上 下
10 / 20

10

しおりを挟む

「父上話があります」

「言ってみろ」

「俺を勘当して下さい」

「お前、自分が何を言っているか分かっているのか!」

「はい、もう俺には限界です。兄上になれないなら勘当すると父上は言いました。

俺はもう兄上になりたくない!」

「お前ーー!!」


ボコッ!


「ッ!」

「勘当したらお前はエルザと婚姻できないんだぞ、良いのか!」

「平民になった俺が婿養子にはなれません」

「お前はエルザと婚姻したいのだろ!」

「エルザを愛しているからこそ結婚したかった。エルザと結婚出来る為ならと今迄我慢してきました。ですが、もう限界です。父上も俺が死んだ方が良かったと言ったではありませんか。死んだと思って勘当して下さい。平民になっても父上にも伯爵家にもご迷惑はかけませんから」

「どうしてだ!」

「俺はノアではありません、レオだからです。レオとして生きたい、それだけです」

「イザベラはどうする!子は!」

「イザベラは兄上の嫁です、俺の嫁ではない!それに子も俺の子ではありません、兄上の子だ!」

「許さん!許さん!許さんぞ!」

「今日エリザに会って全て話してきます。勘当され平民になる俺では婿養子にはなれないと、婚約を解消して貰うように頼んできます」

「あと数ヶ月がなぜ待てん!」

「数ヶ月待って、今度は父親として子を護れと、兄上の代わりに父親になれと言うのでしょう。喪があけてから、今度は子が成長してから、最後はイザベラと結婚しろですか?

もううんざりだ!!

明日にはここを出て行きます。今迄お世話になりました」


俺は父上の書斎から出て行った。


「待て!まだ話は終わっていない!待たんか!」


父上が叫んでいるけど知ったことか!

自室へ戻る途中、


「ノアどうしたの?またお義父様と喧嘩?」

「俺はレオだ、ノアじゃない」

「何を言っているの?レオは死んだじゃない。一緒に埋葬したでしょ?忘れたの?」

「イザベラはレオが好きだったんだな」

「何を言っているの?私はノアを愛しているわ。レオは弟じゃない」

「弟の亡骸に縋りついて離れなかっただろ?好きでもないのにどうして縋りついた?どうして離れなかった?

レオが死んでからもお前はナイフを振りかざして後を追おうとしただろ?違うか?」

「それは…」

「イザベラはレオを愛していたからだろ?」

「違うわ!私はノアを愛しているわ!」

「俺はレオだ、兄上じゃない。イザベラは兄上の子を伯爵家の跡取りを大事に育てくれ」

「ノア?何を言ってるの?私と一緒に育てるんでしょ?貴方の子よ?私達の赤ちゃんじゃない」

「ああ、兄上の子だ。兄上の忘れ形見だ」

「何を言ってるの?貴方はノアよ?レオじゃないわ。それにこの子は私達の赤ちゃんよ?私と貴方の子よ?この子は私と貴方の赤ちゃんよ?」


まだ話していたイザベラの前から自室に戻り出掛ける準備をした。

部屋を出ようと、


扉が開かない!

ドンドンドン!!


「ノア様、旦那様からの伝言です。反省するまでこの部屋から絶対に出さないとの事です」


ドンドンドン!!


「何をしても無駄です。騎士達が貴方をこの部屋から出しません」

「退いてくれ!俺は行かないといけないんだ!エリザと約束したんだ!」

「知っています。だからこそ行かせない為に塞いだんです」

「退け!」

「この家の主は旦那様です。旦那様の言う事が全てです」

「頼む、退いてくれ!行かせてくれ!」

「大人しくして下さい。部屋から一歩も出れません」

「頼む!行かせてくれ!エリザが待っているんだ!行かせてくれーーー」



しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。

石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。 ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。 騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。 ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。 力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。 騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...