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馬車が速度をおとしゆっくりになった。窓の外を見ると王宮が目の間にあった。光で灯され幻想的な王宮に思わず、
「綺麗…」
「エリー?」
「私、夜会来るの初めてなの」
「そうだったね」
「私も緊張してきちゃった。どうしよう。 やっぱり帰らない?」
「侯爵になったんだよ?」
「繋がりでしょ?何を話して良いのか分からないし。 チャーリーは私の婚約者よね?」
「もしかして俺に相手しろって?」
「駄目?」
「キャメル侯爵家の事知らないのにどうやって受け答えするんだよ」
「そうよね…。でももしマナーが出来て無かったら?」
「そこは俺がフォローするから」
「本当?ならちょっと安心した」
「多分俺が横に居る以上、俺との関係を根掘り葉掘り聞き出そうとすると思うよ?」
「聞いてどうするの?」
「貴族は他家を貶める為に噂話が好きなんだよ」
「他人の事なんて他っておけば良いのに」
「さあ着いたわよ」
馬車が止まり、扉が外から開けられた。
ローラ母様が御者の手を借り降りて、チャーリーの膝の上から降ろされた。チャーリーが扉に手をやり扉を閉め、
「どうしたの?」
「一度エリーを抱き締めさせて?」
「緊張してるの?」
「だいぶね」
私はチャーリーを抱き締めた。
「私が隣に居る。離れないから」
チャーリーも私を抱き締め、
「ああ、隣に居てほしい」
チャーリーが優しい私の頬を包む。
「エリー、愛してる」
私の額に口付けした。
「私もチャーリーを愛してる」
もう一度ギュッと力強く抱き締められ、
「さあ、行こうか」
「うん」
チャーリーは扉を開け、先に降りて私に手を差し出した。私はチャーリーの手を取り馬車を降りる。
大勢の人の目が私達を注目している。
ローラ母様は私達の横に並んだ。
「二人共良い?前を向いて堂々となさい。二人は婚約者、そしてチャーリーは侯爵令息、エミリーヌちゃんは侯爵なのよ。堂々と胸を張りなさい。 自分を下げるのだけはやめなさい。良いわね」
「はい、母上」
「はい、ローラ母様」
「さあ、行くわよ」
「「はい」」
私はチャーリーの腕に手を添えて、チャーリーにエスコートされ、私達は入口に着いた。ローラ母様が招待状を見せて、私達は夜会会場の中へ入った。
きらびやかなシャンデリア、大勢の人。デビュタントで一度来ただけで、景色まで見れなかった。違うわね、俯いていたから見てなかった。
大勢の人の目が私とチャーリーを見つめる。ざわざわと皆が話してる。
チャーリーの腕に添えてる手に力が入る。
チャーリーの反対の手が私の手の上に乗せられ握られた。私はチャーリーの方を向いた。チャーリーの優しい瞳、「大丈夫」と言ってる様…。
ローラ母様の後ろを着いて会場を進む。キティ姉様の姿を見つけて少し安堵した。キティ姉様の他に数人の夫人がソファーに腰掛けていた。
「キティお待たせ」
「注目の的ね」
「そうね」
「チャーリー、貴方緊張してるの?」
「緊張してますよ」
「堂々としてなさい」
「はい」
「エミリーヌちゃん、チャーリーをお願いね」
「役不足だとは思いますが」
キティ姉様と話し少し緊張が解れた。
「エミリーヌ、皆様にご挨拶なさい」
「はい、ローラ母様」
「皆様、キャメル侯爵エミリーヌと申します。以後お見知りおきを」
「エミリーヌは私の息子の婚約者ですの。皆様よろしくお願い致しますわ」
「ローラ様、息子さんをご紹介して頂けないのかしら」
「息子のチャーリーですわ。ミリー商会の経営者をしておりますの」
「ミリー商会?まあ、とてもご立派なご子息ですのね」
「ええ、自慢の息子ですのよ?婚約者のエミリーヌもとても可愛らしい娘ですの」
「まあ」
ご婦人達は扇子で口元を隠している為、好意的なのか少し分かりにくい。
「チャーリー?チャーリーじゃないか!」
突然後ろから大きな声をかけられた。
「ああ、久しぶりだな」
「本当に久しぶりだな。お前が婚約破棄して以来か」
「そうだな」
「元気にしてたのか」
「ああ、この通り元気にしてる」
「お前婚約破棄されて平民になったんじゃなかったのか?」
「そうだが」
「平民なのに貴族の夜会に出席してるのか?」
「今は侯爵令息だ」
「それは元だろ?元侯爵令息だ。それに国外追放されたはずなのにどうしてこの国に居るんだ」
「この国へ立ち入る事を陛下に認められた。今はこの国の貴族だ」
「そんなはずはない」
「それよりお前は今どうしてる」
「俺か?俺は今文官として王宮勤めだ」
「お前が文官な」
「何だ、負け惜しみか?」
「別に負け惜しみじゃないさ。ただ、文官が務まるのか心配なだけだ」
「何だと!時期宰相と言われても宰相にもなれないだろうが。婚約者がいながら不貞した奴が!」
「そうだ、宰相にはなれない。だけど別に今は宰相になりたいとも思わない」
「お前みたいな奴が宰相になれるか!」
「俺は王宮勤めをするつもりはない」
「どれたけ頭がよくて賢くても落ちぶれたら終わりだ。惨めだな」
「惨めか…。宰相にもなれず、不貞で婚約破棄されて確かに惨めかもな。だけど今はそれで良かったと思ってるよ」
「ふん!強がりか?」
「嫌、本心だ」
「綺麗…」
「エリー?」
「私、夜会来るの初めてなの」
「そうだったね」
「私も緊張してきちゃった。どうしよう。 やっぱり帰らない?」
「侯爵になったんだよ?」
「繋がりでしょ?何を話して良いのか分からないし。 チャーリーは私の婚約者よね?」
「もしかして俺に相手しろって?」
「駄目?」
「キャメル侯爵家の事知らないのにどうやって受け答えするんだよ」
「そうよね…。でももしマナーが出来て無かったら?」
「そこは俺がフォローするから」
「本当?ならちょっと安心した」
「多分俺が横に居る以上、俺との関係を根掘り葉掘り聞き出そうとすると思うよ?」
「聞いてどうするの?」
「貴族は他家を貶める為に噂話が好きなんだよ」
「他人の事なんて他っておけば良いのに」
「さあ着いたわよ」
馬車が止まり、扉が外から開けられた。
ローラ母様が御者の手を借り降りて、チャーリーの膝の上から降ろされた。チャーリーが扉に手をやり扉を閉め、
「どうしたの?」
「一度エリーを抱き締めさせて?」
「緊張してるの?」
「だいぶね」
私はチャーリーを抱き締めた。
「私が隣に居る。離れないから」
チャーリーも私を抱き締め、
「ああ、隣に居てほしい」
チャーリーが優しい私の頬を包む。
「エリー、愛してる」
私の額に口付けした。
「私もチャーリーを愛してる」
もう一度ギュッと力強く抱き締められ、
「さあ、行こうか」
「うん」
チャーリーは扉を開け、先に降りて私に手を差し出した。私はチャーリーの手を取り馬車を降りる。
大勢の人の目が私達を注目している。
ローラ母様は私達の横に並んだ。
「二人共良い?前を向いて堂々となさい。二人は婚約者、そしてチャーリーは侯爵令息、エミリーヌちゃんは侯爵なのよ。堂々と胸を張りなさい。 自分を下げるのだけはやめなさい。良いわね」
「はい、母上」
「はい、ローラ母様」
「さあ、行くわよ」
「「はい」」
私はチャーリーの腕に手を添えて、チャーリーにエスコートされ、私達は入口に着いた。ローラ母様が招待状を見せて、私達は夜会会場の中へ入った。
きらびやかなシャンデリア、大勢の人。デビュタントで一度来ただけで、景色まで見れなかった。違うわね、俯いていたから見てなかった。
大勢の人の目が私とチャーリーを見つめる。ざわざわと皆が話してる。
チャーリーの腕に添えてる手に力が入る。
チャーリーの反対の手が私の手の上に乗せられ握られた。私はチャーリーの方を向いた。チャーリーの優しい瞳、「大丈夫」と言ってる様…。
ローラ母様の後ろを着いて会場を進む。キティ姉様の姿を見つけて少し安堵した。キティ姉様の他に数人の夫人がソファーに腰掛けていた。
「キティお待たせ」
「注目の的ね」
「そうね」
「チャーリー、貴方緊張してるの?」
「緊張してますよ」
「堂々としてなさい」
「はい」
「エミリーヌちゃん、チャーリーをお願いね」
「役不足だとは思いますが」
キティ姉様と話し少し緊張が解れた。
「エミリーヌ、皆様にご挨拶なさい」
「はい、ローラ母様」
「皆様、キャメル侯爵エミリーヌと申します。以後お見知りおきを」
「エミリーヌは私の息子の婚約者ですの。皆様よろしくお願い致しますわ」
「ローラ様、息子さんをご紹介して頂けないのかしら」
「息子のチャーリーですわ。ミリー商会の経営者をしておりますの」
「ミリー商会?まあ、とてもご立派なご子息ですのね」
「ええ、自慢の息子ですのよ?婚約者のエミリーヌもとても可愛らしい娘ですの」
「まあ」
ご婦人達は扇子で口元を隠している為、好意的なのか少し分かりにくい。
「チャーリー?チャーリーじゃないか!」
突然後ろから大きな声をかけられた。
「ああ、久しぶりだな」
「本当に久しぶりだな。お前が婚約破棄して以来か」
「そうだな」
「元気にしてたのか」
「ああ、この通り元気にしてる」
「お前婚約破棄されて平民になったんじゃなかったのか?」
「そうだが」
「平民なのに貴族の夜会に出席してるのか?」
「今は侯爵令息だ」
「それは元だろ?元侯爵令息だ。それに国外追放されたはずなのにどうしてこの国に居るんだ」
「この国へ立ち入る事を陛下に認められた。今はこの国の貴族だ」
「そんなはずはない」
「それよりお前は今どうしてる」
「俺か?俺は今文官として王宮勤めだ」
「お前が文官な」
「何だ、負け惜しみか?」
「別に負け惜しみじゃないさ。ただ、文官が務まるのか心配なだけだ」
「何だと!時期宰相と言われても宰相にもなれないだろうが。婚約者がいながら不貞した奴が!」
「そうだ、宰相にはなれない。だけど別に今は宰相になりたいとも思わない」
「お前みたいな奴が宰相になれるか!」
「俺は王宮勤めをするつもりはない」
「どれたけ頭がよくて賢くても落ちぶれたら終わりだ。惨めだな」
「惨めか…。宰相にもなれず、不貞で婚約破棄されて確かに惨めかもな。だけど今はそれで良かったと思ってるよ」
「ふん!強がりか?」
「嫌、本心だ」
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