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ガネット・フォルンは愛されたい
最後の話の昼ドラ版 上
しおりを挟む私は家族の洗濯物を干し終わり、
パタパタと揺れるシーツを眺め…。
あの日、
ボーン、ボーン…と鐘がなるたび、貴方への愛が冷めていったわ。12回目の鐘の音が鳴り終わった時…貴方への愛が変わったの。
部屋に戻った私は一緒に過ごした部屋を歩いたの。
ねぇザック、私はね、貴方の事、男の人で初めて信じられると思ったわ。
ねぇ、ザック、貴方は初めて私と出会った時、食事に誘ってくれたわね?
騎士の方って軽薄なのね、って思ったわ。初めて話す人に食事なんて誘う?
でも、その時の貴方、手が震えてた。だからとても純粋な男性だと好感がもてたのよ?
それからも会うたびに声を掛けてくれて誘ってくれたわ。その時も貴方は気付いていないだろうけど手が震えていたのよ?
親睦会で話してから1年間毎日宿舎までの短い距離を送ってくれたわね。
ねぇ、ザック、貴方は毎日黄色の花を贈ってくれたわ。私嬉しかったの。私との会話を覚えていてくれた事が。
貴方の誘いにはのらない、少しの会話だけ、それでも貴方は1年間一度もかかす事なく私を送ってくれたわ。とても一途な方と思ったの。
ねぇ、ザック、純粋で一途な方と思ったから私は貴方と付き合ったのよ?
付き合った時も正直に答えてくれたわ。「なってみないと分からない」って。身分を得ても変わらないって言われるよりずっと好感が持てたわ。
それに誓ってくれたでしょ?騎士にとって剣に誓うのは命をかけると一緒でしょ?なら誓いを破ったら己の命を差し出すのよね?
だから私は貴方を信じたのよ?信じられると初めて思ったの。
私は貴方を愛してた。
貴方が愛人を作っても、愛人の名を呼んでも、それでも耐えていたの。
だから、三年目の結婚記念日の日、貴方を信じて、貴方の帰りをずっと玄関で待っていたのよ?
貴方が帰って来たら、貴方に愛人がいるのは知ってる、でも、もう止めて。私だけを愛して。私だけを見て。貴方を愛してるの。貴方を尊敬する息子を、私に似た娘を、貴方が望んでいた家族を作ろうって言うつもりだったの。
ボーン、ボーン!
12回目の鐘が鳴り終わった時、私は決めたの。
ねぇ、ザック、どうして結婚指輪は机の上に置いたのに、貴方へ宛てた手紙を寝室のベッドの上に置いたと思う?
どうして手紙をあんなに長い文章にしたと思う?
ねぇ、ザック、どうしてだと思う?
夫婦の寝室のベッドの上で貴方と始めて体を繋げたわ。
夫婦の寝室のベッドの上で貴方と愛してると気持ちを確かめあったわ。
夫婦の寝室のベッドの上で貴方と口付けをたくさんしたわ。
夫婦の寝室のベッドの上で貴方と何度も体を繋げたわ。
夫婦の寝室のベッドの上で貴方に抱きしめられ貴方の温もりを感じて眠ったわ。
ねぇ、ザック、
夫婦の寝室のベッドって、
愛を営む所でしょ?
愛を紡ぐ所でしょ?
愛が溢れてる所でしょ?
愛が詰まってる所でしょ?
そこに私は置いたの。
貴方の愛人の存在、貴方の行動、私は貴方をこんなに愛してるのに、貴方は私を愛してくれなかったと…。
剣に誓うと言った貴方に私は願いを叶えてほしいと…。
「ねぇ、ザック、私は知ってる、貴方の愛人の存在を、貴方が愛人と何をして何を贈ったか、私は全部知ってるのよ?
ねぇ、ザック、これは別れじゃないの。そう、私から貴方へ罰を与えるの。誓いを破った貴方の命なんかいらない。そのかわり、一生手に入れられなくなったと悔やんで悔やんで後悔して生きていきなさい」
ねぇ、ザック、私の気持ち伝わったかしら。
だからあんなに長い手紙にしたのよ?
だから貴方の名前を一度も書かなかったのよ?
夫婦の寝室で手紙を読んだ貴方には何が残った?
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