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「俺は学園に入り元婚約者をエスコートしてお茶会や夜会へ行き、社交をした。キャメル侯爵家の噂話は耳にしていた。前侯爵の噂、当主の噂、その中に数年前から残念侯爵の代わりに当主の仕事をしている者が居るってね。娘が二人居るけど、二人共まだ子供だ。執事が代わりにして印だけ残念侯爵が押してるのかってね。俺はその話が気になり家に帰って過去の請求書を見た。家も君の家の小麦を卸して貰ってるからね。
家は請求書を全て管理しててね。普通なら請求書は書類を作成したら数年分残して過去の物から捨てていく。請求書だって貯まればゴミだ。
俺は前侯爵の時代から請求書を調べた。前侯爵の字から君のお父上の字、数年開いてまた別の者の字。確かに当主の代わりに仕事をしている者が居るってね。 俺も執事だと思った。子供がそれもまだ学園にも入ってない子供がしてるなんて想像すら出来なかった。
でもね、時期当主の君が、まだ学園にも入学出来ない君が当主代理として当主の仕事をしていると噂話をする者がいた。 手紙のやり取りしかしてなくても君の仕事はきちんとしていた。簡単な文だけど請求書を送る際の手紙に「先月は入金ありがとうございました」と毎度書いてあったしね」
「それはジムに言われたの。一言書いた方が良いって。私もお礼は必要だと思ったから言われた通りに書いただけよ?」
「それでもその一言で入金を確認してるって事は理解出来る。謝礼を手書きする事で当主の仕事を手抜きせずしている事が分かる」
「そうかも知れないけど、私は言われた通りにしただけ。凄いのはジムだわ」
「確かにジムさんは優秀な執事だ。君に教えながら執事として補佐をした」
「ええ」
「君が当主代理として仕事をしている噂話は君のお父上が夜会での対応や話す会話から、子供の君が代わりにしている事を察する者はいる。 君の噂は悪い噂が多かったのは確かだけど、途中から悪く言われる様になったのは君のお父上とお母上の方だ。
学園に入学してない子供を当主代理として働かせ、自分達は好きなだけお金を使う。邸から出して貰えず働かせている。ドレスや宝石は夫人と妹さんの分しか買わない。お抱えのドレス職人や宝石商が居ても、職人や宝石商は他家にも出入りする。話は広まるんだ。噂話としてね。
庇護下で護るべき子供を働かせ、ドレスや宝石を買い与えない。それだけで子供を虐げ蔑ろにしていると言う事実なんだ。まさか食事は使用人と一緒とは思わなかったし、ドレスは与えなくても服は与えてると思っていたよ。
子供の君が陛下に送る書類とかに「助けて」と書けば良かっただけなんだ。そしたら陛下が君をあの両親から護れた。多分、君の家には国へ提出する書類が多かったはずだ」
「それは小麦が…」
「本当は君の助けを直ぐ受け取れる様になんだよ?」
「そうなの?」
「ああ。陛下は知っていた。まだ子供の君が当主代理としてお父上の代わりに働いていた事を。けどね、侯爵家は没落しても乗っ取られても困るんだ。小麦を主に扱う侯爵家を乗っ取れば一生贅沢出来る。前侯爵は卸す家やお店に寄って値段を変えていた。確かに品質も変わるけどそれだって微々たるものだ。毎日食べる物だからね、お金が支払えず使用人達に食べさせない事が無いように請求する金額が違う。
だけど乗っ取った者が一律に請求したら?資金繰りに厳しい家やお店は没落するしかなくなる。 その為にも侯爵家には存続して貰わないといけなかった。
本来なら時期当主は当主の留守を預かる時の存続。当主が居ながら継続的に時期当主が代わりにする事はあってはならない。 陛下は知ってはいたけど目を瞑った。 時期当主の君が代わりに働いていたのを目を瞑るしか出来なかったんだ。 侯爵家と侯爵領を護る為にね」
「そうね…」
「ああ。だから今日、父上が来た。ようやく君が助けを求めたから」
「求めてないわよ?」
「嫌、ご両親が帰って来たら一騒動起こる事は分かっていた。君がご両親を納得させられない事も。前侯爵が情に厚い事も。全て分かっているから、グレンさんに頼んだんだ。両親が帰って来たら教えて欲しいと。エミリーヌの側にいて心を癒やしたいと」
「え?」
「心の癒やしが必要な場合は何だと思う?」
「心が乱れるから?」
「そう。なら乱れる原因は何?」
「両親が帰って来たから」
「そう。それで俺はエミリーヌを助けたいから教えてくれと頼んだ」
「うん」
「俺は父上に助けを求めた。君を護る為に」
「うん」
「俺と君は恋人同士だ」
「うん」
「恋人の危機を俺は父上に知らた」
「うん」
「結果君は助けを求めた事になるんだよ」
「それってこじつけじゃない?」
「こじつけさ~。だけどこれで陛下は堂々と手を出せる様になり、ご両親を貴族として罰せられるんだ」
「もう平民じゃないの?」
「陛下の印は押されてないはずだよ?」
「え?」
「多分、前侯爵は知ってるんじゃないかな?だけど知らないフリをしていると思う」
「そうなの?」
「多分ね。当主を剥奪されてお金を自由に使えなくした書類は受理されてるはずだけど、貴族籍を抜いた書類は受理されてないんじゃないかな?」
「そう……」
「俺が陛下なら平民に落とす前に貴族として罰する。その方がより重罪だ。それに平民に落としたら逃げ得じゃないか。俺ならそうするね」
「そう。流石時期宰相と言われた男よね」
「褒めてる?」
「呆れてる」
「え~俺、エミリーヌに褒められると思ったのに。だけど俺も詳しい話は父上に先日聞いたばかりなんだけどね」
「でもありがとう」
「うん。愛してる。俺の愛しい人」
「私も愛してる。私の格好いい人」
チャーリーにギュッとされ、見つめ合い、唇が重なり口付けを交わした。
チャーリーは御者の窓をノックした。
家は請求書を全て管理しててね。普通なら請求書は書類を作成したら数年分残して過去の物から捨てていく。請求書だって貯まればゴミだ。
俺は前侯爵の時代から請求書を調べた。前侯爵の字から君のお父上の字、数年開いてまた別の者の字。確かに当主の代わりに仕事をしている者が居るってね。 俺も執事だと思った。子供がそれもまだ学園にも入ってない子供がしてるなんて想像すら出来なかった。
でもね、時期当主の君が、まだ学園にも入学出来ない君が当主代理として当主の仕事をしていると噂話をする者がいた。 手紙のやり取りしかしてなくても君の仕事はきちんとしていた。簡単な文だけど請求書を送る際の手紙に「先月は入金ありがとうございました」と毎度書いてあったしね」
「それはジムに言われたの。一言書いた方が良いって。私もお礼は必要だと思ったから言われた通りに書いただけよ?」
「それでもその一言で入金を確認してるって事は理解出来る。謝礼を手書きする事で当主の仕事を手抜きせずしている事が分かる」
「そうかも知れないけど、私は言われた通りにしただけ。凄いのはジムだわ」
「確かにジムさんは優秀な執事だ。君に教えながら執事として補佐をした」
「ええ」
「君が当主代理として仕事をしている噂話は君のお父上が夜会での対応や話す会話から、子供の君が代わりにしている事を察する者はいる。 君の噂は悪い噂が多かったのは確かだけど、途中から悪く言われる様になったのは君のお父上とお母上の方だ。
学園に入学してない子供を当主代理として働かせ、自分達は好きなだけお金を使う。邸から出して貰えず働かせている。ドレスや宝石は夫人と妹さんの分しか買わない。お抱えのドレス職人や宝石商が居ても、職人や宝石商は他家にも出入りする。話は広まるんだ。噂話としてね。
庇護下で護るべき子供を働かせ、ドレスや宝石を買い与えない。それだけで子供を虐げ蔑ろにしていると言う事実なんだ。まさか食事は使用人と一緒とは思わなかったし、ドレスは与えなくても服は与えてると思っていたよ。
子供の君が陛下に送る書類とかに「助けて」と書けば良かっただけなんだ。そしたら陛下が君をあの両親から護れた。多分、君の家には国へ提出する書類が多かったはずだ」
「それは小麦が…」
「本当は君の助けを直ぐ受け取れる様になんだよ?」
「そうなの?」
「ああ。陛下は知っていた。まだ子供の君が当主代理としてお父上の代わりに働いていた事を。けどね、侯爵家は没落しても乗っ取られても困るんだ。小麦を主に扱う侯爵家を乗っ取れば一生贅沢出来る。前侯爵は卸す家やお店に寄って値段を変えていた。確かに品質も変わるけどそれだって微々たるものだ。毎日食べる物だからね、お金が支払えず使用人達に食べさせない事が無いように請求する金額が違う。
だけど乗っ取った者が一律に請求したら?資金繰りに厳しい家やお店は没落するしかなくなる。 その為にも侯爵家には存続して貰わないといけなかった。
本来なら時期当主は当主の留守を預かる時の存続。当主が居ながら継続的に時期当主が代わりにする事はあってはならない。 陛下は知ってはいたけど目を瞑った。 時期当主の君が代わりに働いていたのを目を瞑るしか出来なかったんだ。 侯爵家と侯爵領を護る為にね」
「そうね…」
「ああ。だから今日、父上が来た。ようやく君が助けを求めたから」
「求めてないわよ?」
「嫌、ご両親が帰って来たら一騒動起こる事は分かっていた。君がご両親を納得させられない事も。前侯爵が情に厚い事も。全て分かっているから、グレンさんに頼んだんだ。両親が帰って来たら教えて欲しいと。エミリーヌの側にいて心を癒やしたいと」
「え?」
「心の癒やしが必要な場合は何だと思う?」
「心が乱れるから?」
「そう。なら乱れる原因は何?」
「両親が帰って来たから」
「そう。それで俺はエミリーヌを助けたいから教えてくれと頼んだ」
「うん」
「俺は父上に助けを求めた。君を護る為に」
「うん」
「俺と君は恋人同士だ」
「うん」
「恋人の危機を俺は父上に知らた」
「うん」
「結果君は助けを求めた事になるんだよ」
「それってこじつけじゃない?」
「こじつけさ~。だけどこれで陛下は堂々と手を出せる様になり、ご両親を貴族として罰せられるんだ」
「もう平民じゃないの?」
「陛下の印は押されてないはずだよ?」
「え?」
「多分、前侯爵は知ってるんじゃないかな?だけど知らないフリをしていると思う」
「そうなの?」
「多分ね。当主を剥奪されてお金を自由に使えなくした書類は受理されてるはずだけど、貴族籍を抜いた書類は受理されてないんじゃないかな?」
「そう……」
「俺が陛下なら平民に落とす前に貴族として罰する。その方がより重罪だ。それに平民に落としたら逃げ得じゃないか。俺ならそうするね」
「そう。流石時期宰相と言われた男よね」
「褒めてる?」
「呆れてる」
「え~俺、エミリーヌに褒められると思ったのに。だけど俺も詳しい話は父上に先日聞いたばかりなんだけどね」
「でもありがとう」
「うん。愛してる。俺の愛しい人」
「私も愛してる。私の格好いい人」
チャーリーにギュッとされ、見つめ合い、唇が重なり口付けを交わした。
チャーリーは御者の窓をノックした。
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