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今日も図書室へ来たら黄昏さんが先にいた。


「髪型変えたか?」

「いえ、昨日と一緒ですが」

「やっぱり分からん」

「今日は何があったんです?」

「教室で令嬢達がその髪型可愛いと言っていたんだが、俺にはどこが違うかさっぱり分からなかった。なんでも今日はクルクルに巻いてきただのなんだの、意味も分からなかった」

「フワフワしてませんでした?」

「大抵女性はフワフワしているだろ」

「まあ、確かに。きっとそのフワフワがいつもよりフワフワになっていたんですよ」

「俺には同じに見えたがな」

「それは毎日一緒にいるから気付いたって事もありますよ。それより急に女性の変化を気にするとはどうしたんです?」

「俺もいずれ婚約者が出来る。また同じ失敗を繰り返さない為にも今から直せる所は直そうかと思ったんだが、先は長いみたいだ」

「でもその心掛けは良いと思います。ですが見すぎると怪しい人になるので気をつけて下さいね」

「もう変な目で見られた」

「明日からは気をつけて下さい」

「分かってる」

「婚約者も出来ませんよ?」

「それは困る!俺は一人息子だ。お前は?」

「私は弟がいます」

「弟か、良いな。俺も弟がいたなら無理して結婚しなくても良いんだが」

「大変ですね。お互い今度は自分に合った婚約者と巡り会えたら良いですね」

「そうだな」


黄昏さんと話し、また明日と別れた。




朝、教室へ行くと、


「アイラ、マシュー様ついに猫ちゃんにポイされたって」

「それは可哀想ね、結婚したいと思っていたのに」

「いい気味よ」

「私にはもう関係ない人だから」

「そう言ってられないわよ?」

「なんで?」

「俺にはアイラしかいないって言ってるらしいわよ?」

「やめてよ」

「隣のクラスの子が言ってたもの」


こっちには念書もあるし大丈夫!


昼食になり食堂へ行こうと、


「アイラ、迎えに来たよ」

「はい?」

「一緒に食堂へ行こう」

「なぜです?」

「俺達は婚約者じゃないか」

「婚約破棄したはずですが」

「だから、また婚約者になってやるって。どうせまだ婚約者もいないんだろ?俺って優しいだろ?」

「家に帰ってもう一度念書を見て下さい」

「あれは前の婚約中の話でまた婚約するから無効になる」

「はい?」

「父上に頼んでまた婚約しよう。な?良い考えだと思わないか?」

「思いませんが」

「アイラは俺の事がまだ好きなんだろ?素直になれよ」

「好きじゃありません。どちらかと言えば嫌いです」

「皆の前だからって嘘つくなよ」

「嘘ついていませんが」

「まぁ、いいや」

「よくありません」

「アイラ、一緒に昼食食べようか」

「私は友達と食べるので」

「なら俺も一緒に食べてやるよ」

「だ!か!ら!私は友達と二人で!食べたいの!」

「アイラ、俺そっちのアイラの方が良い!前のアイラってつまらなかったんだよな。何でも俺の言う事を聞いてさ。言い返してくるかな?と思っても言い返してこないし、つまんない女!って思ってたんだよな」

「そうですか。私は友達と食べますから。レミー行きましょ」


私はレミーと食堂に向かった。


「ちょ、ちょっとアイラ、付いてくるけど」

「気にしたら負けよ」


私はレミーと席に着いて食べ始めた。


「アイラ、見てるわよ」

「知ってる。気にしたら負けよ!」


私の席の後ろに座りこっちを見ているマシュー様の視線が背中越しでも分かる。

周りではコソコソと皆が話しているし。明日には噂話が出回るわね…。

もう!本当にイヤ!

男爵令嬢はどうしたのよ!ポイされても追っかけなさいよ!好きなんでしょ?愛してるんでしょ?結婚したいんでしょ?


後ろ振り向く気はないけど、後ろからの視線って背中がゾワゾワして気持ち悪いわね…。


「アイラどうするの?」

「どうするもこうするも、婚約破棄ってもう関係ない人になったって事でしょ?」

「普通わね」

「何のために念書を書いたと思ってるのよ。こうならない為によ?」

「ほら、そこは彼だから」


優しい?優しい人なら元婚約者に話しかけないわよ!


それからもマシュー様に付きまとわれもううんざり!迷惑料でも請求しようかしら!

もう顔を見るのもイヤ!

なのに、


「アイラ~」


と、遠くにいても声をかけてきて手を振ってくる。

勿論無視するけど。

どうしたらあんなふうになるのか、マシュー様の頭の中を覗いてみたいわ!




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