年の差のある私達は仮初の婚約者

アズやっこ

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幼い頃、淡い初恋をショーンに抱いた。でも、今思えばそれは周りの大人達に誘導された初恋だったのかもしれない。

同じ年の子供達を結婚させようと、お父様もお母様も、ショーンのお父様もお母様も、皆嬉しそうに話していた。

幼心に結婚とは幸せなもの、そう思っていた。どの絵本の中の王子様もお姫様も結婚し幸せに暮らしましたと書いてあった。好きな人と結婚するのではなく、結婚する人が好きな人、そう思っていた。

だから私も、ショーンと結婚するから私の好きな人はショーンなんだ、そう思い込んでいた。

でもそれは違うと知った。

同じ子爵家のお茶会で出会ったお友達が、誰々が優しくて好き、誰々がかっこいいから好き。子供の好きはぬいぐるみが好き、クッキーが好き、それとよく似ていると思う。違う男の子が優しくすれば、今度はその子が好きと言う。

好き、とは…?

お友達に「ショーンのどこが好きなの?」と聞かれて、私はショーンのどこが好きなのかしらと思った。結婚する相手だから好きだと思っていたけど…。

そもそも好きって?

ショーンは別に優しいわけではない。冷たくされるわけでもないけど、ショーンが優しくするのは昔からアニーだけ。いつも3人で遊んでいたから分かる。

それに、かっこいいとも思わない。別に不細工というわけではないけど、私はかっこいいとは思わないだけ。

優しくしてくれるだけなら別の男の子の方が優しかったし、かっこいいって思った男の子も別の子だった。

ショーンは華奢な方。幼い頃のショーンは、私よりも背が低く、押したら倒れそうな、そんな子だった。今は私よりも背が高くなり、私よりも力持ちになったけど。

それでも私は幼い頃から逞しい体つきの方が好み。

「なあ、お前も相手を探しに来たと言っていただろ?どうだ?相手は見つかりそうか?」

「そうですね…、好きになれそうな人が見つかればと思い来たんですが…」

好きになれそうな人を探しに来てみれば、この会場に居る男性は皆年上の人ばかり。

「好きになれそうな人は見つかりそうか?」

簡単に見つかれば苦労しない。

「そもそもどうして好きになれそうな人を探しているんだ?俺と違ってお前はまだ若い、こんな所で探さなくても出会いはあるだろ」

私が暮らすロルーゲ国には同じ年頃の男女が通う学院はない。教育は家庭教師から学び、本格的に社交界へデビューするまでは、定期的に行われる高位貴族の御婦人方の邸に招待され、刺繍好きな御婦人から刺繍を教えてもらい、お茶会好きな御婦人からお茶会での振る舞いを教えてもらい、御婦人方が先生となる。

男性との出会いはお茶会の時や、ショーンのように幼い頃から遊ぶ子達だけ。大半の令嬢は、親が薦める相手と婚約する。それから今日のように交友会に参加し出会う。

交友会の話も、お茶会に参加していた令嬢達が話しているのを、たまたま聞こえてきて、私はそれまで全く知らなかった。

藁にも縋る思いで出会いを求めに来た。

求めに来たけど……。

「どうしても誕生日までに好きな人を見つけたいんです」

「誕生日までにって、そんな簡単に見つかるわけがないだろ」

「そんなことは分かっています。私だって婚約者になる人を好きになるつもりでした。でもこのままだと……」

私はショーンと婚約してしまう。

「その誕生日まであとどれくらいの期間があるんだ?」

「あと半年です」

「半年か……、半年後にお前は何歳になるんだ?」

「16歳になります」

「16歳!?」

男性は驚いたのか大きな声を出した。

「お前、まだ15歳なのか?若いとは思っていたが、そうかまだ15歳か…。俺はてっきり18歳くらいだと思っていた。

ん?まだ15歳ってことは結婚できないだろ」

ロルーゲ国の婚姻は16歳。それでも平均して18歳に婚姻する。

「だから結婚したことはありませんと言いました」

「お前さ、今日がどんな開催か知っているのか?」

「独身の男女が交流する交友会ですよね?」

「皆独身だが、初婚じゃない。今日は離縁した者達の交友会だ」

「えーーー!!」

私は思わず大きな声で叫んだ。

「ま、ま、待って待って、だって今日は若者達の交友会だって聞いて、だから今日私はお友達に頼みに頼んで、お父様に内緒で来たのに。そんなことってある?」

私は一人で焦っていた。

「お前が言う若者達の交友会は来月だ」

「へえ!?」

男性はまるで私を憐れむように呆れた顔をしている。

「そんなぁぁぁ」

今日のお泊りだってお父様は渋い顔をした。それをまた来月も?無理無理、絶対に無理。来月は絶対に許してもらえない。

今回だって、1ヶ月泣き真似までして、お父様のご機嫌取りをして、ようやく、ようやく渋々許してもらえたのに。

お友達に家まで迎えに来てもらって、お父様はお友達に何度も何度も「淑女らしく」と、遠回しに羽目を外すなと釘を差した。

お友達は、このままだとショーンと婚約させられる私の状況を理解してくれていて、それにショーンとアニーの相思相愛も知っているからこそ、今回協力してくれたの。

それなのに……。

確認しなかった私が悪い。

悪いけども……。

私はその場に膝から崩れ蹲った。

あまりに自分が情けなさ過ぎて……。


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