妹がいなくなった

アズやっこ

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80 書斎の中の会話

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「お前は自分の娘に何をした」

「エミリーヌは娘ではありません!」

「エミリーはお前の娘だ。自分の子供の頬を叩いたのか!」

「仕方ないではありませんか。あいつの顔を見ているとムシャクシャして胸くそ悪いんですから」

「何だと!お前と言う奴は!」

「それに俺の子供は娘はサラフィスだけです」

「何を言うか。エミリーもお前の娘だ」

「では父上、俺の娘だと何故思うんです?婚姻してから出来た子供はサラフィスだけです。あの子は俺の子供か分からないじゃないですか」

「エミリーヌもあなたの子です。あなたが大丈夫と言ったから」

「俺と身体を繋げた後に他の男と繋げていたかもしれないだろうが」

「私はそんなふしだらではありません。あなたが大丈夫と言うから、お願いと言うから。 私は婚姻するまで嫌と言いました。あなたが無理矢理繋げたんではないですか。エミリーヌはあなたの子です」

「それでも俺には分からないではないか」

「あなたと同じ髪の色で瞳の色なのですよ。あなたの子です」

「俺の子供だとしても、それでも婚姻前に出来た忌み子だ」

「なら何故婚姻前に身体を繋げようとしたんです。繋げれば子が出来るくらい知っていたでしょ」

「それは……」

「此奴がエミリーを娘と認めなかったのは分かった。お前は何故エミリーをサラと同じ様に可愛がらなかった」

「それは……エミリーヌを産んでようやく体調が戻った時にまた子が出来て。悪阻も酷くて自分でエミリーヌを見れませんでした。子がお腹の中にいるので抱く事もお乳をあげる事も出来ず、サラが産まれたら赤子のサラを育てました。 サラには自分でお乳をあげ、おしめを変え、抱きあやし、旦那様もサラを可愛い可愛いと」

「お前は俺のせいだと言うのか!」

「違います。私もサラが可愛いかった。ようやく赤子を自分の手で育てれて嬉しかったのです。自分のお乳をあげ育て上げたサラをサラだけが自分の子に思えて愛情をかけました」

「サラが産まれた時、エミリーもまだ赤子だった。自分が産んだ子だろ。 お乳をあげたから、おしめを変えたからでエミリーを愛せなかったならエミリーが少し大きくなってから子を作れば良かった。エミリーが腹に出来た時に分かっていたはずだ。子が出来る行為をすれば子が出来ると。何故お前等は学習せん」

「ですがエミリーヌはお義母様が面倒みていました。だから私はサラを育てたのです」

「ヘレンはお前がまた懐妊して体調が悪いからお前の代わりに赤子のエミリーの面倒を見た。赤子は一人では育たない。誰かが手を掛け面倒見なくてはいけないからだ。可愛い孫だ。それにエミリーは侯爵家の大事な跡取りだ。お前の代わりに出産するまでの間エミリーを育てた。サラが産まれお前がエミリーも面倒を見ると思ったがお前はサラしか育てなかった。だからヘレンはお前の代わりにエミリーを育てた。お前はエミリーを捨てたんだ」

「お義父様それは違います。私はエミリーヌを捨ててなどいません。私だってエミリーヌを育てたかった。ですがサラの方がエミリーヌより手が掛かります。エミリーヌにはお義母様もメイドも居た。だから私は仕方なく」

「お前は自分が被害者か?ヘレンやメイドがお前からエミリーを奪ったのか? お前が育てようとしなかったからだ。お前がサラばかり可愛いがりエミリーを可愛いがらなかったからだ。 それを捨てたって言うんだ。 被害者はエミリーだ。お前ではない。 お前はエミリーが幼児になっても結局可愛いがらなかった。サラばかり可愛いがり、サラばかり物を買った。違うか」

「確かにサラばかり可愛いがりました。赤子の時から自分で育てた子です。可愛いに決まってます。ですが、エミリーヌは私に懐く事もなく、私が育てた子ではありません。愛情がどこに湧くと…」



「もう良い!黙れ! エミリーヌはお前等の子ではない。儂とヘレンの子だ。儂とヘレンの子はエミリーヌただ一人」

「父上、俺は父上と母上の子です」

「それだって分からんではないか。養子かもしれんだろうが」

「俺は父上と同じ髪の色で瞳の色です」

「儂の子はエミリーヌただ一人。儂の血を引き継ぐのは儂と同じ髪と瞳を持ったエミリーヌだけだ」

「父上!!」

「お前等がいつ身体を繋げようが別に構わんがな、責任も取れん若造なら取れん事はするな。今更言っても仕方ないがな。

だかな、子が出来た以上、子に責任を果たすのが親だ。お前等はいつまで子供のままでいる。 お前等は親として何故エミリーを可愛いがらなかった。 お前等はサラばかり可愛いがって。エミリーもサラもお前等の子だ。 それをエミリーをメイドに任せ、部屋に閉じ込め、着る物も与えず、食事もメイドと同じ、お前達は自分達の子供のエミリーを蔑ろにした。

儂はお前にエミリーに渡すお金を渡しただろ。その金はどうした。答えろ!」

「それは…」

「毎月何に使った」

「壺と、絵に…」

「何故エミリーのお金をお前が使う」

「エミリーヌのお金は侯爵家のお金です。当主の俺が何に使おうが関係ありません」

「エミリーは親の庇護下で護られる子供だった。当主のお前がエミリーを護らないから儂が護った。充分な食事に充分な服を買う為にな。儂はお前を信じてお金を渡したんだ。当主として親として責任を持つ様にとな。お前は儂の信用も失った。

儂は自分の子を蔑ろにする奴を護ろうとは思わん」

「父上、俺は父上の子です」

「そうだったな。だがお前は成人した立派な大人だ。もう一個人の大人だ。 儂はお前が成人する前まではお前を庇護下で護り、充分な食事に充分な服、日が当たる部屋に勉学に乏しいお前に家庭教師も付けた。 儂は親としてお前を育て護った。

お前は成人した大人だ。儂の子供だとしてももう護る義務はない」

「そんな…」

「なら何故エミリーを蔑ろにした」

「それは……俺の子じゃないと」

「お前等は子を身籠り急いで婚姻した。お前が自分の子でないと言い張るのならそもそも婚姻しなければ良かったんだ。何故婚姻した」

「それは…………」

「お前も自分の子だと分かっていたからだ。 例え自分の子でないと思ったとしても、子を身籠り婚姻した時点で妻の腹の子はお前も認めた子だ。

自分の子ではないと言う理由で蔑ろにして良い事ではない」


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