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10 お茶会終了

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目の前で真っ赤になって俯くフレディとロザンヌ様。

前の時、二人がきちんと会話をしたのはフランキーの婚約者に決まってから。その時私とフレディはもう婚約中だった。

フレディが心で誰を思おうがフレディは婚約者の私を婚約者として扱った。贈り物も貰ったしエスコートもしてくれた。二人の時間も作ってくれたし、勉強が終わると部屋まで迎えに来てくれた。

『グレース、疲れただろ。いつも頑張っているのは知ってるけど、たまには弱音を吐いてもいいんだぞ。グレースは頑張りすぎるから俺は心配なんだ』

お兄様が私の頭を撫でるようにフレディもいつも私の頭を撫でてくれた。

甘えは許されない。

第一王子の婚約者、いずれ王太子妃、王妃になるのに『出来ません』は許されない。出来ないなら出来るようになるまで努力する。フレディの婚約者に決まってから先生達の指導もより厳しくなった。

涙を流して何になるの?厳しい指導が優しくなるの?

『私は大丈夫よ。何とか上手くやってるわ』

いつもフランキーと競い合っていた私は私だけ甘えて頼るのは駄目だと思っていた。

でもきっとフレディは甘えて頼ってほしかった。婚約者として私を支えたかった。

でも私はそんなフレディの気持ちに気付かないで一人でやるんだと頑張るんだと、先にフレディを拒絶したのは私の方。

なんて可愛げない子だったのかしら。

もし、私がフレディに甘えて頼っていたら、フレディも私に妹以上の感情を持ってくれたかもしれない。

私にも今のような照れた顔を見せてくれたのかもしれない。

私は今までフレディの照れた顔を見た事がない。

だから少し複雑よ。

夫婦になり体を繋げても、私には見せなかった男の部分。照れた顔も、好きな子を見つめる熱い視線も、そわそわして落ち着きがない態度も、目が合って慌てて反らす視線も、私達の間には芽生えなかったもの。


「グレース?ぼぅっとしてどうした?」


私は首を横に振った。


「ねぇお兄様、二人ってお似合いよね。なんか羨ましくて目が離せなかったの」


これが恋する者達の姿。


「ん?」


私の視線の先にいるフレディとロザンヌ様をお兄様も見つめた。


「そうだな。いつかグレースにも現れるよ」

「そうね」


お兄様は私の頭を撫でた。


「でもまだグレースには早い。まだ俺の妹でいてほしい」

「そんな事を言ったらずっとお兄様の側から離れないわよ?」

「それは願ったり叶ったりだな。グレースは一生俺の側にいればいい」


私はお兄様と微笑み合った。


和やかにお茶会が終わりフランキーは一人一人と挨拶をし見送った。

お兄様とフレディは少しだけお茶会に参加しただけで途中で退席し伯母様のお茶会にも顔を出すって言っていた。

伯母様のお茶会も終わりお母様と一緒に部屋に帰って行った。後はお父様の仕事が終わるのを待って家に帰る。

フランキーはエスコートが気に入ったのか今もフランキーのエスコートで庭園を歩いている。


「楽しかったねフランキー」

「うん楽しかった」

「成功して良かったね」

「助けてくれてありがとうグレース」

「私は何も助けてないわよ。フランキーが頑張ったからよ?」

「でもグレースが側にいてくれたから頑張れたんだ」

「うん、フランキーは頑張ったわ。

ねぇフランキー、私も頑張ったわよね?」

「グレースも頑張ったよ。なんで?」

「頑張ったらご褒美が貰えるの。そう先生と約束したのよ」

「ご褒美?グレースは何が欲しいの?俺が贈ろうか?」

「フランキーが?どうして?」

「お礼だよ」

「ふふっ、でもフランキーにも贈れないものだから、気持ちだけ受け取るわね」

「何を貰うつもりなの?」

「聞きたい?」

「聞きたい、教えて?」

「時間よ」

「時間?」

「そう、何もしない時間。勉強もマナーも何もしなくていい時間。自分の好きなように過ごせる時間」

「グレースは何がしたいの?」

「何がって訳じゃないの。でも毎日勉強とマナーばっかりだと疲れちゃうでしょ?だからよ。

まだ私7歳よ?子供らしい遊びだってしたいわ」

「子供らしいって。でも分かるよ。

俺も第二王子なんだから、第一王子を支える為に、何度も聞かされて、でも言われなくても俺だって分かってるよ。兄上を支えたいって思ってるしその為の勉強もしないといけないのも分かってる。

でもさ、今日遊んで楽しかった。走り回って木登りして、すごく楽しかった…」

「そうよね。私も令嬢達との会話、楽しかった。皆おしゃれなのよ?リボンの話で盛り上がったの」

「リボン?」

「これよ」


私は頭に着けているリボンを指差した。


「いつも着けてるよね」

「可愛いでしょ?フリルが付いていたり色を楽しんだり、今日着けてるのは私のお気に入りなの。

でね、レースのリボンを着けてる子がいてね?とっても可愛いかったの。今度お父様にお願いしようと思ってるのよ」

「そっか」

「私達の子供らしい遊びってなんだろうね」

「そうだね」


絵本を読んだり走り回ったりは出来る。でも危ない木登りは騎士に止められる。

隠れんぼだって狭い空間でやるから隠れる所は決まってる。なら広い空間で、そうなると近くに騎士が立つから隠れている所が分かる。

今日も騎士達は近くにいたけど見守っていた。きっとフランキーが木登りした時なんてハラハラしていたと思うけどね。

でも楽しかったな…。


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