10 / 55
10 お茶会終了
しおりを挟む目の前で真っ赤になって俯くフレディとロザンヌ様。
前の時、二人がきちんと会話をしたのはフランキーの婚約者に決まってから。その時私とフレディはもう婚約中だった。
フレディが心で誰を思おうがフレディは婚約者の私を婚約者として扱った。贈り物も貰ったしエスコートもしてくれた。二人の時間も作ってくれたし、勉強が終わると部屋まで迎えに来てくれた。
『グレース、疲れただろ。いつも頑張っているのは知ってるけど、たまには弱音を吐いてもいいんだぞ。グレースは頑張りすぎるから俺は心配なんだ』
お兄様が私の頭を撫でるようにフレディもいつも私の頭を撫でてくれた。
甘えは許されない。
第一王子の婚約者、いずれ王太子妃、王妃になるのに『出来ません』は許されない。出来ないなら出来るようになるまで努力する。フレディの婚約者に決まってから先生達の指導もより厳しくなった。
涙を流して何になるの?厳しい指導が優しくなるの?
『私は大丈夫よ。何とか上手くやってるわ』
いつもフランキーと競い合っていた私は私だけ甘えて頼るのは駄目だと思っていた。
でもきっとフレディは甘えて頼ってほしかった。婚約者として私を支えたかった。
でも私はそんなフレディの気持ちに気付かないで一人でやるんだと頑張るんだと、先にフレディを拒絶したのは私の方。
なんて可愛げない子だったのかしら。
もし、私がフレディに甘えて頼っていたら、フレディも私に妹以上の感情を持ってくれたかもしれない。
私にも今のような照れた顔を見せてくれたのかもしれない。
私は今までフレディの照れた顔を見た事がない。
だから少し複雑よ。
夫婦になり体を繋げても、私には見せなかった男の部分。照れた顔も、好きな子を見つめる熱い視線も、そわそわして落ち着きがない態度も、目が合って慌てて反らす視線も、私達の間には芽生えなかったもの。
「グレース?ぼぅっとしてどうした?」
私は首を横に振った。
「ねぇお兄様、二人ってお似合いよね。なんか羨ましくて目が離せなかったの」
これが恋する者達の姿。
「ん?」
私の視線の先にいるフレディとロザンヌ様をお兄様も見つめた。
「そうだな。いつかグレースにも現れるよ」
「そうね」
お兄様は私の頭を撫でた。
「でもまだグレースには早い。まだ俺の妹でいてほしい」
「そんな事を言ったらずっとお兄様の側から離れないわよ?」
「それは願ったり叶ったりだな。グレースは一生俺の側にいればいい」
私はお兄様と微笑み合った。
和やかにお茶会が終わりフランキーは一人一人と挨拶をし見送った。
お兄様とフレディは少しだけお茶会に参加しただけで途中で退席し伯母様のお茶会にも顔を出すって言っていた。
伯母様のお茶会も終わりお母様と一緒に部屋に帰って行った。後はお父様の仕事が終わるのを待って家に帰る。
フランキーはエスコートが気に入ったのか今もフランキーのエスコートで庭園を歩いている。
「楽しかったねフランキー」
「うん楽しかった」
「成功して良かったね」
「助けてくれてありがとうグレース」
「私は何も助けてないわよ。フランキーが頑張ったからよ?」
「でもグレースが側にいてくれたから頑張れたんだ」
「うん、フランキーは頑張ったわ。
ねぇフランキー、私も頑張ったわよね?」
「グレースも頑張ったよ。なんで?」
「頑張ったらご褒美が貰えるの。そう先生と約束したのよ」
「ご褒美?グレースは何が欲しいの?俺が贈ろうか?」
「フランキーが?どうして?」
「お礼だよ」
「ふふっ、でもフランキーにも贈れないものだから、気持ちだけ受け取るわね」
「何を貰うつもりなの?」
「聞きたい?」
「聞きたい、教えて?」
「時間よ」
「時間?」
「そう、何もしない時間。勉強もマナーも何もしなくていい時間。自分の好きなように過ごせる時間」
「グレースは何がしたいの?」
「何がって訳じゃないの。でも毎日勉強とマナーばっかりだと疲れちゃうでしょ?だからよ。
まだ私7歳よ?子供らしい遊びだってしたいわ」
「子供らしいって。でも分かるよ。
俺も第二王子なんだから、第一王子を支える為に、何度も聞かされて、でも言われなくても俺だって分かってるよ。兄上を支えたいって思ってるしその為の勉強もしないといけないのも分かってる。
でもさ、今日遊んで楽しかった。走り回って木登りして、すごく楽しかった…」
「そうよね。私も令嬢達との会話、楽しかった。皆おしゃれなのよ?リボンの話で盛り上がったの」
「リボン?」
「これよ」
私は頭に着けているリボンを指差した。
「いつも着けてるよね」
「可愛いでしょ?フリルが付いていたり色を楽しんだり、今日着けてるのは私のお気に入りなの。
でね、レースのリボンを着けてる子がいてね?とっても可愛いかったの。今度お父様にお願いしようと思ってるのよ」
「そっか」
「私達の子供らしい遊びってなんだろうね」
「そうだね」
絵本を読んだり走り回ったりは出来る。でも危ない木登りは騎士に止められる。
隠れんぼだって狭い空間でやるから隠れる所は決まってる。なら広い空間で、そうなると近くに騎士が立つから隠れている所が分かる。
今日も騎士達は近くにいたけど見守っていた。きっとフランキーが木登りした時なんてハラハラしていたと思うけどね。
でも楽しかったな…。
27
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
【完結】私がいる意味はあるのかな? ~三姉妹の中で本当にハズレなのは私~
紺青
恋愛
私、リリアンはスコールズ伯爵家の末っ子。美しく優秀な一番上の姉、優しくて賢い二番目の姉の次に生まれた。お姉さま二人はとっても優秀なのに、私はお母さまのお腹に賢さを置いて来てしまったのか、脳みそは空っぽだってお母様さまにいつも言われている。あなたの良さは可愛いその外見だけねって。
できる事とできない事の凸凹が大きい故に生きづらさを感じて、悩みながらも、無邪気に力強く成長していく少女の成長と恋の物語。
☆「私はいてもいなくても同じなのですね」のスピンオフ。ヒロインのマルティナの妹のリリアンのお話です。このお話だけでもわかるようになっています。
☆なろうに掲載している「私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~」の本編、番外編をもとに加筆、修正したものです。
☆一章にヒーローは登場しますが恋愛成分はゼロです。主に幼少期のリリアンの成長記。恋愛は二章からです。
※児童虐待表現(暴力、性的)がガッツリではないけど、ありますので苦手な方はお気をつけください。
※ざまぁ成分は少な目。因果応報程度です。
【完結】婚約を信じた結果が処刑でした。二度目はもう騙されません!
入魚ひえん
恋愛
伯爵家の跡継ぎとして養女になったリシェラ。それなのに義妹が生まれたからと冷遇を受け続け、成人した誕生日に追い出されることになった。
そのとき幼なじみの王子から婚約を申し込まれるが、彼に無実の罪を着せられて処刑されてしまう。
目覚めたリシェラは、なぜか三年前のあの誕生日に時間が巻き戻っていた。以前は騙されてしまったが、二度目は決して間違えない。
「しっかりお返ししますから!」
リシェラは順調に準備を進めると、隣国で暮らすために旅立つ。
予定が狂いだした義父や王子はリシェラを逃したことを後悔し、必死に追うが……。
一方、義妹が憧れる次期辺境伯セレイブは冷淡で有名だが、とある理由からリシェラを探し求めて伯爵領に滞在していた。
◇◇◇
設定はゆるあまです。完結しました。お気軽にどうぞ~。
◆第17回恋愛小説大賞◆奨励賞受賞◆
◆24/2/8◆HOT女性向けランキング3位◆
いつもありがとうございます!
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】 いいえ、あなたを愛した私が悪いのです
冬馬亮
恋愛
それは親切な申し出のつもりだった。
あなたを本当に愛していたから。
叶わぬ恋を嘆くあなたたちを助けてあげられると、そう信じていたから。
でも、余計なことだったみたい。
だって、私は殺されてしまったのですもの。
分かってるわ、あなたを愛してしまった私が悪いの。
だから、二度目の人生では、私はあなたを愛したりはしない。
あなたはどうか、あの人と幸せになって ---
※ R-18 は保険です。
【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~
Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。
その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。
そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた──
──はずだった。
目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた!
しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。
そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。
もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは?
その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー……
4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。
そして時戻りに隠された秘密とは……
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!
八代奏多
恋愛
侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。
両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。
そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。
そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。
すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。
そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。
それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。
恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。
※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる