妹がいなくなった

アズやっこ

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「何も努力しないで職だけ紹介してなんて甘えた事考えてないわよね?」

「え?」

「貴女達を紹介するに当たって私達は家名を出す事になるの。家はキャメルって言うんだけど、キャメルは侯爵家って知られているわ。家は小麦が稼ぎの主だから貴族から平民、この国のほとんどの小麦は我が家の物なの。平民でも商売をする人なら一度は耳にするわ。ある意味キャメル侯爵家の紹介なら断られる事はないわね。

それでも家名を出す以上、半端な真似もしないで欲しいわ。貴女達を紹介した私達まで半端者と言われるから。半端者と言われたら私の家は信用を無くすわ。信用無くして商売は出来ないの。

手助けはする。でもその為の努力もして貰うわ」

「例えば?」

「最低限の文字の読み書きは必須ね。どこで働くにしても文字は書くし働く場所によっては計算も必要よ」

「計算…」

「お針子さんとかなら刺繍の腕があれば文字の読み書きや計算は必要ないけど」

「刺繍…」

「何をするにしても努力するしかないの。今迄散々遊んできたツケよ」

「…そう、だけど…」

「先ずはどこで働きたいか、何をしたいか考えなさい。働く場所によって身につける物が違うから」

「…うん」

「貴女達はどうするの?彼女の言う事を聞いて愛人になるの?」

「「「「………」」」」

「彼女に寄り掛かっていれば何とかなるという考えはやめなさい。自分の意志を持ちなさい。」

「「「「………」」」」

「チャーリー後はよろしく」

「え?ここで?」

「そうよ?」

「エリーが進めてくれて良かったのに」

「嫌よ」

「分かった。 今、彼女が言ったように半端な真似はしないでほしい。君達にはもう時間がない。もう一度自分で考えて自分の意志を持ってほしい。誰かの意見に乗るのではなく、自分の意志で考え決めてほしい。 それでも時間がないのは事実だ、一週間後にもう一度聞く。良いね」

「うん」

「君達も良いね」

「「「「うん」」」」

「それならもう戻って良いよ。ガインよろしく」


 ガインと少女達は出て行った。


「前侯爵、これでよろしいでしょうか」

「ああ。後ろにいた子達は椅子に座った子に依存しているみたいだな」

「前侯爵、よろしいでしょうか」

「アイリーン譲、何だ」

「女性は少なからず集団で行動します。貴族でもそうでしたでしょ? 高位令嬢の周りに下位令嬢が付いていましたわ。私は王女でしたから高位令嬢も取り巻きにいましたが、彼女達の世界では椅子に座った子が頭で後の子達は取り巻きみたいなものです。彼女に付いていれば自分は護られると、彼女を持ち上げ何ならおこぼれを貰う、彼女達の方が強かですわよ?」

「そうか」

「自分で決めなくて彼女が決めてくれ、卒院しても彼女の側にいればおこぼれを貰える。確かに彼女の見目ならば愛人になるのも可能でしょう」

「確かにな」

「彼女が毎月貰うお金でも、側にいて使用人の真似事でもすれば住む家と食事は確保出来、後は手頃な男性と結婚すれば良いだけですもの」

「まあ、そうだな」

「後ろにいた子達の方が今頃焦っているのではないでしょうか。今迄は前の彼女に全て決めて貰ってたはずですので、自分で決める事が出来ない彼女達がどの様な答えを出すのか気にはなりますね」

「おんぶに抱っこか」

「はい」

「厄介だな」

「そうですね」

「一週間後にもう一度話を聞いてみるしかないな」

「はい」

「アイリーン譲が話を聞いた針子になりたい子達だが」

「はい。一応、布と針、刺繍糸を渡しました。針の取扱いだけは念入りに説明しました。孤児院には小さい子もいますので」

「そうだな」

「毎日刺繍をする様に伝えてあります。出来上がりを確認し針子を募集している服屋や商店等に声をかける予定です」

「腕次第ですが、商会で雇う事も出来ます。但し、針子の責任者が認めればですが」

「それは当たり前だわ。それなら出来上がりを見せるわね」

「はい、お願いします」

「後…こんな所で言う事ではないのだけど…」

「何でしょう」

「本当にごめんなさいね」

「はい?」

「チャーリー君はあの子と、始めはあの子との関係を築こうとしてくれてたのね」

「そうですね。俺自身が望んだ婚約ではありませんでしたが、貴族に産まれた以上親に決められた婚約に反対する気もありませんでした。それでもいずれお互いを知り愛を育み夫婦になりたいと思いました。時間はありましたから」

「そうね」

「始まりは政略でも結婚する頃には愛し合う事が出来ると信じてましたし、婚約者になった以上彼女以外に目を向けるつもりもありませんでした。それも今更ですが…」

「それは、」

「始めは俺も彼女を愛したいと、これから時間をかけて愛していこうと、信じられないと思いますが、本当にそう望んでいました」

「そう」

「彼女の態度は始めから結局最後まで変わりませんでしたが、それでも別に目を向けた俺が悪いのであって彼女に対して誠実ではなかったのは事実です。縁がなかったと簡単な言葉では本当なら終われませんが、それでも縁がなかったで終わりませんか?

今は俺とアイリーン様は同士です。孤児院の再建を望む同士です。俺が言えた義理ではありませんが、この関係も良くありませんか?」

「ふふっ、そうね」

「はい。それに彼女と婚約破棄したからこそ、俺は心から愛する人に出会えました」

「そうね。私もチャーリー君の幸せを願うわ」

「ありがとうございます」


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