妹がいなくなった

アズやっこ

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「少しはスッキリしたか?」

「全部がスッキリした訳じゃないわ。(ズズっ)」

「そんなのはな、これから皆の愛情を受け取れば忘れていくもんだ」

「そうなの?(ズズっ)」

「そうだ。これからは皆の愛情が分かる様になる。エミリーヌの心が受け取る準備が出来たからな。今迄受け取ってた優しさを心が気づく。優しさが積もれば心が満たされる」

「そう?」

「ああ。俺からの愛情だ」


  チュッ


 チャーリーは額に口付けを落とした。

 私は額に手をやり、


「ちょっと?」

「これは目に見える愛情表現だ」

「目に見える?」

「ああ。親が子供に目に見える愛情表現として額に(チュッ)、頬に(チュッ)、口付けする」

「うん。だけど恋人とは何が違うの?」

「恋人同士でも額や頬に口付けをする。だけど恋人同士はここ唇に口付けをする」


 ここと言ってチャーリーは指で私の唇を押さえた。


「うん。恋人同士の目に見える愛情表現って事?」

「そうだよ。手を繋ぐとかね。だけど嫌な人とは手を繋いだり口付けなんて出来ないだろ?」

「うん」

「婚約者だってそうだ。嫌な人なら出来ないだろ?」

「うん」

「でも、好きになる事が出来たら手を繋いだり口付けしたり出来るだろ?」

「そうね」

「それに恋する、愛するって言う思いは貰うだけでは駄目だよな?」

「うん」

「貰ったら返さないとな?」

「うん」

「お互いを知って、お互いを理解して、お互いが受け取り与える。そうして少しづつ恋して愛するんだ」

「うん」

「婚約者は自分を愛してくれる人なら誰でも良いって言ったけど、エミリーヌも婚約者を愛さないといけない。それは分かるのな?」

「うん」

「エミリーヌにも相手に求めるものはあるだろ? 自分を愛してくれる人以外だぞ?」

「グレンにも言われたの。でもグレンの様に私を理解してくれて我儘も聞いてくれて弱みも見せられて、ジムの様に仕事を一緒にしてくれて、メイの様に私を見てくれて助けてくれる。そんな人居ないでしょ? それに私と一緒に全部背負ってくれる人なんて居る? そこに私を愛して欲しいのよ? 愛人とか作らないで私と子供を大事に大切に思ってくれる人。 多分、きっと、私、子供育てられるか分からない。 だってどう接すれば良いの? 私もお父様やお母様みたいに子供に愛情をあげられないかもしれないわ。 それでも許してくれる人なんて居る?」

「そうだな。居るかもしれないし居ないかもしれない。だけど、どれだけ相手と心を見せ合い、通わせ合うか、だと思うけどな。 さっきも言ったけど思いは受け取り与えないといけないよな? そこに愛情が出来る。 愛情があれば愛人は作らない。 我儘だって可愛いって思うだろう。 結婚すれば一緒に助け合いながら生活し生きてく。 その中で仕事や子育ても一緒にすれば良い。 母親の愛情が無くても父親がその分子供を愛してやれば良い。 エミリーヌの背負う物も半分受け取ってくれるさ」

「そんな人を探すって事?」

「そうだな。さっきみたいに心をさらけ出すのは怖いと思う。だけどきっとエミリーヌを受け止めて受け入れてくれる人が現れるよ。大丈夫」

「それはチャーリーじゃないって事?」

「俺は元婚約者に誠実に出来なかったろくでなしだ」

「でもあれは元婚約者が」

「それでも婚約者が居ながら他の女性に現を抜かす下衆な男だ」

「まだ自分を許せない?」

「一生許す事は出来ないし、許される事はない」

「ならチャーリーは一生結婚しないの?」

「そうだな」

「恋は?」

「恋はするかもしれない」

「恋したら結婚したいでしょ?子供だって欲しいでしょ?」

「ろくでなしに結婚や子供なんて贅沢だろ?」

「どうして? もう罪は償ったわ」

「俺の罪は償いが終わる事なんてないんだ」

「どうして? 婚約者以外を好きになったから? 不貞をしたから?」

「そうだ」

「婚約者があんな人だったのに?」

「それでもだ。それでも俺はしてはいけない事をした。貴族としても婚約者としても」

「チャーリーだって初めから恋人を作ろう、愛人にしようって思ってなかったでしょ? 婚約者と心を通わそうとしたでしょ? 婚約者を理解しようとしたでしょ?」

「婚約者と心を通わせれないから、理解出来ないからって恋人を作って身体の関係を持ったんだぞ?

心が壊れていた、確かにそうだったと思う。癒やしを求めた、そうかもな。 それでも恋人を作り身体を求めたのは俺だ」

「そうだけど、だけど…」

「ならお前は他の女性と身体の関係を持っていた男性を好きになるか? 自分が好きになった人が元婚約者が居ながら恋人を作り身体の関係もあったって分かってもその人を嫌いにならないのか? 自分と婚約しても恋人を作るかもしれない、結婚しても愛人を作るかもしれない、今でも自分以外で身体を繋げてるかもしれない、これからも繋げるかもしれないって思わないのか?」

「私はチャーリーを信じる」

「そういう事じゃない」

「そういう事よ。私はチャーリーを信じる。誰が責めても味方になる。皆が離れても私は側に居る。私は絶対にチャーリー見捨てない」

「お前な…」

「チャーリーは心通わせた相手に対して酷い事はしない。心から愛した人が出来たら他に現を抜かしたりしない。愛した人を悲しませる事なんてしない」

「どうして言いきれる?」

「私の醜い心の中を、さらけ出した思いを綺麗って言ったから」

「それだけでか?」

「それでも私に対する思いは何一つ変わらない。なら私だってチャーリーに対する思いは何一つ変わらないわ。貰ったら返さないと、でしょ?」

「それは違うんじゃないか?」

「そう?ならそうね。

お兄さん、お兄さんの罪、私が許してあげる。もう充分償ったわ。だから私が許してあげる。お兄さんはもう自由よ? お兄さんはとても真面目な方なの。真面目過ぎるから自分を許せないの。だからね、お兄さんの代わりに私が許してあげる。

もう自分を許してあげて? お兄さんも愛する人を見つけて。そして今度は愛する人を大事に大切にするの。 お兄さんなら出来るわ。だってお兄さんは心が広くてどんな事でも受け止めれる優しい人だもの。

誰かに責められたら私も一緒に責められてあげるわ。誰かに傷付けられたら癒してあげる。誰かに捨てられたら私が拾ってあげる。 私は絶対に側にいる。私だけは味方になる。私だけは見捨てない。 お兄さんの心に後悔や懺悔はもう必要ないの。これからは愛を詰め込んで。 お兄さんは優しい人なの。愛する人を護れる強さもある。だからもう自分を許してあげて?」

「俺は許されてもいいのか?愛する人と夫婦になり子供を作って家族になっても許されるのか?」

「私が許してあげるわ」

「そうか。譲ちゃんが許してくれるか」


 私達は見つめ合い、笑いあった。


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