くいく。もう外を眺める事も、こうして私と話す事ももう無い。
少し寂しいけど、それでも黄昏さんの幸せを願っている。
学園が休みの日、
「父様の一生のお願いだ」
「嫌です」
「アイラ、父様を助けると思って、な?」
「要件だけは聞きます」
「本当か?父様が学生時代にとてもお世話になった人がいるんだが、その人の息子に一回だけで良い、会ってくれないか?」
「はい?」
「独学で語学を勉強するには限界がある。その時助けてくれた大恩人なんだ。その人のおかげで今の父様があり、商会になった。大恩人の頼みなんだ、断る事なんて出来ないだろ?」
「まあそうですね。恩を仇で返すのは人として駄目です。商売人としても駄目です」
「だろ?一回だけで良い。父様を助けると思って息子さんと会ってくれないか」
「分かりました。会うだけですよ?」
「ああ、会うだけで良い。なら早速行こうか」
「今からですか?」
「アイラの気が変わらないうちに行かないとな」
「お父様、初めから今日会う事になっていましたね?」
「そ、そ、そんな事はないぞ!」
「はぁぁ、着替えてきます」
「そのままでも可愛いぞ?」
「お父様、身だしなみ、です!」
「そ、そうだな」
私はワンピースからドレスに着替えた。流石に誰か分からないけどお父様の大恩人に会うのにワンピースではね…。
髪も簡単に結ってもらい、
「お父様お待たせしました。準備ができました」
「なら早速行こうか」
馬車に揺られ数十分、
「これはこれは可愛いお嬢さんだ。息子もきっと気にいるよ」
「お初にお目にかかります。アイラと申します」
「少し待っててくれるか。今息子を呼んでくる」
お父様の大恩人のご当主様が執事に伝え執事が出て行った。
「分かる事だから先に言うが息子には前に婚約者がいたんだ」
「それなら娘にも前に婚約者がいました」
「そうか、息子には幸せになってほしいと思っていてもなかなかな…」
「分かります。私も娘には幸せになってほしいのですが、なかなか…」
なんかとてもいたたまれないのは何故かしら。分かるわよ?子の幸せを願う親心でしょ?
息子さんは知らないけど私は元婚約者と婚約破棄できて幸せだったわよ?
「今回は上手くいくと良いが…」
「そうですね。私も今回は上手くいってほしいと思います」
なに、この重圧…。
二人の視線が…、私を見ている。
いやいや、息子さんにも選ぶ権利があるのよ?勿論私にもね?
それを分かってますよね?お二人さん?
コンコン
「父上」
「入ってこい」
扉が開き、
「「あ!」」
同時に声をあげた。
「まだ名前を言ってなかったな、俺はオスカーだ」
「オスカー様、知っているとは思いますが私はアイラです」
完(つづく)
マシューとアイラの婚約破棄はここで終わりました。
明日からオスカーとアイラの婚約の物語が始まります。
何やら邪魔が入るようで…。
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