178 / 187
177
しおりを挟む
「ジェフ様」
「何だ」
「ジェフ様は貴族に戻りたい?」
「今更だな」
「もし、もしも貴族に戻りたいなら私陛下に私の罪を話しても必ず貴方を貴族に戻して貰うわ」
「もし俺が貴族に戻ったとして俺は兄上の迷惑にしかならない」
「そんな事、」
「そうだろ?貴族に戻ったとしても俺は一度勘当された身だ。お前が罪を告白したとしても兄上のお荷物にしかならないんだよ。もうこれ以上兄上に迷惑をかけられない」
「ごめんなさい」
「それに例えお前の状況がどうであれ、早々にお前との関係を諦めて婚約者としてお前を蔑ろにしたのには変わらない。他に好意を抱いたのも事実だ」
「ごめんなさい」
「なあエミリーヌ、もう今更なんだよ。始めから俺達はかけ違ってた。今の俺の状況を作ったのも俺だ」
「ごめんなさい」
「もう俺をこれ以上惨めにしないでくれ」
「ごめんなさい」
「もう行ってくれ。もう顔も見たくない」
「ごめんなさい」
私はグレンに手を引かれ馬車に乗せられた。私に泣く権利はない。悪いのは私だった。あの時の私に余裕が無かったのも事実。だけどジェフ様に婚約者だったジェフ様を蔑ろにしてたのも事実なんだ。
「エミー、気にするな」
「グレン、でも、」
「気にするな」
グレンはそれきり何も言わなかった。重い空気のまま邸に着いて、私は部屋に閉じこもった。泣いては駄目、泣く権利はない…。
ガチャ
私の部屋の扉が開いた。
「エリー」
その声に顔を上げた。
「チャーリー」
「うん、酷い顔だ」
私はまたベッドに顔を埋めた。
チャーリーはベッドに腰掛け、
「グレンさんから聞いたよ」
私の髪を撫でて、
「元婚約者と会ったんだって?妬けるな」
「………」
「元婚約者は昔の俺みたいだった?」
私は頷いた。
「そっか」
チャーリーはずっと私の髪を撫でている。
私はベッドに顔を埋めたまま、
「私が悪いの」
「うん、そうだね」
「私がジェフ様の人生を壊したの」
「うん、そうだね」
「何も罪もない人に」
「うん」
「罪を被せた」
「そうか」
「私はどうしたらいい?」
「エリーはどうしたい?」
「私は、」
「うん」
「助けたい」
「なら助ければ良いんだよ。エリーの得意な事だろ?」
「そんな事ない」
「そうかな?俺は助けて貰ったけど?」
「チャーリーは違うじゃない、相手が悪かった。私みたいに」
「それでも助けて貰った」
「ねえ」
「何?」
「私は罪人なの」
「だから?」
「婚約者失格なの」
「エリー!」
チャーリーは私を無理矢理座らせた。
「良い?もしエリーが罪人だって思うならそれで良い。それでも俺の婚約者はエリーだ。エリーが罪人なら俺も一緒に罪を償う。夫婦になるってそう言う事だろ?」
「そんなの、」
「違わない。エリーが罪を償う為に平民になるって言うなら俺も平民になる。俺は元々平民になったし、貴族に戻れた事が奇跡なんだ」
「それはチャーリーのしてきた努力の賜物でしょ?」
「その成果を出せたのはエリーがくれたからだろ?俺に第二の人生をくれたからだろ?」
チャーリーは私を抱きしめ、
「なあエリー、元婚約者の気持ち俺は分かるよ。婚約者に見てもらえない、その気持ち分かるよ」
「うん」
「それでもエリーのその時の心も分かる」
「何で?」
「俺も死んだように生きてたから、ずっと。心を失くして生きてきたから」
「…うん」
「何も写さない、何も見ない、心が無いんじゃ相手の事なんて見えないよ」
「…うん」
「元婚約者も子供だった。エリーが子供だった様に」
「…うん」
「元婚約者もエリーとの婚約に夢を見てた。一緒にあれもしたいこれもしたい、自分の色の物を贈りたい、好きになりたいなって欲しい、そう夢に見てた」
「…うん」
「夢に見てた分だけ現実に落胆した」
「…うん」
「贈り物を贈っても意味がない、会いに来ても相手にしてもらえない」
「…うん」
「他に好意を持った」
「…うん」
「俺も同じだ。虚しいそう思ったよ」
「…うん」
「でもさ、その当時のエリーは使用人や領民の為に働く事で生きていた」
「…うん」
「その状況を作り出したのは君のご両親だ」
「…うん」
「エリーに責任がないとは言わない」
「うん」
「それでも君だけが責任を負う事じゃない」
「………」
「エミリーヌ、君は元婚約者を蔑ろにした、それは事実だ。彼も君との関係を諦め他に好意を抱いた、それも事実だ。
君の状況を説明した所で彼は何も出来なかった。当主でもないまだ学生の彼に君を支える事なんて出来なかったんだ。
心を失くした君に、君の置かれてる立場を話す事は出来ない。何故なら自分の置かれてる立場も、扱いも君は受け入れてたからだ。父上の代わりに仕事をするのは当たり前の事で自分に与えられた事だから、家族として扱って貰えないのも仕方がないと思っていたから。幼い時から諦め育ってきた君は上手く仮面を被っていた。グレンさんみたいに本当に側で護ってた人達には分かっても、只々皆の為に働きお金を稼ぐ人形の様に感情を失くし心を失くし諦めて生きていた事を分かる人なんて誰もいなかったんだ」
「何だ」
「ジェフ様は貴族に戻りたい?」
「今更だな」
「もし、もしも貴族に戻りたいなら私陛下に私の罪を話しても必ず貴方を貴族に戻して貰うわ」
「もし俺が貴族に戻ったとして俺は兄上の迷惑にしかならない」
「そんな事、」
「そうだろ?貴族に戻ったとしても俺は一度勘当された身だ。お前が罪を告白したとしても兄上のお荷物にしかならないんだよ。もうこれ以上兄上に迷惑をかけられない」
「ごめんなさい」
「それに例えお前の状況がどうであれ、早々にお前との関係を諦めて婚約者としてお前を蔑ろにしたのには変わらない。他に好意を抱いたのも事実だ」
「ごめんなさい」
「なあエミリーヌ、もう今更なんだよ。始めから俺達はかけ違ってた。今の俺の状況を作ったのも俺だ」
「ごめんなさい」
「もう俺をこれ以上惨めにしないでくれ」
「ごめんなさい」
「もう行ってくれ。もう顔も見たくない」
「ごめんなさい」
私はグレンに手を引かれ馬車に乗せられた。私に泣く権利はない。悪いのは私だった。あの時の私に余裕が無かったのも事実。だけどジェフ様に婚約者だったジェフ様を蔑ろにしてたのも事実なんだ。
「エミー、気にするな」
「グレン、でも、」
「気にするな」
グレンはそれきり何も言わなかった。重い空気のまま邸に着いて、私は部屋に閉じこもった。泣いては駄目、泣く権利はない…。
ガチャ
私の部屋の扉が開いた。
「エリー」
その声に顔を上げた。
「チャーリー」
「うん、酷い顔だ」
私はまたベッドに顔を埋めた。
チャーリーはベッドに腰掛け、
「グレンさんから聞いたよ」
私の髪を撫でて、
「元婚約者と会ったんだって?妬けるな」
「………」
「元婚約者は昔の俺みたいだった?」
私は頷いた。
「そっか」
チャーリーはずっと私の髪を撫でている。
私はベッドに顔を埋めたまま、
「私が悪いの」
「うん、そうだね」
「私がジェフ様の人生を壊したの」
「うん、そうだね」
「何も罪もない人に」
「うん」
「罪を被せた」
「そうか」
「私はどうしたらいい?」
「エリーはどうしたい?」
「私は、」
「うん」
「助けたい」
「なら助ければ良いんだよ。エリーの得意な事だろ?」
「そんな事ない」
「そうかな?俺は助けて貰ったけど?」
「チャーリーは違うじゃない、相手が悪かった。私みたいに」
「それでも助けて貰った」
「ねえ」
「何?」
「私は罪人なの」
「だから?」
「婚約者失格なの」
「エリー!」
チャーリーは私を無理矢理座らせた。
「良い?もしエリーが罪人だって思うならそれで良い。それでも俺の婚約者はエリーだ。エリーが罪人なら俺も一緒に罪を償う。夫婦になるってそう言う事だろ?」
「そんなの、」
「違わない。エリーが罪を償う為に平民になるって言うなら俺も平民になる。俺は元々平民になったし、貴族に戻れた事が奇跡なんだ」
「それはチャーリーのしてきた努力の賜物でしょ?」
「その成果を出せたのはエリーがくれたからだろ?俺に第二の人生をくれたからだろ?」
チャーリーは私を抱きしめ、
「なあエリー、元婚約者の気持ち俺は分かるよ。婚約者に見てもらえない、その気持ち分かるよ」
「うん」
「それでもエリーのその時の心も分かる」
「何で?」
「俺も死んだように生きてたから、ずっと。心を失くして生きてきたから」
「…うん」
「何も写さない、何も見ない、心が無いんじゃ相手の事なんて見えないよ」
「…うん」
「元婚約者も子供だった。エリーが子供だった様に」
「…うん」
「元婚約者もエリーとの婚約に夢を見てた。一緒にあれもしたいこれもしたい、自分の色の物を贈りたい、好きになりたいなって欲しい、そう夢に見てた」
「…うん」
「夢に見てた分だけ現実に落胆した」
「…うん」
「贈り物を贈っても意味がない、会いに来ても相手にしてもらえない」
「…うん」
「他に好意を持った」
「…うん」
「俺も同じだ。虚しいそう思ったよ」
「…うん」
「でもさ、その当時のエリーは使用人や領民の為に働く事で生きていた」
「…うん」
「その状況を作り出したのは君のご両親だ」
「…うん」
「エリーに責任がないとは言わない」
「うん」
「それでも君だけが責任を負う事じゃない」
「………」
「エミリーヌ、君は元婚約者を蔑ろにした、それは事実だ。彼も君との関係を諦め他に好意を抱いた、それも事実だ。
君の状況を説明した所で彼は何も出来なかった。当主でもないまだ学生の彼に君を支える事なんて出来なかったんだ。
心を失くした君に、君の置かれてる立場を話す事は出来ない。何故なら自分の置かれてる立場も、扱いも君は受け入れてたからだ。父上の代わりに仕事をするのは当たり前の事で自分に与えられた事だから、家族として扱って貰えないのも仕方がないと思っていたから。幼い時から諦め育ってきた君は上手く仮面を被っていた。グレンさんみたいに本当に側で護ってた人達には分かっても、只々皆の為に働きお金を稼ぐ人形の様に感情を失くし心を失くし諦めて生きていた事を分かる人なんて誰もいなかったんだ」
67
お気に入りに追加
2,307
あなたにおすすめの小説
【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?
早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。
物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。
度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。
「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」
そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。
全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
けじめをつけさせられた男
杜野秋人
恋愛
「あの女は公爵家の嫁として相応しくありません!よって婚約を破棄し、新たに彼女の妹と婚約を結び直します!」
自信満々で、男は父にそう告げた。
「そうか、分かった」
父はそれだけを息子に告げた。
息子は気付かなかった。
それが取り返しのつかない過ちだったことに⸺。
◆例によって設定作ってないので固有名詞はほぼありません。思いつきでサラッと書きました。
テンプレ婚約破棄の末路なので頭カラッポで読めます。
◆しかしこれ、女性向けなのか?ていうか恋愛ジャンルなのか?
アルファポリスにもヒューマンドラマジャンルが欲しい……(笑)。
あ、久々にランクインした恋愛ランキングは113位止まりのようです。HOTランキング入りならず。残念!
◆読むにあたって覚えることはひとつだけ。
白金貨=約100万円、これだけです。
◆全5話、およそ8000字の短編ですのでお気軽にどうぞ。たくさん読んでもらえると有り難いです。
ていうかいつもほとんど読まれないし感想もほぼもらえないし、反応もらえないのはちょっと悲しいです(T∀T)
◆アルファポリスで先行公開。小説家になろうでも公開します。
◆同一作者の連載中作品
『落第冒険者“薬草殺し”は人の縁で成り上がる』
『熊男爵の押しかけ幼妻〜今日も姫様がグイグイ来る〜』
もよろしくお願いします。特にリンクしませんが同一世界観の物語です。
◆(24/10/22)今更ながら後日談追加しました(爆)。名前だけしか出てこなかった、婚約破棄された側の侯爵家令嬢ヒルデガルトの視点による後日談です。
後日談はひとまず、アルファポリス限定公開とします。
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる