上 下
11 / 20

11

しおりを挟む

イザベラ視点


「ノア?ノア!」


倒れて目が覚めた時、ノアが生きていた!って思ったの。

でも直ぐにやっぱりノアは死んだのだと分かったわ。


「イザベラ?」


ノアより少し声が低いもう一人の幼馴染み、私を呼んだ声に「レオ」だって気付いた。やっぱりノアは死んだのだと、どうして私は目を覚ましたの!って自分を呪ったわ。

私を診てくれた先生にお腹に子が宿っている事を聞かされた。


ノアの子


喜びも一瞬だった。


一人でどう育てるの?


それにお腹の子を産んだら私は実家に返されるかもしれない。でも実家には帰れない。


「どうしてもノア君と結婚したいなら今後何があっても家には迎え入れない。私の反対を押し切って結婚するとはそういう事だ、良いな」


お父様はノアではない人と婚約させたがっていた。ノアの婚約者と言っても親同士の口約束、正式な婚約者では無かった。ノアのお父様はとても乗り気だったし、周りも私達が正式な婚約者同士って疑わなかった。

私が学園を卒業すると同時に結婚しようとノアに言われ私は二つ返事で答えた。それをお父様に言ったら反対されたの。

それにお義姉様とは折り合いが悪い。だからいつもノアの家に居たの。

反対されても私はお父様よりノアを取った。家に帰れなくてもノアと離縁する事は絶対にないもの。私達はお互い幼い頃から愛し合っているから。


そう、あの不慮の事故さえ無ければ…


あの日、私は朝から吐き気で起き上がれず、私を心配したノアが雨の中医者を呼びに行った。騎士に行かせれば良かったのに自分が行くって。泥濘んだ道に馬が足を取られ、バランスを崩したノアは馬から落ちた…。慌てていた、視界が悪かった、それでも……、

不慮の事故…



もう実家には帰れない。子が産まれてこの家を追い出されたら私には行く所がない。実家に帰れば間違いなく平民にされるわ。


だから私は記憶を無くしたフリをしたの


レオはノアに似ているし、レオとも幼馴染みで男としては見れないけど家族としては見れるもの。子供はノアの子だけ居れば十分。


そうよ!

レオをノアだと思えば良いじゃない!

レオと一緒にこの子を育てればいいのよ!


それから私は「レオ」を「ノア」と呼んだわ。何度も何度も「私達の赤ちゃん」と言ったわ。


私と貴方(レオ)の子って。

だってこの子にも父親が必要でしょ?

私と一緒に育ててくれる人が必要でしょ?


この子の父親と似てるレオならこの子も自分がレオの子だと疑わないわ。真実は大人が黙っていれば良いだけだもの。

それにレオならこの子を蔑ろにはしないわ。だってこの子はレオが慕い尊敬するお兄様、ノアの子だもの。


それになぜかお義父様も「レオ」を「ノア」だと言っていたの。そして使用人も「ノア」だと…。だから私は記憶が無いフリをするのが簡単だった。この邸皆が「レオ」を「ノア」と呼んでいるんだもの。

だからこそ、

レオの婚約者のエリザの存在が邪魔だったの。


レオはエリザが初恋の女の子で大好きなの。婚約者になるまで毎日学園から帰ってくるたびに「今日も可愛いかった」「今日も話せなかった」って一人で舞い上がったり落ち込んだり、見ているこっちが恥ずかしくなるほど毎日「エリザ、エリザ」って。

そんなに好きなら話しかければ良いじゃないって言ったら、どう話しかけて良いか分からないって、だから挨拶すれば?って言ったらその挨拶すら出来ない、目の前に居ると思うだけで…って顔を真っ赤にさせてたわ。


レオがどれだけエリザを大好きで愛しているか私は知っている。

エリザがどれだけレオを大好きで愛しているか私は知っている。


ノアが生きていたら、義理の妹として仲良くなれるって、私もレオとエリザの婚約を喜んだ一人だったの。


それでも今は違うわ。

この子の為にエリザとは婚約解消してもらわないといけないの。

この子の為にレオには父親になってもらわないといけないの。


だからお義父様に泣いて言ったわ、


「ノアが、ノアが浮気しているみたいです。私とこの子を捨ててどこかへ行くみたいです。どうしたら良いですか?お義父様…ううっ…助けて下さい…ううっ…」


って。お茶会から帰ってきた時にお義父様に泣いて訴えたの。

昨日お茶会でエリザを抱きしめていたのも、今日二人がいつもデートしていた公園で会うのも見て聞いていた。

それにレオとお義父様の怒鳴り声も聞こえてきたし、このままではレオは私とこの子を捨ててエリザの元へ行っちゃうわ。

私は何とか止めようとしたけど…

お義父様は昨日の私の話とレオとの会話でレオの部屋を外から塞いだ。扉を開けれないようにドアノブを頑丈に鎖で巻いて、部屋の前には騎士が6人、レオが部屋から出ようと足掻けば騎士達が扉を押さえる。

部屋に閉じ込めてでもレオにはこの子の父親になってもらわないといけないの。


それに、


私の居場所を失うわけにはいかないわ!




しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。

石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。 ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。 騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。 ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。 力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。 騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

処理中です...