妹がいなくなった

アズやっこ

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 サロンには王妃様とディーナと私と王妃様付きの侍女だけが残った。 王妃様が侍女にお茶の準備を頼み、


「わたくしがミリー商会を呼んだのに、陛下ったらご自分の話ばかり。ようやく、わたくしが二人を独占できるわ。エミリーちゃんとエディーちゃんで良いかしら?」

「「はい。王妃様」」


私とディーナは二人で返事をした。


「今回、ミリー商会を呼んだのはね、キティ、ブラウザー侯爵の奥方のキャンティス、分かるわよね?キティのドレスを見たからなの。わたくしとキティは学園からの友人でね、仲の良い友人数人と毎月わたくしのサロンでお茶をするのよ。その時に着てきたドレスがとても素敵でキティにミリー商会を教えて貰ったの」

「ブラウザー侯爵の奥様のキャンティス様は存じ上げておりますわ。確かドレスの裾の総刺繍の依頼を受けましたわ」

「仲の良い友人とはいえ、同じドレスを着るのは気が引けて手持ちのドレスを数枚仕立て直したって言ってたわ」

「私共、ミリー商会は元は仕立て直しの専門でしたの。私が商会、元は商店ですが、商店を始めたのも妹のドレスを仕立て直して着る為です」

「エミリーちゃんの家の事情はわたくしの耳にも入っていたわ」

「お恥ずかしい話ですが、私は両親から服を与えられませんでしたから。妹の着なくなったドレスを貰い、私とメイドで仕立て直して着ておりました。ですが、諸事情で仕立て直す事が出来なくなり、隣国で商店を立ち上げたのです。 隣国では商店を立ち上げるのは成人していれば平民でも簡単に立ち上げる事が出来ますし」

「そうね。隣国は立ち上げるのは簡単でも維持するのが難しいと聞くわ」

「はい。ですが、私の服を作るだけの為ですので売上とかは関係無かったのです。知人に隣国へ行って貰い、商店の立ち上げ、お針子さんを探して貰い、作って貰う。本来それだけで良かったのですが、雇ったお針子さんがとても腕の良い方で私の服を縫うだけでは勿体無いと思い、デザイナーを雇い、商店として仕立て直しの商売をしました。それからチャーリーを雇い経営をお願いしましたの。優秀なチャーリーが入り、手広く商売をした結果、ミリー商会と急成長しましたの」

「そうなのね」

「勿論、職人の腕は私が確認し納得した者だけですので、ミリー商会の信用の部分でも腕は確かですわ。それにキャンティス様のドレスの総刺繍をしたのはエディーナですわ」

「あの見事な刺繍を一人で?」

「はい、王妃様」

「エディーちゃん凄いわ」

「いえ、刺繍は幼い頃よりしていたから出来ただけですので…」

「エディーちゃんは元公爵令嬢だものね。それでも凄いわ」

「ありがとうございます」

「それでね、エミリーちゃん、わたくしもミリー商会に依頼をしたいの。良いかしら」

「はい。喜んでお受けしますわ」

「良かった。ドレスを数点持って帰って貰って刺繍をして欲しいの。後、仕立て直しして新たなドレスを作って欲しいのよ」

「分かりました。後でドレスを見せて頂けますか?出来れば着れなくなった物や着ない物を仕立て直したいと思います。数点預かりデザイナーと相談してからになりますが、私共にお任せ頂ければと思います」

「全てお任せするわ」

「ありがとうございます」

「それでね、ミリー商会って新しいドレスも作ってるわよね?」

「はい。元は仕立て直しでしたが、デザイナーもお針子も優秀な方々ですので、今はご要望に合ったドレスを一から手掛けておりますわ」

「良かった。王太子妃にわたくしからドレスを贈りたいの。お願い出来るかしら」

「はい。王太子妃殿下のサイズも分かりますし大丈夫ですわ。ご要望などありますか?」

「そうね、あえて言うなら、王太子妃に似合うドレスかしら。あの子いつも王太子の瞳の色のドレスしか着なくて、若いのに暗い色ばかりなの」

「そうですね。陛下もですが、王太子殿下も瞳の色は深い青色ですものね」

「わたくしは若い頃なら明るい青色も着ていたわ。深い青色でも外だと明るくなるのよ。でもあの子はいつも深い青色ばかり。だからねわたくしが贈ったら着てくれるでしょ?」

「分かりました。デザイナーに要望を伝え早速取り掛かりますわ」

「お願いね」

「はい。ではドレスを拝見させて頂いてもよろしいですか?」

「ええ」


 私とディーナは王妃様の着なくなったドレスを見て意見を言いながら数枚手に取り、馬車で商会まで帰った。


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