私は旦那様にとって…

アズやっこ

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朝、目が覚めるとローガン様は私の寝顔を見ていた。


「ジニア今日は二人だけで街へ行かないか?」

「ええ、刺繍糸を買いたいと思っていたの」


ローガン様は復縁してから度々お出かけに誘ってくれる。

復縁して10年、前の時には出来なかった一緒にお出かけや、庭の散歩、ローガン様は育児にも積極的に協力してくれる。ジェイクがまだ幼児の頃、夜中にジェイクが泣いて泣き止まなかった時には邸の中を歩いて庭を歩いて抱っこしたままソファーで寝ていた。


刺繍の柄がお揃いの服を着て玄関へ向かう。


「父様と母様だけずるいです」

「夫婦の時間も大切だ。愛しい人と一緒に過ごしたい、出かけたい、そう思う事が変か?」

「出かけるなら僕もと思っただけです」

「なら明日、ジェイクも一緒に出かけよう」

「それなら良いです。明日は絶対に3人で出かけましょうね」

「ああ、約束だ。明日はジェイクの行きたい所に行こう」


馬車に乗り街へ向かった。馬車の中ではローガン様の膝の上に座っている。


ジェイクももう10歳。数年前までは私の膝によく座っていた。


「かあさま、どうしてかあさまはとうさまのおひざにすわるの?」

「そうね、今ジェイクも母様の膝の上に座ってるでしょ?自分が愛しいと思う人を膝の上に座らせるとこうしてくっつくでしょ?そうするとその人の体温を近くに感じて幸せって思うの。愛しいって思うとギュッとしたくなるの」

「ぼくもかあさまにぎゅっとされるとうれしい。もっとしてっておもう。これがしあわせ?」

「そうね、母様は幸せよ?ジェイクを愛しい、可愛い、大好き、愛してる、そう思うわ。そしてその思いがジェイクに伝われば良いと思って抱きしめてるわ」

「ぼくね、かあさまやとうさまにぎゅっとされるとぽかぽかするの」

「膝に座ると心が休まる、体を預け甘える、母様はとても幸せな時間だと思うの」

「そうだぞ」


部屋に入って来たローガン様は私とジェイクを膝の上に座らせた。


「聞いていたの?」

「聞こえたんだ」


ローガン様は私とジェイクを後ろから抱きしめた。


「ジェイク、ジェイクが大きくなったら好きな人が出来るかもしれない。手を繋ぎ膝の上に座らせるのは好きな人しかしたら駄目なんだ。膝の上は特別な人だけの場所なんだ」

「とくべつ?」

「ジェイクが好きになった人、結婚したらジェイクの奥さんになる人の特別な場所なんだ。特別な人以外は座れない特別な場所だ」

「かあさまのおひざもとくべつ?」

「ああ、父様も母様も好きな人しか座らせない。ジェイクが大好きだからジェイクは父様の膝にも母様の膝にも座れる特別な人なんだ」

「ローガン様は勘違いしてましたけどね」

「それはすまない。だがそれを教えてくれたのはジニアだ。俺は怒られてばかりだな。だがそれでいい。怒り言いたい事を言う、それが夫婦だ」

「ええ」

「愛してるジニア、俺の奥さんは俺の特別な人だ」



復縁して10年、私達なりに夫婦になった。時に喧嘩して、言いたい事を言う。そうして少しずつ夫婦になっていった。

復縁した時に、お互い気持ちを伝える。言いたい事は我慢しない。夜寝る時は同じベッドで寝ると約束した。

喧嘩した時は端と端。それでもお互い約束は守ってる。


お母様は5年前お父様と離縁し今はローガン様が用意してくれた家でケニス家族と暮らしている。

お母様が子爵家を出る時、ケニスもお父様の愛人の子に爵位を譲り平民になった。今はローガン様の事業を手伝っている。

愛人の子が継いだ子爵家への支援はお母様が離縁し子爵家を出た時に打ち切った。お父様は文句を言いに伯爵家へ来た。

『ジニアが俺と結婚してまで護ったのは子爵家でも貴方でもない。義母上とケニスだ。俺は義母上とケニスを護る為に支援をしていただけだ。義母上とケニス家族の生活はこれからも俺が護る。護る人達がいない子爵家に支援する気は今後一切ない!』

納得のいかないお父様は度々来ては喚き散らす。その度にローガン様が対応した。




「ジニアどうした?」

「色々あったなと思って」

「そうだな」


ローガン様の膝の上、抱きしめられるローガン様の温もりに心が休まり体を預ける。


「夫婦をやり直して本当の夫婦に少しずつなってきたわ。私達なりだけど」

「ああ、俺達なりの夫婦の形でいいと思う。愛しい人がいて幸せだと感じる。側にいてくれる事に日々感謝し、喧嘩もするけどな。それでも以前より夫婦になったと実感する」

「傷付き辛く悲しい時もあった。それでも遠い遠いまわり道をしてそうして私達は夫婦になった」

「ああ、愛してるジニア、これからも俺の妻でいてほしい」

「私も愛してます。これからもローガン様の妻でいたいです」


ローガン様は後ろからギュッと抱きしめた。

ローガン様の顔が私の肩に乗った。私はローガン様の耳元で、


「まだ私を抱きたいと思います?」

「勿論だ。許してくれるならだが」

「私が許すのを待ってたら私はお婆ちゃんになっちゃうわよ?」

「そしたら俺は爺さんだ。それでもジニアの許しなしに抱こうとは思わない。こうして抱きしめるだけでも愛しさは積もる。幸せだと感じる。俺は幸せだ」

「私も幸せです」

「愛してるジニア、俺を幸せにしてくれてありがとう」

「私を幸せにしてくれてありがとうございます。愛してますローガン様」




              完結

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