妹がいなくなった

アズやっこ

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 私はセイにセナンを呼んできて貰う様に頼んだ。

 セイに連れられ入ったセナンに、


「座って」


 セナンが座り、


「セナン、決まったかしら」

「はい」

「どうするの?」

「街の食堂を紹介して下さい」

「厳しいみたいだけど大丈夫?」

「大丈夫かと聞かれたら分からない。けど…」

「うん、何?」

「正直に話してもいい?」

「良いわよ」

「私ね…」

「うん」

「愛人になりたいって言ってたでしょ?」

「そうね」

「それなのに変って思われるかもしれないけど」

「うん、何?」

「男の子のいやらしい目嫌いなの」

「どう言う事?」

「私、見目も悪くないでしょ?」

「そうね」

「それに他の子より…」

「うん」

「胸があるから…」

「そうねって言っていいのか分からないけど」

「いいの分かってるから」

「年齢の割にはまあ、そうね」

「だから男の子達からいやらしい目で見られる事があるの」

「これは私が思った事よ?いい?」

「うん」

「女性に比べて男性の方が性に目覚めるのは早いと思うの」

「うん」

「これは私の様な貴族の女性ならではなのかも知れないけど、貴族の女性は結婚する人、旦那様ね?その人だけに貞操を捧げるの」

「貞操?」

「そうね、純潔を捧げる、もっと分かりやすく言うと、男性との営みは分かる?」

「うん」

「女性なら誰だって初めてがあるわよね?」

「うん」

「その初めては旦那様になる人に捧げるの。女性でも愛人を持つ人も少しはいるわ。それでも初めては旦那様になる人なの」

「うん」

「でも貴族の男性は違うわ。全員が全員じゃないわよ?奥様になる人としか営みをしないって言う人もいるわ。それでも半数は結婚する前に婚約者ではない人と経験をするの」

「うん」

「女性には破瓜の印が出るけど男性には出ないでしょ?」

「うん」

「それに、年齢的に興味も出てくる」

「うん」

「それは仕方のない事だと思うの。女性だって月のものがあるわ。それは赤ちゃんが出来ますよって身体が女性になったって教えてくれるの」

「うん」

「それと同じで男性も大人になったって身体が教えてくれるの」

「うん」

「そうするとどうしても女性の身体に興味が出てくる。それは身体が大人になった証拠なの。それでも見られる方はいい気しないわよね?」

「うんそうなの。だからね、男ばかりの騎士団は嫌だなって思ったの」

「そうね。男性にちやほやされたい人なら良い職場だけど、そうじゃない人には辛い職場になるものね」

「それにその店主さん、厳しいけど護ってくれるって言ってたから、そっちにしようと思ったの」

「そう」

「私器用じゃないからすごく怒られると思う。けど頑張ってみる」

「分かったわ。きっとすごく怒られるし厳しい事も言われると思うの。それでも、どれだけ嫌だな、行きたくないなって思っても意地でも毎日行きなさい。いい?」

「うん」

「それなら雇って貰えるように頼んでみるわね」

「お願いします」

「頑張って」

「うん」


 セナンが出て行き、セイに案内され孤児院を少し見せて貰った。


「ここは子供達の人数が多いって聞いていたけど本当に多いわね」

「はい。赤子で捨てられる子もいますが育てられないと捨てられる子もいます。流行り病で両親が亡くなった子や親が出稼ぎに行き預けられそのまま迎えに来ない子もいます」

「この子達には何の罪もないのに」

「はい、その通りです」

「皆諦めてるのね」

「はい」

「文字の読み書きや手に職を付ける、勿論生活していく為に必要なものだと思うわ。それでも夢や希望、目標も無ければ原動力にもならないわ」

「はい」

「なりたいものになれるかは別としても、なりたいものがあるか無いかで大きく変わるわ」

「はい」

「騎士になりたいと思ったら体力作りや身体作り、剣を振ったり努力するのは苦にはならない。けど騎士になりたくない子にさせても続かないし苦になるわ」

「はい」

「強制的にやらせても意味がないのよね」

「そうですね」

「ねえセイ」

「はい」

「ここを卒院した子達は顔を見せに来たりするの?」

「来ないですね」

「そう…」

「来ないと言うよりは来れないの方が正しいと思いますが」

「そうね。生活する為に働いてるものね」

「それもありますが」

「何?」

「年が上にいけばいくほど言い方は悪いですが威張り散らすと言いますか」

「そっちね」

「今迄威張り散らしていたのに実際は惨めな暮らしをしています」

「そうね。忍耐力がないのも原因だけど…」

「はい。ここの中では良くても外に出れば違います」

「世間の目は厳しいから」

「はい」

「それでも親の責任をこの子達に背負わせるのは間違ってるけど、それでも背負わないといけないのも事実よね。孤児院育ち、それをこの子達は背負って生きていかないといけない」

「はい」

「それに負けない子達になってくれれば良いのだけど」

「私もそう思います」


 その後も案内され見て回った。


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