妹がいなくなった

１６３

　部屋に残った私達は、これから来る女の子達を前に少し話をした。


「今から愛人になりたいと言った子達を呼ぶが」

「お祖父様はどのようにお考えなのです？」

「今日は一人づつ呼ぶつもりだ」

「分かりました」

「異論はないだろうか」

「はい」

「私もその方がよろしいかと思います」

「では誰から呼ぶかだが」

「取り巻きから呼んではいかがでしょう」

「アイリーン嬢なぜだ？」

「きちんと自分で考えてきたか聞くためです。きっとこの前皆の代表で話ていた子より先に聞いた方が良いと思います」

「分かった、そうしよう。

ガイン、この前の子達は覚えているか？」

「はい、あの勝気な子以外を先にお連れすればよろしいでしょうか」

「ああ、頼む」


　ガインが部屋を出て行った。

　暫くしてガインと一人の少女が入ってきた。


　「座って」


　少女が座り、


「一週間たった、君の考えを聞かせて貰えるかな？」

「どうして私が一番初めなの？」

「一番初めだと何か都合が悪い？」

「だって…」

「一週間前、俺達は何って言った？自分の意思で考えて決めてほしいと言ったはずだ」

「それは分かってるけど…」

「それなら聞かせて貰えるかな？」

「それは…」

「何？」

「私は…」

「セナンって言ったよね？君達の代表でこの前話してた子。その子にまた決めて貰うの？」

「だってセナンちゃんは決めてくれるもの」

「なら君はずっとこの先もセナンの側に居るつもりなの？」

「私達孤児院を卒院した子は皆それぞれ仲が良かった子達と一緒に暮しているもの」

「確かに一緒に暮しているのかもしれない。だけどそれはそれぞれ収入を得ているんじゃないの？　俺達はその収入をどうやって得るのかを聞いてるだけだよ？　働き稼ぎお金を得る、それが生活だ。　君はどこで働き稼ぎ収入を得るの？収入のない君の面倒をセナンが見てくれるの？」

「それは…」

「そのセナンちゃんが同じ孤児院で育ったから、仲が良かったからだけで姉妹でもない他人の君の生活の面倒まで見てくれるなら俺達は何も言わないよ。だけど君はいつまでセナンに自分を背負わせていくつもり？」

「だって今迄はセナンちゃんが決めてくれたの。今更自分で決めろって言われてもどうやって決めるの？」

「なら君の得意な事は？」

「……ない」

「なら好きな事は？」

「……それもない」

「本当に今迄セナンちゃんに決めて貰ってたんだね」

「だからそう言ってるじゃない」

「ならセナンはこの前、貴族の愛人になるって言ってたけど、君も愛人になるつもりだったの？」

「セナンちゃんがそう決めてくれたから」

「愛人って何するか分かってる？」

「それは…」

「なら教えるよ？　愛人は欲の吐き捨て場だよ。確かにそこに愛を持って接する人もいる。だけど大半は自分の欲を吐き出すだけだ。望まぬ婚約に望まぬ婚姻、愛の無い夫婦関係、子を成す為だけに妻と閨を共にしても苦痛しかない。それでも子を成すまではと自分に言い聞かせ愛してもない妻を抱く。跡取りの子が出来れば役目が終わったと夫も妻も顔を合わせなくなる。それでも男性は欲が溜まる、その欲を発散する為に愛人を囲う。多少の生活のお金を渡し欲を発散する為だけに愛人宅へ行く。愛人はお金で買われた娼婦と同じだ。娼婦と違う所は愛人の男性だけに抱かれるだけだ。

それでも君もは愛人になりたいの？セナンちゃんが決めてくれたから？　好きでもない男性でも抱かれれば生活するお金が貰えるから？　もし例え君が貴族の男性の愛人になり、愛人の男性を愛しても愛人以上にはなれないし、その愛だって男性が飽きれば終わりだ。飽きられたらお金だってもう貰えない。その時にまたセナンちゃんに決めて貰うの？」

「………」

「セナンが決めてくれる人生は君にとって楽だよね？自分で考えて決めなくても道を指し示して貰えるんだから。

君は得意な事もない、好きな事もない、セナンちゃんが決めた人生を歩むだけ」

「………グズ」

「泣いても誰も君を庇ってくれないよ？　泣いて何か解決するの？しないだろ？　今君がしないといけない事は泣くことじゃない、考える事だ」

「………グズ」

「いつまでセナンを君は縛るつもりなんだ？君はセナンに縛られてると思ってるかもしれないけど、それは反対だよ？　君がセナンを縛ってるんだ。

セナンは自分で考え自分の意思を持ってる。君がセナンを慕ってるのは分かるけど、君の人生をセナンに背負わせる事は違う」

「………」

「これ以上話をしても意味がない。君は少し一人で考えるんだ。

ガイン、悪いけどこの子は他の子達とは隔離しておいて」

「分かりました」


　ガインは少女を連れて部屋を出て行った。


「あそこまでセナンに依存しているとは…」

「それがあの子達の現状なのじゃない？親がいないだから依存する。今は狭い空間だからセナンちゃんも気にしてなくても、卒院したら視野が広くなるわ。その時彼女の事をどこまで気にしてくれるのか、もしかしたら拒絶する事もあると思う。自分が決めないと何も決めれない友人なんてはっきり言って邪魔だもの」

「まあ邪魔と思うか面倒見るかのどちらかしかないよね」

「そうね」