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しおりを挟むお父様にレオとの婚約を解消するか、伝えるのを迷っている。
それでも一度レオと話がしたい。
婚約を解消するにしても一度話がしたい。
レオに手紙を送っても返事はこない。返事がこないのがレオの気持ちなのかもしれない。それでもレオなら、私の知ってるレオなら手紙を無視する事はしない。
でも、今のレオは私の知ってるレオなのかしら。私はレオを本当に知ってるの?
侯爵家からお茶会のお誘いがありお茶会へ行った。
その時、イザベラお姉様のエスコートをしていたレオがいた。
そうよね、
レオはイザベラお姉様を愛しているものね。
その時レオと目が合った。
「俺を助けてくれ」
そう言われた気がした。
一瞬、ほんの一瞬、レオの顔がレオの瞳がそう私に訴えてきた。
今のレオはまたにこやかにイザベラお姉様と話している。
助けてくれ?
私はレオを遠くから観察した。
よく観察すれば、何か違和感がある。レオがレオらしくない。
何が違うの?
そうよ!ノアお兄様のように振る舞っているからよ。ノアお兄様は社交的でいつもにこやかにしていた。色々な人と話す姿をよく見かけた。私にも気さくに話しかけてくれた。
それに、イザベラお姉様を大事そうに包み込むように腰を抱いて、
今のレオはまるでノアお兄様のよう…
ノアお兄様がそこにいるみたい…
でも、どこかぎこちなく無理をしているみたい。同じクラスの女生徒と話す時みたいに、にこやかにしているけど、そう、握り拳を作って…。
前に聞いた事があった。どうして握り拳を作ってるの?って。そしたら紳士として女性にはいつもにこやかに接しろ、女性の話しには相槌をうてってノアお兄様に言われた、だけどにこやかに接するのが苦手だ、女性と話すのが苦手だ、だから気を抜かない為に体に力が入りいつの間にか握り拳になっているって言っていた。
特に苦手な女生徒と話す時は目が据わるのよね。顔はにこやかにしていても目が笑ってないの。
私の前だけはその力が抜けるって。私の前で握り拳を作った事も目が据わる事もない。レオはいつも優しい笑顔で私をみていた。手は私の頭を撫でたり、手を繋いだり、優しい温もりのある手だった。
どうしてイザベラお姉様と話してるのに握り拳を作り目が据わってるの?
前の夜会、あの時はどうだった?
あの時私はレオがイザベラお姉様を愛してると思ってたから、初恋のお姉様をエスコートして嬉しそうって、
今思えば、あの時のレオはまるでノアお兄様のようだった。ノアお兄様がイザベラお姉様を見るように、笑いかけるように、大事に包み込むように…。
今思えばレオがレオらしく笑っていなかった。レオは笑う時少し目を細めるの。でも今もあの夜会の時も目が笑っていない。
レオ、どうしたの?
私に何を助けてほしいの?
レオが一人でどこかへ行ったから私は後を追った。
「レオ」
「エリザ…」
私を見たレオはどこか安心したような、苦しいような、そして今にも泣きそうな顔をした。
「レオどうしたの?」
「エリザ、エリザ、エリザ……」
レオは私を抱きしめ、何とも言えない声を絞り出すかのように私の名前を呼び続けた。
その声が私を締めつける。
助けてくれと何度も言われてるみたいに…。
ごめんと何度も言われてるみたいに…。
レオは今迄私に弱みを見せた事がない。
前に渡したクッキーも固くて苦いはずなのに美味しい美味しいって食べていた。それに自分はずぶ濡れなのに気にするなって、その時言っていたわ、好きな子の前では格好つけたいって。
弱みは格好悪い、情けないだろ?そんな男が婚約者だと嫌だろ?って。
そんなレオが初めて私に弱みを見せたの。助けてくれとごめんと何度も訴えているの。
「レオ、どうしたの?どんなレオでも私なら大丈夫よ?どんなレオでも嫌いになんてならないわ。だから話して?」
「エリザ、俺は…」
「旦那様~」
遠くでイザベラお姉様の声が聞こえた。近付いてくる声にレオはビクッとしていた。
「エリザ、明日あの公園で、待っていてほしい。必ず行く、その時、俺の話しを聞いてほしい、頼む」
「分かったわ。来るまで待ってる」
レオは私を離してお茶会へ戻って行った。
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