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しおりを挟むイザベラ視点
「ノア?ノア!」
倒れて目が覚めた時、ノアが生きていた!って思ったの。
でも直ぐにやっぱりノアは死んだのだと分かったわ。
「イザベラ?」
ノアより少し声が低いもう一人の幼馴染み、私を呼んだ声に「レオ」だって気付いた。やっぱりノアは死んだのだと、どうして私は目を覚ましたの!って自分を呪ったわ。
私を診てくれた先生にお腹に子が宿っている事を聞かされた。
ノアの子
喜びも一瞬だった。
一人でどう育てるの?
それにお腹の子を産んだら私は実家に返されるかもしれない。でも実家には帰れない。
「どうしてもノア君と結婚したいなら今後何があっても家には迎え入れない。私の反対を押し切って結婚するとはそういう事だ、良いな」
お父様はノアではない人と婚約させたがっていた。ノアの婚約者と言っても親同士の口約束、正式な婚約者では無かった。ノアのお父様はとても乗り気だったし、周りも私達が正式な婚約者同士って疑わなかった。
私が学園を卒業すると同時に結婚しようとノアに言われ私は二つ返事で答えた。それをお父様に言ったら反対されたの。
それにお義姉様とは折り合いが悪い。だからいつもノアの家に居たの。
反対されても私はお父様よりノアを取った。家に帰れなくてもノアと離縁する事は絶対にないもの。私達はお互い幼い頃から愛し合っているから。
そう、あの不慮の事故さえ無ければ…
あの日、私は朝から吐き気で起き上がれず、私を心配したノアが雨の中医者を呼びに行った。騎士に行かせれば良かったのに自分が行くって。泥濘んだ道に馬が足を取られ、バランスを崩したノアは馬から落ちた…。慌てていた、視界が悪かった、それでも……、
不慮の事故…
もう実家には帰れない。子が産まれてこの家を追い出されたら私には行く所がない。実家に帰れば間違いなく平民にされるわ。
だから私は記憶を無くしたフリをしたの
レオはノアに似ているし、レオとも幼馴染みで男としては見れないけど家族としては見れるもの。子供はノアの子だけ居れば十分。
そうよ!
レオをノアだと思えば良いじゃない!
レオと一緒にこの子を育てればいいのよ!
それから私は「レオ」を「ノア」と呼んだわ。何度も何度も「私達の赤ちゃん」と言ったわ。
私と貴方(レオ)の子って。
だってこの子にも父親が必要でしょ?
私と一緒に育ててくれる人が必要でしょ?
この子の父親と似てるレオならこの子も自分がレオの子だと疑わないわ。真実は大人が黙っていれば良いだけだもの。
それにレオならこの子を蔑ろにはしないわ。だってこの子はレオが慕い尊敬するお兄様、ノアの子だもの。
それになぜかお義父様も「レオ」を「ノア」だと言っていたの。そして使用人も「ノア」だと…。だから私は記憶が無いフリをするのが簡単だった。この邸皆が「レオ」を「ノア」と呼んでいるんだもの。
だからこそ、
レオの婚約者のエリザの存在が邪魔だったの。
レオはエリザが初恋の女の子で大好きなの。婚約者になるまで毎日学園から帰ってくるたびに「今日も可愛いかった」「今日も話せなかった」って一人で舞い上がったり落ち込んだり、見ているこっちが恥ずかしくなるほど毎日「エリザ、エリザ」って。
そんなに好きなら話しかければ良いじゃないって言ったら、どう話しかけて良いか分からないって、だから挨拶すれば?って言ったらその挨拶すら出来ない、目の前に居ると思うだけで…って顔を真っ赤にさせてたわ。
レオがどれだけエリザを大好きで愛しているか私は知っている。
エリザがどれだけレオを大好きで愛しているか私は知っている。
ノアが生きていたら、義理の妹として仲良くなれるって、私もレオとエリザの婚約を喜んだ一人だったの。
それでも今は違うわ。
この子の為にエリザとは婚約解消してもらわないといけないの。
この子の為にレオには父親になってもらわないといけないの。
だからお義父様に泣いて言ったわ、
「ノアが、ノアが浮気しているみたいです。私とこの子を捨ててどこかへ行くみたいです。どうしたら良いですか?お義父様…ううっ…助けて下さい…ううっ…」
って。お茶会から帰ってきた時にお義父様に泣いて訴えたの。
昨日お茶会でエリザを抱きしめていたのも、今日二人がいつもデートしていた公園で会うのも見て聞いていた。
それにレオとお義父様の怒鳴り声も聞こえてきたし、このままではレオは私とこの子を捨ててエリザの元へ行っちゃうわ。
私は何とか止めようとしたけど…
お義父様は昨日の私の話とレオとの会話でレオの部屋を外から塞いだ。扉を開けれないようにドアノブを頑丈に鎖で巻いて、部屋の前には騎士が6人、レオが部屋から出ようと足掻けば騎士達が扉を押さえる。
部屋に閉じ込めてでもレオにはこの子の父親になってもらわないといけないの。
それに、
私の居場所を失うわけにはいかないわ!
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