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しおりを挟む俺の初恋の女の子は公園で出会った女の子。目を瞑り横になっていた時、誰かの気配がして目を開けた。そしたら可愛い女の子が俺の目の前にいた。
近付いてくる顔に俺は胸が高鳴った。
俺の唇が女の子の頬に当たり、女の子はそのままどこかへ走っていった。
それから学園で同じクラスにいた時は嬉しかった。どうやって話かけようか、俺の事覚えているか、だけどどうやって話しかけて良いのか、彼女を目の前にすると緊張して言葉が出ない。
そんな時、父上に婚約の話を聞かされた。俺も次男だ、どこかの家の婿養子になれれば良いな、くらいに思っていたが、正直婚約するなら彼女とが良かった。
俺の初恋で好きな女性
そしたら婚約するのが彼女だと、エリザだと聞かされ俺は直ぐに返事した。父上を催促して直ぐに返事を出してくれと頼んだ。
婚約しても緊張してまともに話せない。それでもエリザは俺に話しかけてくれる。だから俺は行動で示す事にした。
風よけになったり、エリザが嫌いなトマトをこっそり食べたり、クッキーを作ってくれた時なんか勿体なくて食べず飾りたかった。だけどエリザが申し訳なさそうな顔をしたから俺は目の前で食べたんだ。固くて美味しくないって言ってたが、俺には美味しかった。エリザの手作りってだけで、それだけで何でも美味しい。エリザが失敗したけどって刺繍をしたハンカチをくれた。俺は毎日持っていた。エリザの手作りでそれも刺繍入りのハンカチだぞ!持つに決まってる!
俺は気の利いた言葉を話をする事ができない。エリザに会えば、エリザの手を繋ぎたくなるし、抱きしめたい。常に膝の上に座らせ、キスだってしたい。毎日会いたいし、できれば帰したくない、そう思う。
でもエリザに嫌われたらと思うと何も出来ない。言葉で傷つけたらと思うと上手く言葉が出てこない。
俺は初恋だけどエリザは違うだろ?
婚約者として俺に接してくれるだけだろ?
好きだって言った時、「私も」とは言ってくれたけど「好き」とは言ってくれなかった。
今は好きじゃなくてもいつか、
婚約者なら、結婚すれば、子が出来たら、
そしたら俺を愛してくれるか?
兄上とイザベラの二人を見ていると羨ましいと思う。お互いに愛し合い、仲良く手を繋ぎ、座る時は膝の上にイザベラを座らせ、仲良く話をしている。兄上達のような関係になりたいと、エリザとそうなりたいと兄上達を見ながらいつもそう思う。
俺も兄上のような社交性があれば、
俺も兄上のように面白い会話ができたら、
そしたらエリザも俺を好きになってくれるかもしれない。
エリザの前では格好つけて紳士ぶってるが、本当の気持ちを言ったら、
エリザに嫌われるだろうな…。
俺はエリザを思うと、思い浮かべると、
可愛い、愛しい、
俺の初恋で愛する人、その思いだけだ。
兄上達を俺とエリザに置き換えて、俺は兄上達を見つめる。
卒業したら直ぐに結婚の準備に移る、俺としては卒業したら直ぐに結婚したい。
そんな時…、
兄上が馬から落ち、打ちどころが悪くこの世を去った…。
兄上の埋葬が終わり母上は倒れそのまま寝込んでしまい離れで療養中だ。義姉上、イザベラは精神的に病んだ。
メイドの叫び声で向かえばナイフを片手に持っているイザベラの姿が、俺はナイフを取り上げた。
「私もノアの元へ行かせてよ!何で止めるのよ!」
これで何度目か分からない。多い時は1日に何度もだ。
父上から、
「ノアの死が受け入れられないのだろう。レオ、お前がイザベラを護れ!常に一緒にいてイザベラを止めろ!良いな!
それと喪があけるまで婚姻は延期にする」
喪があけるまで、それは俺も納得はしている。兄上が急に亡くなり俺だって未だ信じられない。ふっと兄上が帰ってくるような、レオと呼ぶ声が今も聞こえる。
俺だって兄上の死が未だ信じられない。兄上の死から立ち直った訳じゃない。俺だってまだ悲しみの最中なんだ…。
こんな時だからこそ、エリザに側に居てほしい。
こんな時だからこそ、エリザに癒やしてほしい。
エリザ………
会いたい………
1ヶ月、イザベラを見張りイザベラは何とか落ち着きを取り戻した。
ようやく愛しのエリザに会えると家を出ようとした時、イザベラが意識を失い倒れた。父上も居ない、母上は療養中で頼めない、執事に頼めば「勝手な事など使用人の私共では出来ない」と言われた。俺は医者を呼び、父上が帰ってくるのを待った。時間だけが過ぎていき、メイドに待っているエリザに言付けを頼んだ。
「イザベラが倒れた。今日は行けないが明日会いたい。今日と同じ時間、同じ場所で待ってる」
次の日俺はエリザを待った。
エリザが待ち合わせに来る事はなかった。
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