111 / 187
110
しおりを挟む
「貴女、覚悟はできておりますわよね。わたくしに楯突くとは。 わたくし許しませんわ。 貴女を即刻処刑致しますわ」
エステル様は私達を睨みつけている。
「見苦しいぞ!エステル!」
陛下の声が響き渡る。
「おじ様もお聞きになりましたわよね? 即刻この女を処刑して下さいませ」
陛下が私達の所まで歩いて来た。その後ろにはアーサー父様の姿…。
「処刑する理由は何だ」
「王族であるわたくしに楯突いたのですのよ」
「お主は確かに王族の血筋で最も近しい者だ。だが貴族だ、お主にその様な権限はない」
「わたくしはいわれもない事を言われましたのよ?」
「全て本当の事であろう」
「本当の事ではありませんわ。わたくしはここに居る貴族の者達の事を言った訳ではありませんわ。それにその男が不貞をしたのも間違いではありませんわ」
「確かにチャーリーはお主と婚約中に不貞をしたのは事実だ。だがもう裁きは終わった。終わった事をお主はいつまで言うつもりだ」
「それだけわたくしは傷つけられたのですわ」
「傷ついたとな」
「はい、わたくしは傷つけられましたわ」
「ならばチャーリーを傷つけたお主にも裁きを下さないとならんな」
「わたくしはその男を傷つけてなどおりませんわ」
「お主とチャーリーの婚約は七年であったな。その間お主はチャーリーが贈る物を捨て、文句を言い、何処かへ出かければ大声でチャーリーを貶めた。
七年もお主の愚行に耐えたチャーリーが傷つかないと思うのか。
お主達の婚約は私が宰相に頼んだ事だ。チャーリーは時期宰相としての器があったからだ。可愛い姪を託すにはチャーリー以上の者は居ないと思ったからだ。 それに宰相の家系は愛する者を一途に慕う。例え決められた婚約だとしても婚約者に寄り添い大事にし愛する事ができる、慈愛に満ちた者達が多い。 可愛い姪が慈愛に満ちたチャーリーに慕われれば幸せになれると思ったからだ。
チャーリーはお主に何を言われても、下僕の様な扱いをされても愚行に耐え、それでもなお自分を戒め婚約者として在ろうとした。
だがお主はどうだ。 婚約者に寄り添う事もせず、贈られた物を捨て、皆が居る前で婚約者を貶め、さも自分の方が耐えている様に見せかけた。お主は始めからチャーリーを人として見ていなかった。口答え出来ない奴隷の様に扱っていたのだ。違うか!」
「違います。わたくしは婚約者として接していましたわ」
「婚約者として見ていたなら何故、ドレスや宝石を捨てた。 形が気に入らないからか?」
「そうですわ」
「先程エミリーヌが言った様に、職人の誇りを踏み躙る行為だ」
「職人の誇り、それが何ですの?わたくしには関係ありませんわ」
「それならこれからお主は今後、自分の着る物は全て自分で作るのだな。 私が命を下す」
「そんなのあんまりですわ」
「後、色が気に入らないだったか?」
「え、ええ、そうですわ」
「婚約者が婚約者に贈る贈り物は自分の色の物を贈る。自分の色が気に入らないと捨てられたら他人の色を贈れば良いのか?」
「わたくしに似合う色を贈って下さればよろしいのですわ」
「お主は自分の事しか考えられない様だ。自分の色を贈るのはマナーだが、自分の色を贈る思いにお主は寄り添う事もしなかった。
決められた婚約が多い貴族には意に沿わない婚約もあるだろう。 それでもお互いが寄り添う努力をしなければならない。 片方だけ努力をしても駄目なのだ。 片方だけに寄り添う努力をさせるのは下僕と何ら変わらない。 お主はチャーリーにどう寄り添った。申してみよ」
「それは……」
「あ~後、ただの貴族の子はお主は産みたくないのだったな。王族の血筋が入った者との子をチャーリーの子として育てさせるのだったか?」
「え?何故……」
「お主が周りに聞こえる様に話しておったのだろう?」
「ですが本当にするつもりはなかったですわ」
「お主の愚行に耐え続け、下僕の様に扱わられてる者がお主の言葉を信じても仕方あるまい。 不貞をしたチャーリーも悪いが、そうさせたお主にも責任はある。 傷ついたのがお主だけだとは思うな。チャーリーもお主に傷つけられたのだ」
「ですが、わたくし」
「黙れ!」
陛下はチャーリーの方を向いた。
「チャーリーよ、あの時私が姪も同様に裁かなくてはいけなかった。 お主一人に辛い思いをさせた事、本当にすまなかった」
陛下はチャーリーに頭を下げた。
「おやめ下さい、陛下。 不貞をした私が一番悪いのです。陛下が謝る事ではありません」
「だが、あの時、私が裁きを決めるべきだった」
「いえ、平民に落とされ国外追放になった事で私は今の立場を得たのです。ミリー商会の名声を広げ、拡大できたのは、全て愛しい婚約者のお陰です」
チャーリーは私の腰を抱き寄せ、私を愛おしい瞳で見つめる。
「そうか。 だがやはりお主には宰相の器がある」
「いえ、私はミリー商会の経営者です。私はそれだけで充分です」
陛下とチャーリーが話をしている時、エステル様が声を発した。
エステル様は私達を睨みつけている。
「見苦しいぞ!エステル!」
陛下の声が響き渡る。
「おじ様もお聞きになりましたわよね? 即刻この女を処刑して下さいませ」
陛下が私達の所まで歩いて来た。その後ろにはアーサー父様の姿…。
「処刑する理由は何だ」
「王族であるわたくしに楯突いたのですのよ」
「お主は確かに王族の血筋で最も近しい者だ。だが貴族だ、お主にその様な権限はない」
「わたくしはいわれもない事を言われましたのよ?」
「全て本当の事であろう」
「本当の事ではありませんわ。わたくしはここに居る貴族の者達の事を言った訳ではありませんわ。それにその男が不貞をしたのも間違いではありませんわ」
「確かにチャーリーはお主と婚約中に不貞をしたのは事実だ。だがもう裁きは終わった。終わった事をお主はいつまで言うつもりだ」
「それだけわたくしは傷つけられたのですわ」
「傷ついたとな」
「はい、わたくしは傷つけられましたわ」
「ならばチャーリーを傷つけたお主にも裁きを下さないとならんな」
「わたくしはその男を傷つけてなどおりませんわ」
「お主とチャーリーの婚約は七年であったな。その間お主はチャーリーが贈る物を捨て、文句を言い、何処かへ出かければ大声でチャーリーを貶めた。
七年もお主の愚行に耐えたチャーリーが傷つかないと思うのか。
お主達の婚約は私が宰相に頼んだ事だ。チャーリーは時期宰相としての器があったからだ。可愛い姪を託すにはチャーリー以上の者は居ないと思ったからだ。 それに宰相の家系は愛する者を一途に慕う。例え決められた婚約だとしても婚約者に寄り添い大事にし愛する事ができる、慈愛に満ちた者達が多い。 可愛い姪が慈愛に満ちたチャーリーに慕われれば幸せになれると思ったからだ。
チャーリーはお主に何を言われても、下僕の様な扱いをされても愚行に耐え、それでもなお自分を戒め婚約者として在ろうとした。
だがお主はどうだ。 婚約者に寄り添う事もせず、贈られた物を捨て、皆が居る前で婚約者を貶め、さも自分の方が耐えている様に見せかけた。お主は始めからチャーリーを人として見ていなかった。口答え出来ない奴隷の様に扱っていたのだ。違うか!」
「違います。わたくしは婚約者として接していましたわ」
「婚約者として見ていたなら何故、ドレスや宝石を捨てた。 形が気に入らないからか?」
「そうですわ」
「先程エミリーヌが言った様に、職人の誇りを踏み躙る行為だ」
「職人の誇り、それが何ですの?わたくしには関係ありませんわ」
「それならこれからお主は今後、自分の着る物は全て自分で作るのだな。 私が命を下す」
「そんなのあんまりですわ」
「後、色が気に入らないだったか?」
「え、ええ、そうですわ」
「婚約者が婚約者に贈る贈り物は自分の色の物を贈る。自分の色が気に入らないと捨てられたら他人の色を贈れば良いのか?」
「わたくしに似合う色を贈って下さればよろしいのですわ」
「お主は自分の事しか考えられない様だ。自分の色を贈るのはマナーだが、自分の色を贈る思いにお主は寄り添う事もしなかった。
決められた婚約が多い貴族には意に沿わない婚約もあるだろう。 それでもお互いが寄り添う努力をしなければならない。 片方だけ努力をしても駄目なのだ。 片方だけに寄り添う努力をさせるのは下僕と何ら変わらない。 お主はチャーリーにどう寄り添った。申してみよ」
「それは……」
「あ~後、ただの貴族の子はお主は産みたくないのだったな。王族の血筋が入った者との子をチャーリーの子として育てさせるのだったか?」
「え?何故……」
「お主が周りに聞こえる様に話しておったのだろう?」
「ですが本当にするつもりはなかったですわ」
「お主の愚行に耐え続け、下僕の様に扱わられてる者がお主の言葉を信じても仕方あるまい。 不貞をしたチャーリーも悪いが、そうさせたお主にも責任はある。 傷ついたのがお主だけだとは思うな。チャーリーもお主に傷つけられたのだ」
「ですが、わたくし」
「黙れ!」
陛下はチャーリーの方を向いた。
「チャーリーよ、あの時私が姪も同様に裁かなくてはいけなかった。 お主一人に辛い思いをさせた事、本当にすまなかった」
陛下はチャーリーに頭を下げた。
「おやめ下さい、陛下。 不貞をした私が一番悪いのです。陛下が謝る事ではありません」
「だが、あの時、私が裁きを決めるべきだった」
「いえ、平民に落とされ国外追放になった事で私は今の立場を得たのです。ミリー商会の名声を広げ、拡大できたのは、全て愛しい婚約者のお陰です」
チャーリーは私の腰を抱き寄せ、私を愛おしい瞳で見つめる。
「そうか。 だがやはりお主には宰相の器がある」
「いえ、私はミリー商会の経営者です。私はそれだけで充分です」
陛下とチャーリーが話をしている時、エステル様が声を発した。
118
お気に入りに追加
2,307
あなたにおすすめの小説
【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?
早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。
物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。
度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。
「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」
そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。
全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
けじめをつけさせられた男
杜野秋人
恋愛
「あの女は公爵家の嫁として相応しくありません!よって婚約を破棄し、新たに彼女の妹と婚約を結び直します!」
自信満々で、男は父にそう告げた。
「そうか、分かった」
父はそれだけを息子に告げた。
息子は気付かなかった。
それが取り返しのつかない過ちだったことに⸺。
◆例によって設定作ってないので固有名詞はほぼありません。思いつきでサラッと書きました。
テンプレ婚約破棄の末路なので頭カラッポで読めます。
◆しかしこれ、女性向けなのか?ていうか恋愛ジャンルなのか?
アルファポリスにもヒューマンドラマジャンルが欲しい……(笑)。
あ、久々にランクインした恋愛ランキングは113位止まりのようです。HOTランキング入りならず。残念!
◆読むにあたって覚えることはひとつだけ。
白金貨=約100万円、これだけです。
◆全5話、およそ8000字の短編ですのでお気軽にどうぞ。たくさん読んでもらえると有り難いです。
ていうかいつもほとんど読まれないし感想もほぼもらえないし、反応もらえないのはちょっと悲しいです(T∀T)
◆アルファポリスで先行公開。小説家になろうでも公開します。
◆同一作者の連載中作品
『落第冒険者“薬草殺し”は人の縁で成り上がる』
『熊男爵の押しかけ幼妻〜今日も姫様がグイグイ来る〜』
もよろしくお願いします。特にリンクしませんが同一世界観の物語です。
◆(24/10/22)今更ながら後日談追加しました(爆)。名前だけしか出てこなかった、婚約破棄された側の侯爵家令嬢ヒルデガルトの視点による後日談です。
後日談はひとまず、アルファポリス限定公開とします。
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる