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「奥様、この報告書ですが」


年配の執事は毎日私の私室へ来て侯爵家の仕事をさせる。私は女主人。これも初夜をしたから。

白い結婚の友達は初夜をしていない事で邸の使用人の裁量はするけど家の仕事はしなくていいと言っていた。

初夜をしたかしていないかで家への関わり方は変わる。後は旦那様次第。

私は本来当主がする仕事も使用人の裁量も全て任されている。


執事から預かった書類に目を通す。
学園を卒業していて良かったと実感する。学園の最終学年は経営を学ぶ。学園に通う間に婚約していなくても卒業する事で当主の補佐ができるだけの学力を学んだとの証明になるから。嫁に貰いたいと思う人は少ないけどいる。


アーロン様は毎日愛人達と邸で過ごす。時には出かけて行く時もあるけど相変わらず私と話すのは必要最低限の事だけ。

そんな毎日を過ごして1年が過ぎた。

アーロン様に抱いていた好意は等に無くなった。同居人、ただそれだけ。

私に好きに過ごせばいいと言ったはずなのに当主としての役目を果たさないアーロン様の代わりは誰がするの?私しかいないじゃない。私も好きに過ごして何もしなければ侯爵家は衰退する。船も他国との経路も人に譲る?そんな事をしたら借金だけ残るわ。

私は自分と使用人の生活さえ護れればいい。そのためだけにアーロン様の代わりに侯爵家を回している。



私は馬鹿な女よ。見た目、優しさ、誠実さ、そんなのに騙されて枷に掛けられた。一生鎖に繋がれ生きる屍のように生きてここから逃げ出す事も許されない。

頼みの綱の両親達ももう見てみぬふりをしている。私も両親達に頼むのは諦めたわ。

子供が出来たら少しは変わる?
ふっ、初夜のあの時以来何もしていないのに子供が出来る訳がないじゃない。

アーロン様の愛人達に嫌がらせをする?
そんな事をして何になるの?旦那様に愛されない妬みって嘲笑われるわ。


好きに過ごしていいと言ったのに友達と会うのは駄目だと言われる。それでも無視して友達に会いに行こうとしたら一緒に付いて行くと本当に付いてきた。私が余計な事を言わないか監視しているの?お互い愚痴とか言いたいのにアーロン様が側に居るおかげでたわいもない話しか出来なかった。

皆結婚しているの。久しぶりにようやく会えたのにどうして邪魔をするの?

貴方は私には何も言うな聞くな見てみぬふりしろって言うのに、自分は私に口出しするのね。行動を制限させるのね。

友達に相談しようと手紙を書けば「何だ!この内容は!」と久しぶりに会った私に投げ捨てた。友達に出す手紙も勝手に読むのね。ああ、貴方は友達から私宛に来た手紙も確認する人だったわ。

メイドが泣いて謝ってきたわ。辞めさせると脅させたら渡すしかないもの。メイドにだって生活があるの。辞めさせられたらこの子は次どこで働くの?


私の好きに、は何なら好きにさせてくれるの?愛人なら良いの?私に男性の友達はいない。どこで出会うの?なら出会い方を教えてよ!

夜会で?貴方は夜会には一人で行く。お茶会の誘いは勝手に断る。友達に会うことさえ許さない。

街で?外出を許されないのにどう出会うの?

邸で?この邸の男性の使用人はお父様と変わらない年齢の人達ばかりじゃない。


ねぇ、なら私の自由は?

この邸の中だって自由に過ごせない。部屋を出れば貴方と愛人達と鉢合わせ。

私の自由は私室だけ。

好きに過ごせって私室で好きに過ごせって事だったの?
ふっ、貴方は良いわね自由に好きに過ごせて。さぞ毎日楽しいでしょうね。



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