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妹がいなくなった

娘の決意

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 フィーナがブラウニー家から帰って来て、執務室へ来た。


「お母様、ただいま」

「フィーナ、おかえりなさい」


 私はペンを置いて、椅子から立ち上がりフィーナを抱きしめた。


「ローラ母様元気にしてた?」

「うん。一緒に庭を散歩したの」

「綺麗だったでしょ?」

「すごくきれいだった」

「良かったわね」

「お母様、それでね、」

「何かしら」


 フィーナは私から離れ、背筋を伸ばした。


「お母様」

「はい」

「私、ブラウニー家を継ぎたいと思います」

「フィーナ…。フィーナの気持ちは分かったわ。当主になるにはこれから大変よ?」

「分かっています」

「お勉強もいっぱいしないといけないのよ?」

「頑張ります」

「難しい本をたくさん読まないといけないのよ?」

「それでも私は決めました」

「そう。分かりました。ならブラウニー家の次期当主として手続きをします」

「お願いします」

「父様にもきちんと伝えなさい」

「はい、分かりました」

「なら今から父様の所に行きましょう」


 フィーナと一緒に隣の隣の部屋、チャーリーがブラウニー家の仕事をする執務室、


コンコン

「チャーリー、良い?」

「エリー?入って良いよ」


 フィーナと一緒に執務室の中に入った。


「フィーナ、お祖母様とは楽しんできたかい?」


 チャーリーはフィーナを抱きしめた。


「お父様、大事な話があります」

「聞かせてくれるか?」

「私、ブラウニー家を継ぎたいと思います」

「そうか」

「はい」

「どうして継ぎたいと思った?」

「お祖母様の思い出の薔薇を護りたいと思ったからです。後、私も薔薇を、きれいな薔薇を護りたいって思ったからです。

お祖母様が言っていました。薔薇は見て楽しみ香りで楽しむって。私もそう思いました。花としても、エキスを使い別の物にも、薔薇の楽しみ方はたくさんあります。だからこそ護るべきだし、私が護りたいと思います」

「分かった。私はブラウニー家の息子として、フィーナ・キャメル、君をブラウニー侯爵家次期当主として、ブラウニー家を君に託す。ブラウニー家を、ブラウニー家の領民を、ブラウニー家の薔薇を護ってほしい」

「分かりました」

「フィーナ」


 チャーリーはフィーナを抱きしめ、


「フィーナ、ありがとう」

「お父様」

「父様もフィーナの力になるから」

「うん」

「これから勉強も経営も少しづつ教えるからな」

「お願いします」

「フィーナ、本当にありがとう」



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